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勇者と魔王の関係編


                勇者と魔王の関係編



 魔王の居城に行くにはある場所で待機してる魔族の所へ行きその魔族に【テレポート】で送ってもらえば良いのだが、ルミーナとフェイは言いとしてレミーナは【フライト】が使えないので一旦ルミーナとフェイが【フライト】で飛んでいき、ルミーナが【テレポート】で迎えにいくという手段をとった。

 その魔族――シタッパー・デンネンは最初は驚いていたが、フェイが事情を説明すると納得した様子だった。 そんなところからも魔王の人望の無さが伺えた。



 「ここが、魔王の城……」

 巨大な石造りの建物で外見は人間のそれとほとんど変わらず、おそらく内部の構造も同じだろう、こういう事は人間も魔族も変わらないらしいという感想をレミーナは持った。

 「私が出来るのはここまでだよ、悪いが後はあんたらで何とかして……ちっ! 厄介な奴が……」

 攻めてくるような敵もいなからだろう、開かれていた城門から一人の女魔族が歩いてくる、腰に細身の剣を携えたリリーア・クリサリスである。 リリーアはフェイを一瞥し小さく息を吐いた。

 「……お前はどういうつもりなのか?」

 「流石の私も勇者には勝てなくてね? そんでもって勇者に魔王の城まで連れてくよう脅迫されてさ」

 冗談めかした様子でそう言うフェイの横では「脅迫なんてしたもふぁっ!?」とルミーナがレミーナに手で口を塞がれていた、流石にレミーナはフェイにも立場というものがあるというのは分かっていた。

 「……ふぅっ……まあ、いい。 そう言う事にしておこう……なら、私が勇者を倒しても問題はないな?」

 淡々と言うリリーアにフェイは舌打ちし「……頑固者」と小さく呟いた、魔王が降臨するまで魔族のまとめ役だったクリサリス家の彼女は魔王降臨後は彼の副官として忠誠を誓うのが使命で、彼女は頑なまでにそれに固執している。 それは生来の生真面目な性格だけではない、幼少時よりそれがクリサリス家の誇りある使命と親から教育を受けてきたせいである。

 フェイもそんなリリーアは好きなのだが、今回に限ってはその使命感と頑固さは鬱陶しいと思わざるを得ない。

 「……とにかく、そういう事だ勇者よ!」

 リリーアは細身の剣――《オラトリオ》を抜くとその切っ先をレミーナ・・・・に向けた。

 「……へ? 私……?」

 「あーー普通はそうなるな、そいつは勇者じゃないぞリリーア」

 「へー、レミーナって勇者だったの?」

 「そんなわけないでしょう、お姉ちゃん!」 

 「……え?……って、お姉ちゃん!?」」

 三人の反応にリリーアは困惑した顔になった、その後には恒例の説明が今回はフェイにより行われてリリーアは半信半疑という様子ながらも一応は納得した。

 「……成程、どうしてこんな幼子がいるのかとは思っていたが……どうあれ勇者であれば倒すのみか、行くぞ勇者!!」

 「……あたしも勇者じゃないんだけどなぁ~……ま、いいけど~!」

 そんな風にぼやきながらルミーナが【レイオ・ブレード】を出す、成り行きのまま売られた喧嘩は買いましょうという相変わらずの考えなしなルミーナにレミーナはもはや何も言うまいと言いたげな顔をし、そんな姉妹の在りようが分かってきたフェイは苦笑する。

 「勝負!」

 「うりゃぁぁぁあああああああああ~~~~!!」

 両者同時に地を蹴って踏み込み、【レイオ・ブレード】と《オラトリオ》が交差する。 

 「勇者が魔王を倒しに来る! 結局はそういう予定調和かっ!!」

 「何言ってんのよっ!!」

 「勇者というが魔王というと戦う! そう言っている!!」

 《オラトリオ》の突きをルミーナは軽快な動きで回避すると【レイオ・ブレード】で斬りかかるがリリーアはそれ受け止める。

 「所詮この世界は”神のゲーム盤”に過ぎない! だからお前が来たのだ勇者よっ!!」

 「あたしは勇者じゃない~! 魔王がムカついたからぶっとばしに来ただけよっ!!!」

 言い返しながら跳び蹴りを繰り出すルミーナをリリーアはかわすと後方に跳んで《オラトリオ》を構えなおす。

 「だが、お前は力を持っているのだろう! それこそが魔王と戦うために神から与えられた力なのだ!! それを理解しろっ!!!」

 「そんなの知らない! あたしはあたしが魔王をぶっとばしたいからぶっとばす、それだけよっ!!」

 「羨ましいよ! そういうお気楽な思考が出来るのはっ!!!!」

 苛立ち気な声と共に再び地を蹴るリリーア、魔族でもトップ・クラスの彼女と渡り合いながら舌戦までしてみせているルミーナの力にも驚くフェイは、その戦闘能力が神から与えられた力というのはおかしいと感じていた。

 確かにその無限にも思える魔力量と【レイオ・ブラスト】まで使ってみせた才能は神から与えられたと言った方がぴったりだ、しかしそれはあくまで下地であり、練習も実戦経験もなしで使いこなせるものではない。

 「ならさ! あんたは何で魔王の味方をすんのよっ!?」

 「それが私という駒、そういう役割だからだよっ!!!!」

 繰り出された《オラトリオ》の突きをルミーナはリリーアの頭上を跳び越えるという跳躍力で回避した、そんなルミーナに驚きの表情になったリリーアに背後からのキックの直撃。

