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第33話

ロッキー・エフモンドが、宿のロビーで浮かない顔をしている。


ピョンピョンとスキップしながら近づくケイト。


「ロッキー、どうしたのー?そんな顔してさー。」

ケイトがロッキーの顔を覗き込む。



「おいら、モンスターを退治したんだ。」

ロッキーが言った。


「掲示板のところで、雷魔法使えるって叫んでたの、ボク見たよー。」



「そう、そのことなんだけど。」

うつむくロッキー。


「失敗しちゃったの?」


「魔法は上手く出来てたんだ。電撃の魔法!」

右の拳を突き上げるロッキー。


「ドロップアイテムが増えなかったから落ち込んでるの?」


「そうなんだよ、頭が3つもある犬みたいなモンスターだったんだけど

 怖い見た目してたのに、落としたのがこれなんだよ。」


ロッキーがゴソゴソと何かを取り出しケイトに見せる。


直径5センチくらいの丸い塊。ピンク色だ。


「何?これ。」


「他に白と緑があったんだけど、一緒に居た人と分けたから

 これ1個だけになっちゃったんだよ。」


「ピンクと白と緑?それって3色団子の色じゃないの!?」


「当たり。苦労して退治したのに

 3色団子の1色だけ手に入れたってわけなんだよ。」



本当に雷魔法で、ドロップアイテムが無限増殖するのか?

人々は疑問に思い始めていた。


いろんな冒険者が、雷魔法でモンスターを仕留めたはずなのに

無限増殖が起きたという話が、どこからも出てこなかった。






魔力研究所にて。


「高い金で魔法の書を買ったのに!全然無限増殖出来ないじゃないか!」


「デタラメな情報流しやがって!」


「この施設は税金で運営されてんだろ!ちゃんと仕事しろよ!」


人々が勝手な事を言っている。



「申し訳ありません。」

研究所の入り口で、ランランが頭を下げている。



ランランが研究室へ戻ってくると

マリッサ・リズがバラバラになったチョコレートの缶を見つめていた。



「おかしいな。雷属性が影響して起きた現象なのは、間違いないのですが。」

マリッサが考え込んでいる。


「魔法生物研究所から送られた

 実験用コカトリスで試しても、異変は無かったわね。」

ランランが実験をまとめたノートを見て言った。



「そもそも、ショコラトリスとコカトリスは違うものですからね。」


「やっぱり実験用ショコラトリスが必要なのかしら。

 コカトリスが人工で出来るなら

 ショコラトリスも出来るんじゃないかしら。」


「ショコラトリスは火・土・木属性で

 コカトリスは火・土・水属性ですし別の物です。」

マリッサが頭を抱えた。



「それなら火を発生させるのが火魔法であるように

 水を発生させるのが水魔法であるように

 無限増殖にも種類があるのかも知れないわね。」


「と、言いますと?」


「ショコラトリスのドロップアイテムを増殖させる条件が

 たまたま雷属性だったって事よ。」



「そういう可能性を、全く考えていませんでした。」

ハッとするマリッサ。


「雷属性に、こだわって実験しないほうが良いのかもしれないわ。」






「『研究、振り出しに戻る』か・・・。」

食堂で新聞の記事を読んでいるディーク。



「・・・・・・。」

ヨル・ヒックが水晶玉を覗く。


「何が見えるの?」

横に座っているリンコがヨルに尋ねた。



黙って水晶玉をリンコに見せるヨル。

リンコが覗き込んでいる。


「これって研究所?ランランと他の研究者が見える!」


「・・・・・・。」


「ニワトリみたいな生き物に、いろんな実験をしてる!

