↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞 2 「新たな敵」  作者: 橋本 直
第十五章 満足な海風と波乱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/75

守護天使登場

「つまり交渉決裂と言うわけですか」 


『そうみたいですわね』 


 三人の頭の中に言葉が響く。男は周りを見回している。


「この声……茜(あかね)?」 


 かなめがつぶやくその視線の前に金色の干渉空間が拡がる。


 そこから現れたのは黒い髪。それは肩にかからない程度に切りそろえられなびいている。まとっているのは軍服か警察の制服か、凛々しい顔立ちの女性が金色の干渉空間から現れようとしていた。


 アロハの男は突然表情を変えて走り始めた。逃げている、誠達が男の状況を把握したとき、かなめに茜と呼ばれた女性はそのまま腰に下げていた軍刀を抜いた。そのまま彼女は大地をすべるように滑空して男に迫る。


 男が銀色の干渉空間を形成し、茜の剣を凌いだ。


「違法法術使用の現行犯で逮捕させていただきますわ!」 


 そう叫んだ茜が再び剣を振り上げたとき、男の後ろに干渉空間が展開され、その中に引き込まれるようにして男は消えた。


「逃げましたわね」


 その場に立ち止まった茜は剣を収める。誠は突然の出来事と極度の緊張でその場にへたり込んだ。


「茜さん?もしかして、師範代の娘さんの……」 


 近づいてくる東都警察の制服を着た女性を誠は見上げた。


「お久しぶりですわね、誠君。それとかなめお姉さま」 


「その呼び方止め!気持ちわりいから呼び捨てにしろ!」 


 頭をかきながらかなめがそう言った。


「それよりその制服は?」 


 誠の言葉に茜は自分の着ている制服を見回す。


「ああ、これですね。かなめさん、私一応、司法局法術特捜の筆頭捜査官を拝命させていただきましたの」 


 誠とかなめはその言葉に思わず顔を見合わせた。


「マジで?」 


 明らかにあきれているようにかなめがつぶやく。


「嘘をついても得になりませんわ。まあお父様が推薦したとか聞きましたけど」 


 淡々と答える茜に、かなめは天を見上げた。


「最悪だぜ……叔父貴の奴」


 かなめの叫びがむなしく傾いた日差しが照らす岬の公園に響いた。


「話が読めないんですけど……?」


「誠君には子供のころ会ったっきりですものね。自己紹介をしましょう。私は嵯峨茜ですわ。誠君の部隊の隊長、嵯峨惟基は父に当たりますの」


「そう、そしてアタシの従姉妹」


 茜はにこやかに笑う。かなめはそれを見てどっと疲れたようにつぶやく。誠はまた現れた女性の上官に敬礼をする。


「かなめお姉さまの彼氏の割にちゃんとしているんですのね」


「誰の彼氏だ誰の」


「え?お父様からそう聞いているんですけど……」


「あのおっさんいつかシメる」


 かなめは力強く右手を握り締めた。誠はただ二人の会話を聞いて苦笑いを浮かべていた。


「それにしてもかなめ様の水着姿って初めて見ましたわ。たぶんクラウゼ少佐は写真を撮られているで

しょうからかえでさんに送ってあげましょうかしら?」


 ポツリと茜がつぶやく。銃をホルスターにしまっていたかなめが鬼の形相で茜をにらみつける。


「おい、茜!そんなことしたらどうなるかわかってるだろ?」 


 こめかみをひく付かせてかなめが答える。日は大きく傾き始めていた。夕日がこの海岸を彩る時間もそう先ではないだろう。


「でも、茜さんの剣裁き、見事でしたよ」 


 ようやく平静を取り戻して誠は立ち上がった。茜は誠の言葉に笑みを残すとそのまま歩き始める。


「待てよ!」 


 かなめはそう言って茜を追いかける。誠もその後に続いて早足で歩く茜に追いついた。


 そこにもう着替えを済ませたのかカウラとアイシャが走ってくる。


「何してたのよ!」 


「発砲音があったろ。心配したぞ」 


 肩で息をしながら二人は誠達の前に立ちはだかった。そして二人は先頭を歩く東都警察の制服を着た茜

に驚いた表情を浮かべていた。


「なあに。奇特なテロリストとお話してたんだよ」 


 かなめが吐いたその言葉にカウラとアイシャは理解できないというように顔を見合わせた。


「そして私がそれを追い払っただけですわ」 


 茜は得意げに話す。初対面では無いものの、東都警察の制服を着た彼女に違和感を感じているような二人の面差しが誠にも見えた。


「何で茜お嬢様がここにいるの?」 


 アイシャは怪訝そうな顔をして誠の方を見る。


「そうね、お二人の危機を知って宇宙の果てからやってきたと言うことにでもしましょうか?」 


 さすがに嵯峨の娘である。とぼけてみせる話題の振り方がそのまんまだと誠は感心した。


「まじめに答えてくださいよ。しかもその制服は?」 


 人のペースを崩すことには慣れていても、自分が崩されることには慣れていない。そんな感じでアイシャが茜の顔を見た。


「法術特捜の主席捜査官と言うお仕事が見つかったんですもの。同盟機構の後ろ盾つきの安定したお仕事ですわ。弁護士のお仕事は収入にムラがあるのがどうしても気になるものですから」 


 そう言うと茜は四人を置いて浜辺に向かう道を進む。どこまでもそれが嵯峨の娘らしいと感じられて思わずにやけそうになる誠を誤解したかなめが叩く。


「早く行かないと海の家閉まってしまいますわよ。すぐに着替えないといけないんじゃなくて?」 


 茜にそう言われて、気づいたかなめと誠は走り出さずにはいられなかった。


「そんなに急がなくても大丈夫よ!海の家の人には話しといたから!」 


 叫ぶアイシャの声を背中に受けて誠とかなめは走り出した。


「あいつの世話にはなりたくねえからな」 


 走るかなめが誠にそう漏らした。


「西園寺さんならもっと早く走れるんじゃないですか?」 


 誠はビーチサンダルと言うこともあって普段の四割くらいの速度で走った。


「良いじゃねえか。さっきもそうだけど今回も一緒に走りたかっただけなんだ」 


 余裕の表情でかなめは答える。砂浜が始まると、重い義体で砂に足を取られて速度を落とすかなめにあわせて誠も走る。


「オメエこそ早く行ったらどうだ」 


 そう言うかなめに誠はいつも見せられているいたずらっぽい笑顔を浮かべて答えた。


「僕も一緒に走りたかったんです」 


 二人は店の前に置かれた自分のバッグをひったくると、海の家の更衣室に飛び込んだ。


 誰もいない更衣室。シャワーを浴び、海水パンツを脱いでタオルで体を拭う。


「いつ見ても全裸だな」 


「なに?なんですか!島田先輩!」 


 全裸の誠を呆れたような表情で島田が見ている。


「お前さんが全裸で暴れたりすると大変だから見て来いってお姉さんに言われて来てみれば……」 


 島田が来ることは予想が出来てもその指示が穏やかなリアナのものだと知って落ち込みながら誠はパンツを履く。


「クラウゼ少佐の指示じゃないんですか?」 


「違うよ。まあすっかりそう言うキャラに認識されたみたいだなあ……ご愁傷様」


 にんまりと笑いながら島田は入り口の柱に寄りかかっている。誠はすばやくズボンを履いてシャツにそでを通した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。