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第2話

商人広場には、いろんな人がいる。

そして、いろんな物が売っている。


朝の商人広場に食事を買いに来たアランとケイト。


「何を食べようかなー。3シルバーくらいまでで買える物がいいよね。」

ケイトががま口の中を見ながら言う。


「私は結局昨日の夜は食べないで

 寝てしまったので、しっかり食べないと。」

アランは言った。


「旅を始めるから貯金全部持ってきたけどさ。節約しないとなー。」


「それもそうですけどね。」



「あ!バナナケーキ!おいしそう・・・。」

甘い匂いにつられてケイトがフラフラと店に近づく。


「いらっしゃいませ!今朝焼いたケーキですよ。」


「いくらなの?」


「5シルバーです。」


「買った!」


「ケイトさん・・・。」

アランはズッコケそうになった。


知っている限りの昨日の収入は15シルバーだったはずだ。

宿代で10シルバー。バナナケーキで5シルバー。

使い果たしてるではないか。


「へへーん。また稼げばいいんだもーん。もぐもぐ。」

ケイトはニコニコしながらバナナケーキをかじっている。


「幸せそうですね。ケイトさん。」

そういうアランの手には、なぜか青汁がある。


「なんで青汁なの!?しっかり食べるんじゃなかったの!?」

ビックリしすぎてケーキを落っことしそうになるケイト。


「いや、これでもLサイズなんです。」


「量とかの問題じゃなくて!」


「青汁美味しいですよ?」


「はぁ、どおりでアランが痩せてるわけだー。こんな食事してるから。」


「おかけで1シルバーで済みました。」


「・・・・・・もういいよ、わかったから。」

ケイトはあきれきっている。



「クエスト受注する前に治療薬を買っておきたいのですが。」

アランは薬屋を探している。


「あー治療薬があれば、もうちょっと難しそうなクエストも出来るよね。

 やっぱりバナナケーキは高かったかな・・・。」

手に持ったケーキを見つめているケイト。


「あ、ありました薬屋。すみません、治療薬2つください。」


「4シルバーになります。」


透明感のある青い液体が入っている小さな瓶を2つ受け取った。

それを背負っているカバンに入れるアラン。


「さて、用事は済みました。クエスト掲示板に行きましょう!」


「まだケーキ食べてるんだけど?」

半分くらい残っているケイトのバナナケーキ。


「あ、そうでしたか。じゃあすこし店をみてまわってきますね。」

アランは1人でいろいろ見てまわることにした。



この商人広場は、出店料を払えばだれでも店をもつことが出来る。

普段は冒険者をしていて各地で収集したアイテムを売っている人もいる。

生け捕りにした動物を売ることも買い手がつけば可能である。


「キンイロスナトカゲの革で出来た手袋はいかがかな?

 2ゴールド50シルバーで1セットだよ。お買い得だよ~。」


キンイロスナトカゲ・・・どこかで聞いたような?


「とれたて白菜~!2個で3シルバー!」


「焼き立てパン!どれでも1つ2シルバーですよ。」


「火炎魔法の書!限定1点だ、45ゴールド!」


魔法の書を読んで勉強すれば

強力な魔法が使えたり、便利な魔法が使えたりする。

火炎魔法を覚えればパンでもケーキでも焼く事ができるから

ケイトが喜びそうな気がする(モンスター退治に使う物だけど)


そろそろケイトは食べ終わっただろうか。

戻ることにしよう。






『紫の田園のクロウサギを退治してほしいんです。

 3匹につき10シルバー。』


今日まずやるクエストはこれにした。地道な反復クエスト。

ケイトが聞いたらしいピンクのエプロンのおばさんではなく

赤い髪飾りをつけた女の子の依頼であった。


「実は依頼出すの初めてでね、お礼のお金が釣り合ってないかもしれないの。」


「な、なんだって!?」

ケイトの耳がピーンと張った。


「じゃあ、よろしくお願いなの。」



ニンジン畑の中で、もぞもぞとウサギが動いている。


アランは右手でロングソードを構えた。

ケイトは両手でハンマーを構えた。


「おりゃっ!」

「はー!」



~30分後~


倒す事自体は昨日のネズミより楽ではあったが数が少なかった。


「もういないかな?」


「そのようですね。」


「いーち、にー・・・じゅうに!」

12匹のクロウサギを退治したようだ。


「おつかれさまなの。じゃあ40シルバーね。」


「ありがとうございます!」「ありがとー!」



1人あたり20シルバー。昨日より楽だったのに多く稼ぐことが出来た。

しかし悪いこともあった。

ケイトのハンマーがだいぶ傷んでしまったのである。


「うーん、修理するという手もあるけど

 新しいハンマー買ったほうが良いかな?」

ケイトが木製のハンマーを見て言った。


「そのハンマーはどうするんですか?」


「売りたいけど買い取ってくれる人探す時間考えたらクエストやったほうが

 良いかもしれないよねー。残念だけどゴミ箱行きかな。」



「じゃあ商人広場に行きますか。」


「そうだねー。お昼も食べたいし。」

それなりに大きなバナナケーキを食べたケイトだがもうお腹が空いたらしい。






「鋼で出来たハンマー!55シルバー。」


「ローズウッドのプラントハンマー75シルバー。」



「ブロンズウォーハンマー、15シルバー。」


「あ!これ良いね。これちょうだい!