 あ、石ころがニワトリからこぼれ落ちて・・・。」


「・・・・・・。」


「嘘!?」

驚いて叫ぶリンコ。

周りの皆がヨルの周りに集まる。


水晶玉には、大量の石ころが研究所から

ものすごい勢いで、あふれていく様子が映っていた。


「無限増殖に成功したら、街の方へまで石ころが

 増えて増えてどんどん埋め尽くすのですか!?」

アランが叫んだ。



「・・・・・・。世界、終わる。」

ヨルが静かに言った。


「ひええええええ!そんなのヤダよー。」

ケイトが叫ぶ。



「未来が予測出来るのなら、それを変えちゃえばいいのよ♪」

レミ・ファが笑顔で言う。


「その石ころが世界を埋め尽くすまで、時間があるよね?」

シド・ファが言った。



「・・・今から、皆で魔力研究所に行こう!」

ディークが立ち上がった。






アラン、ケイト、ディーク、リンコ、レミ、シド、ヨルの7人は

ぞろぞろと研究所に向かった。


乗り合い馬車に乗り、長い距離を移動し、研究所の前に着いた。



「マリッサ・リズさんか、ランラン・シェライタさんと話がしたいのですが。」

受付でアランが言った。


しばらくすると、マリッサが現れた。


「こんなに大勢で、どうされたのですか?」


未来の映る水晶玉がある事、この研究所の実験が原因で

世界が危機に陥るかもしれない事を説明する一同。



「大変興味深いですね。そんな水晶玉があるなら、ぜひ見せて頂けますか?」


ヨルが水晶玉を差し出す。


「ふむ・・・男が1人映っていますね。」

マリッサが覗き込みながら言った。


アランも覗き込む。映っているのは金色のアフロヘアのロッキーだ。


「ロッキーさんがカツラを外すところじゃなくて

 例の場面を映さないと説得力が無い気がするのですが。」



「・・・・・・。水晶玉は、勝手に未来を映している。

 好きな場面にする事は出来ない。」

ヨルが眉間にシワを寄せて言った。


「・・・研究がありますので、私はこれで失礼します。」

マリッサが行ってしまった。



「マリッサじゃ無くてランランに話すべきだったね~。」

シドが肩をすくめて言った。


「何とかして、研究を止めないと。」

リンコが周りの研究員達に聞こえないよう小さな声で言う。



「良い考えがあります。」

アランは、そう言うとディークに耳打ちした。


「なるほどね。なかなか危険だけど、世界が滅ぶよりはマシだね。」






「こちらは、2階、魔力増幅ルームです。」

案内係がアラン達7人を案内している。


「急に頼んだのに、案内までしてもらえるなんてラッキーよね!」

レミが案内係に言った。


「皆様のように見学を希望される方は多いのですよ。」



「あれは、何に使う装置何でしょうか?」

アランが奇妙な物体を指差し、質問する。


「ああ、あれは魔力の増幅時に事故を起こさないために・・・。」



「あれ!?1人足りないよ~。」

シドが大きな声で言った。


「ええ!?」

驚く案内係。


アラン、ディーク、リンコ、レミ、シド、ヨルの6人しか居ない。


「ケイトさんと、はぐれてしまったみたいですね。」


「困ったな・・・。施設の中を勝手にウロウロされたら困るんだけどな・・・。

 とにかく、皆様はここに居て下さい。もう1名の見学者様を探してきます。」

かなり焦った様子で、案内係が走って行った。



「・・・・・・。大丈夫。行った。」

ヨルがフードマントの中に声をかけた。


マントの中にケイトが隠れていたのだ。



「とりあえず騙せたねー。さ、今のうちに次の作戦を進めようー!」

ケイトがピョンピョンしながら言った。



「俺達は、ここでさっきの案内係が戻って来たら足止めするから

 アランとケイトに行ってもらおう。」

ディークが腕組みしながら言う。






「えーと、魔法生物飼育室はこっちかー。」


ケイトは壁に貼られた地図を確認している。


「5階ですね。」

アランが紙に簡単にメモを取る。


「こっち行けばいいみたいだねー。」


2人はテクテク研究室の並ぶ廊下を歩いていく。



『魔法生物飼育室』と書かれた札が下がっている部屋の入り口に来た。


「ここにいる実験用の生物を、逃してしまいましょう。」



「ねー、アラン。ところでどうやって逃がすの?」


「窓からです。」


「いっぱい魔法生物が逃げたらさ、それこそ世界の危機にならないのかな?」


「実験用生物ですから、安全に出来ています。

 このコカトリスだって、目を合わせてもなんともありませんし。」


「こっかこっこぉー!!」


鳴き声はショコラトリスみたいだったが、ただのニワトリでしかなかった。



「そっか、だからこんなに簡単に入れちゃう部屋に

 簡単な鍵の檻で動物たちが飼育されてるんだねー。」



~20分後~



「なんで勝手に離れてしまったんですか!?」

案内係がアランとケイトに怒っている。



「ごめんねー。ボクどうしてもトイレに行きたかったんだー。」

ピョコッと頭を下げるケイト。


「すみません、私もトイレに行きたくなったものですから。」

アランも謝罪する。



「まぁまぁ、何も無くて良かったね。」

ディークがニヤリとして言った。






研究所を出て、宿に帰ろうとする一同。


「上手く逃したんでしょ?これで世界は救われたのね♪」

レミが笑っている。


「なんかコソコソ侵入して

 スパイみたいだったね~。僕もやりたかったな~。」

シドが組んだ手を頭に当てて言った。



ヨルが立ち止まった。水晶玉を見ている。


「どうしたの?」

リンコが水晶玉を覗く。


何も映っていない。そして小さなヒビが入っている。


「ヨルさん?」

アラン達もヨルの様子に気がついて立ち止まる。



「・・・・・・。多分未来変えたから。」

ヨルが言った。


「だから、壊れちゃったのー?」

ケイトが水晶玉を受け取り、ブンブン振ってみる。



「振って直るような物なのかな・・・?」

ディークが苦笑いした。

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