File:1 激痛
ある日のこと。僕は捜査の依頼を受けて、その事件を追っていた。
(まただ。)
と思った。目的の人が僕の眼下から消えている。すぐに追ってその人のシルエットをとらえる。これでよし。見失わないようにその人の行動に注意した。
次の瞬間。ターゲットの隣を歩いていた人が突然倒れこみ、ターゲットが眼下から消える。
(まさか。)
駆け寄ってみるとこれまでと同じことが起きていた。
その人はナイフで心臓を一突きされていたのだ。
(どうしてだ。なんであいつの隣を歩いている人だけに限ってこういうことになる・・・。)
と考えたが、すぐに警察を呼ばなければと考え、警察に電話した。
しばらく張り込む人のことを忘れて、その場に残る。もうすぐ警察が来るはずだ。
「うっ。」
思わず声を上げた。
何かが左腕に刺さった感覚を覚えたからだ。
(なんだ。)
左腕が通っている服をまくって何か刺さっているものがないか調べてみたが、何も刺さっていない。そして、その痕跡もない。
(気のせいか。)
次の瞬間。体全体に激痛が走る。
「うっ。」
反射的に左腕のひじのあたりを抑えた。なぜここが痛むのか。
(気のせいなんかじゃない。本当に何かが・・・。)
「うわっ。・・・。」
息が荒くなってくる。息を整えようとすると次の激痛がやってくる。
そのまま地面にうずくまり、その痛みが引くのを待つ。だが、そのままの姿勢でいられない。地面を体の運動だけで這いずり回った。
そして、その痛みは20秒くらい続いて終わった。
この後気を失う。だが、すぐにその状態から元に戻る。
(どうなったんだ。)
目を開くと正面が赤にしか見えない。そのうち赤い視界は引いていく。
「あの。すみません。」
声をかけられる。その方向から警察官がひとり小走りにやってきた。
「通報してくれた方ですか。」
相手はそう聞いてきた。
だが、僕が見ていたのはこの人であり、この人ではなかった。僕はこいつの上に刻印を見たのだ。
拝読ありがとうございます。感想は受け付けております。
なお、当小説に登場いたしますキャラクターは私の小説MAIN TRAFFICに登場するキャラクターを用いています。キャラクター個人のプロフィールなどはそちらを参照してくださいませ。