 ・・・ついでにこの中古のハンマー買ってくれるとうれしいんだけど?」


「ふむ。2シルバーで買い取りしましょう。」


「やった!どうもありがと!」

ケイトの耳がピクピクと揺れた。


「売れたんですか、良かったですね。」

今度はオレンジジュースを持っているアラン。


「もうちょっと栄養とりなよ、アラン。」


「あ、ご心配なく。パンも買いますので。」


「肉は~?」


「カツサンドなら良いですよね?」


「・・・・・・。」



午後もクエストをする。

また田園の害獣狩り。反復クエスト。


1時間くらいがんばって102シルバー、51シルバーずつ稼ぐ事ができた。


今日の稼ぎは71シルバーだから明日は食事付きに出来そうだ。


「ブロンズウォーハンマー、すごく良いよ!」

耳がピクピクを超えパタパタしているケイト。


「それは良かったですね。」

アランは自分の持っているブロンズロングソードを見ている。


「・・・アランのやつもそろそろ新しくするの?」


「それがどうしようか迷ってるんです。

 もう少し我慢してお金を貯めて、もっと格上の武器にしたほうが良いのか。

 それとも何かしら防具を買ったほうが良いのか。」


「そうだなー。ボクもなんか防具欲しいし夕食買いに行くついでに

 どんな物売ってるのかチェックしようか。」


「そうしましょうか。」


「とりあえず宿に帰ってから少し休んで出かけよう!」






宿につくと、ちょっとした騒ぎが起きていた。


「やだ!ちょっとしっかりして!!

 ハリーが食べちゃったら大変じゃない!!!」


クリーム色の髪を2つ結びにしているリンコが地面を這いつくばるようにして

何かを探していた。ギャンギャン怒鳴りながら。


「悪かったって言ってるじゃないか。

 とりあえずスズメを見つけてからにしてくれないかな。」

ボサボサの赤髪のベガルも同じように地面に顔を近づけ何かを探している。


「・・・何があったんですか?」

とアランはディークに訪ねた。


椅子に座ってくつろいだ様子のディーク。

青い髪はツヤがあり、キチッとセットされている。


「よくある事なんだよ。ベガルのスズメが逃げるのは。」


「えー!スズメ飼ってたの?

 スズメって野鳥だから懐かせるの大変だったんじゃない!?」

ケイトが驚く。


「あー、違うの!そうじゃなくてスズメはスズメでもスズメじゃないの!」

リンコが早口で言った。


「どういうことですか?」

とアラン。


「スズメってのは名前。オレが飼ってるのはサソリなんだ。」


「紛らわしー!!」

ケイトがひっくり返りそうになる。


「お・・・いた、ここにいたのか。ったく心配するじゃないか。」

ベガルの右手の上にちょこんと赤いサソリが乗っている。


「もぉ!毒があるんだから、ちゃんと管理してよ!」


「はい、どうもお騒がせいたしました。」


「気持ちがこもって無い!ちゃんと謝罪して!!!」


とりあえずは一件落着といったところか。

やはりペットを飼うのは大変そうだ・・・と思ったアランであった。





夜の商人広場。

客はまばらでゆっくり商品を見ることができる。


「えー、白菜。漬物にすると美味しいです。1個1シルバーでいかがですか?」


この時間帯になると昼間より値段を下げて売り切ろうとする人もいる。


なまものではない武器・防具の類は安くなりにくいが

それでも夜に買うほうが得をするケースが

よく有る、とディークが教えてくれた。


「ねぇねぇアラン!このシャツどうかなー?

 ・・・・・・アラン?どこ行ったの!?」


「あ、すみません。ちょっとこれを買っていました。」

手には味噌汁。豆腐とわかめ入り。


「・・・・・・。」


「そんな顔しないで下さい。」


「このシャツー!どうかなー!?」

たくさんポケットがついた、いかにも探検家風のシャツ。


「防御力が、あまり無いように思います。

 あと、ケイトさんには似合わない気がします。」


「そうかなー?」


「ずぞぞっ(味噌汁おいしい)」



「やっぱ買おう!」



ケイトは12シルバーを払い、シャツを買った。

アランに聞いた意味はあったのだろうか?


「あー!お買い物ってたのしー!!」

はしゃいでいるケイト。


もし妹・・・じゃなかった弟がいればこんな感じなんだろうか?

と思ったアランであった。



アランに家族は居ない。

実は孤児院育ちである。



もう1人でやって行かねば。どこにも帰る所なんて無いのだから。

そう、どんなに苦しい事があっても帰る家は無いのだ。


「・・・アラン?・・・アランってば!」


「あ、すみません。考え事していました。」


「もー!」

ほっぺをぷっくり膨らませて怒っている。


「ボクがせっかくこれを見つけてあげたのにー!アランってば聞いてないし!」

ケイトの指差した先には盾が置いてある。


「スチールシールドだよ。本当は20シルバーなんだけど

 出店が明日までだから16シルバーに値下げしたところさ。」

店主が言った。


「16シルバーですか。」

剣と盾を使う勇者アラン・ケタブリル。なんか良いな。


「買うの?買わないの?」


「ちょっと持ってみても良いですか?」


「ちょっとだけな。」


「では・・・あ、思ったより軽いですね。」


「丈夫で長持ち。買って損はないよ。」



「これ買います。」


「お、どうもありがとう。」



やった、これで盾持ちになった。

ということは・・・?


「あの・・・これがあれば、ゴブリンくらいのモンスターなら戦えますよね?」


「そうだな、経験を積んでいればゴブリンくらい大丈夫じゃないか?

 自分も若い頃は旅していたが、あいつらは動きが遅いから楽勝だ。」


「もしかしてさ田園じゃなくて別の場所のクエスト行けちゃう!?」

ケイトが目を輝かせている。


「お嬢ちゃんは危ないと思うよ。」


「・・・・・・。」


やっぱり女の子に見えるんだ。他の人からも。

少し安心したアランであった。

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