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第30話

オペン・アイチョの群れが1本のトーテムポール状に積み重なり

宿の階段を一生懸命登ろうとしている。


「わたくし達の連携力があれば、こんな階段など、ひとっ飛びです。」


「無理しないほうがいいと思うよー。」

階段の上からケイトが声をかける。


「そーれ!」


オペンの群れが崩れて階段をコロコロ転げ落ちていく。


「だから言ったのにー。」

呆れるケイト。







アランとケイトが、クエスト掲示板でクエストを見ていると

後ろから2人を呼ぶ者が居た。


「ベガルさんでしたか。」


「何?ベガル、どうしたの?」



ベガルは四角い密閉容器を手に持っている。


「2人ともバタフラー退治しに行かないか?」


「バタフラーってなんでしょうか?」



「ただの巨大な蝶なんだけどな、巨大蝶って呼びにくいだろ?

 だからバタフラーって呼ぶんだ。」



「前に鱗粉を採ってましたね。」

アランが思い出して言った。


「そう、その鱗粉が欲しいんだ。手伝ってくれないか?」



「鱗粉なんかどうするの?」

ケイトが不思議そうな顔をする。


「ランランさんが、指名クエストで頼んで来たんじゃないでしょうか?」



「よくわかったな、アラン。」






アラン、ケイト、ベガルの3人は、緑の森へ向かった。


ベガルが先頭になり、道を案内する。


「ここで右に曲がるだろう?それで次は左。

 そしたら3つ又の真ん中を行って・・・。」



「こっちの方は、初めてくるねー。」

ピョンピョン跳ねているケイト。


アランは道順を紙にメモしながら歩いている。



「そうだ、言い忘れていた。」

ベガルが急に立ち止まった。


「何?何を忘れてたのベガル?」


「アラン、今日は火球魔法は禁止だ。」



「え?どうしてですか?」


「バタフラーは燃えやすい。火が着いたら採集が出来ないからな。」


「死骸が燃えてしまうとダメということですね。」


「そういうことだ。」



森の中を進んでいくと周りの木々の色が変わってきた。

幹は水色で、葉はピンク色だ。


「おかしな色ですね。」


「キレイだけど、不気味だねー。」



ベガルが密閉容器を地面に置いた。


「この辺でバタフラーが出るはずだ。」



3人は、バタフラーを待つ。


「そういえば、ランランさんに会ってクエストを受けたんですか?」


「いや、会っていない。鱗粉は研究所に送れば良いらしい。」



「研究は、はかどっているのでしょうか・・・。」


「さあな。ショコラトリスに使ったのは、鱗粉とは別の物だって聞いたが。」


「電気クラゲと電気虫って言ってたよー。」


「なんで、鱗粉が必要になったのかが、わからんな・・・。」


首をかしげる3人。


目の前を20センチくらいの大きな蝶が通り過ぎて行った。


「あ、バタフラーですか!?」



「逃がさないからな!!」

ベガルが鞭を握ると、蝶にめがけて振るった。


ピシャン!


蝶は、フラフラと飛ぶ速度が遅くなって地面に落下した。

もう1度、鞭で蝶を打つベガル。完全に蝶は動かなくなった。


「オレが鱗粉を取るから、2人は蝶を集めてきてくれないか。」



アランもケイトも、それぞれ別の蝶を追いかけていく。



赤紫色の翅の蝶を手でパッと捕まえたアラン。

そのままベガルのところへ持っていく。


「あ、忘れてた。」


「え、なんですかべガルさん。」


ベガルがゴソゴソと手袋を取り出した。


「素手で触ると、かぶれるから、つけたほうが良い。」



「・・・先に言って下さい。」


とりあえず蝶をベガルに渡して、自分の手を見るアラン。

ベタついた指先が、なんだかかゆくなってきた。



「逃げられちゃったよー。」

ケイトが手ぶらで戻ってきた。


「ケイトさん、これ治せますか?」


「わー、どうしたのアラン!?赤くなってるよ!?」


バタフラーを触ったら、こうなってしまったのだと説明する。



「クンヨリシン!!!」

力を込めて呪文を唱えるケイト。


指先のベタベタがサラサラになって地面に垂れ落ちた。

落ちたところにニョキッと木の芽が生えてきた。


「お、すげえな。治っちまったのか。」

ベガルがアランの手を覗き込みながら言った。



「この木の芽、何の芽だろう?」

ケイトの興味は芽に移っていた。


すごいスピードで成長する木の芽。

ぐんぐんぐん、と音を立てて、あっという間に大きな木になってしまった。



「周りの木と色が違いますね。」

アランが言った。


周りの木は、幹が水色で、葉はピンク色という奇抜な色をしているが

ケイトがかけた魔法から生まれた木は、普通の色をしていた。



「良い匂いがするな、この木。」


「そうですね。爽やかな匂いがします。」


だんだんと、周りの奇抜な色の木が、普通の色になっていく。



「あ、これはマズイかもな。」

ベガルが頭を掻きながら困った顔になった。


「え?」


「バタフラーの生息地が浄化されたら、バタフラーが居なくなっちまう。」


「えー!?」



「あ、では、この木を止めれば良いんですよね?」


「アラン、止められるの!?」



「・・・・・・イアルファボ!!」

火球を木にぶつけるアラン。


魔法の木が一瞬で炎に包まれ、灰の山に変わった。



「おー、浄化が止まったね!」


「ああ・・・(随分乱暴な方法だな)」






密閉容器に、それなりに鱗粉が溜まったところでベガルが2人に声をかける。

2人に50シルバーずつ渡すベガル。


「手伝ってくれてありがとうな。」



3人は森を出て、帰る事にした。



「しかしさ、バタフラーが生息してる場所って変な見た目してるし

 ほっといて危なくないのかな?」

ケイトが耳をピクピクさせて言った。


「さあな、だがクエストがクリア出来なくなったら困るし

 あれで良かったんじゃないか?」



アランが2人に袋を見せる。


「アラン、それは何?」


「さっき魔法の木を燃やした後に残った灰です。こっそり回収しました。」


「へー、見せて!」

ケイトが袋を受け取る。


中は、かなり淡い虹色の灰が詰まっている。


「色がとてもきれいでしたので、貴重な素材かもしれないと思いまして。」


「そうだねー。魔法の木を燃やして出来た灰だもんね。」



ベガルも袋を覗き込む。


「何なんだろうな、コレ。」



クエストの報告のためクエスト掲示板に行くベガルと別れ

アランとケイトは商人広場に入った。



「どの店の人に見せたらいいんだろー。」


「そうですね。」



灰は肥料にしたり、薬を作ったり出来る。

欲しがる人物は、沢山居そうな気がする。


2人は相談して、ガラス製品の店に行った。

灰がガラスの原料になる事をアランが知っていたのである。



「ふーん、何の灰だろうね。」

店の人にも灰を見ただけでは、よくわからないようだった。


「買い取ってもらえませんか?」


「何だかわからないからね、買い取るというのは・・・。」

難しい顔をする店の人。


「森林浴の魔法をかけたときに出来た木を

 燃やしたら、こんなふうになったんだよー。」

ケイトが説明する。



「どんなガラスが出来るかわからないからね。商品になるかもわからない。」


「偶発的に出来た物ですから、2度と手に入らないかもしれませんよ?」



考える店の人。


「わかった、8シルバーで買おう。」



ガラスが出来上がったら、2人に見せてくれる事になった。



「どんなのが出来るんだろー。」


「楽しみですね。」

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