 「したくもない事をして楽しいのっ!!?」

 「……っ!!?」

 体重の軽いルミーナの一撃をリリーアは堪え、ルミーナの方は蹴りの反動を利用し大きく跳んで着地する。

 「楽しいとかそういう問題じゃない! 人間も魔族もそう創られている、ならばそうするしかないのだっ!!」

 「そんなの知らない!」

 「……ちょっ! さっきから何なのよ!? 駒とか創られてるとか……!!!?」

  二人が繰り広げている舌戦――というよりリリーアが語る内容――に理解の範疇を超えたのだろうレミーナが困惑しながら口を挟んだ、リリーアはそんなレミーナに視線を向け「……いいだろう」と呟くと共に《オラトリオ》を持った手を下げた。

 流石にルミーナもそれが戦闘中断の意思表示とは分かるようで、【レイオ・ブレード】を消す。



 リリーア・クリサリスの話自体はシンプルなものだった,この世界カケラを創った創造神は気まぐれから様々な争いが起こるように仕掛けをし、それを観劇として見ているのだという。 その一つが勇者と魔王の戦いであり、異界から召喚された魔王は力と魔族という駒を与えられ、その魔王と神が力を与えられた勇者が戦うという、そういう風に配置されるのだ。

 それをどうしてリリーアが知っているのかは本人も分からない、いつの頃からか漠然と知っていた。 何らかのイレギュラーなのか、あるいはそれも神の仕掛けなのかも知れない。 

 どちらにせよリリーアにはその運命に逆らう気は起きず、駒は駒らしく己の役目を全うしようとだけ思った。 それは神という超越した存在に逆らったところで結局はその手のひらの上で躍らされているだけだろうという諦めもないではなかった。

 それでも、せめて魔族を率いる者として相応しい魔王が現れてほしかったというのが本音だったが、現実は己に与えられた力と権力に溺れてろくな準備もせずに人間に戦争を仕掛けて自分は魔族も人間も問わず女と戯れているいう最低な男だった。 彼が元の世界でどのような生活を送っていたかにはリリーアには興味は無いが、おそらくは相当に鬱屈し自堕落な生活をしていたのだろうとは思う。

 そんな魔王だからリリーアも悩まなかったわけではない、だが結局は駒として与えられた役割を演じるしかないという結論に達したには、自分の使命に誇りを持っていたからであり諦めの極致にあったからだろうとは思いたくない。

 「…………」

 リリーアの話にレミーナは何も言葉がでなかったのは、彼女の理解の範疇を超えているからだ。 助けを求めるようにフェイを見たがフェイはすべてを承知しているとでもいう風に目を伏せていた。

 「……お姉ちゃん……」

 こんな重い話を聞き姉はどうするのだろうと、今度はルミーナを見やる。

 「……うん、分かった~。 んじゃ、魔王ぶっとばしに行くわ~♪」

 「「「…………はい?」」」

 重苦しい空気が支配した場を壊した能天気な声に、当人以外の三人が素っ頓狂な声を出してしまう。 そして「私の話を聞いていたのか!?」とリリーアが声を上げた。

 「ん? 聞いてたよ? でもさ、別にそんなのあたしが魔王をぶっとばしたいのに何の関係も無いじゃん?」

 「関係大有りだろっ! その魔王をぶっとばしたいというお前の意思すら神に仕組まれたものだと言っているだぞ!?」

 「んん~~?……いいんじゃない? どっちにしろ、あたしは魔王をぶっとばしたいし~♪」

 唖然としてルミーナを見下ろしているリリーア、その光景にレミーナは何だか脱力してしまっていた。 姉がどこまで話を理解したのかは知らないが、結局は自分のやりたい事をやるという結論なのだろう。

 空のその更にその上から自分達を見下ろしているような創造神の事なんて考えても仕様がなく、そんな神の思惑であっても自分がしたいと思うのだからすればいいという何ともルミーナらしい短絡で、でもすごい考え方だと妹として思った。

 「……お前は……お前は何なんだっ!!?」

 リリーアが《オラトリオ》を振り上げながら絶叫する。

 「あたしはルミーナ・シルフィード! 普通の女の子だよ~!!」

 【レイオ・ブレード】を出現させルミーナも言い返した。



 

 聞けば聞くほど魔王という存在に頭にきた、そんな魔王のために戦おうとするリリーア・クリサリスはおかしいとルミーナは思ったが話を聞いて納得する、要するに嫌々やっていたのだ、だからさっさと魔王をやっつけようとそれだけを考えた。

 誰だって自分のしたいように生きればいい、ただし他人に迷惑をかけたりしない限りはだ、それがルミーナ・シルフィードの生き方だった。

 「あんただって魔王をぶっとばしたいんでしょうが! なら邪魔しないでよねっ!!」

 「お前は我がクリサリス家の使命を、そして私の存在そのものを否定するかっ!!」

 【レイオ・ブレード】と《オラトリオ》が再びぶつかり合う。

 「あんたは本当にそうしたいのっ!? 使命だとか駒だとか、あんたはしたくてしているのっ!!?」

 「したくなくてもするしかない! 何故それが分からないっ!!」

 「おかしいでしょうっ!!」

 「役割通り魔王を倒しに来た勇者が言う事かっ!!!!」

 《オラトリオ》の切っ先がルミーナの頬を掠め赤い線を作った。

 「だから役割とかどうでもいいって言ってんでしょうがっ!! あたしは魔王をぶっとばしたいだけ! 魔王がぶっとばされたって誰が迷惑するっていうのよっ!!!」

 【レイオ・ブレード】がリリーアの左股を斬り裂く、痛みに顔をゆがめつつもリリーアは怯まない。

 「なら私は何だ!? 家から、神からすら魔王に仕える役目を与えられ、それが誇りある使命と思ってきた私は何だというのだ勇者!!?」

 「あんたはあんたでしょうがっ!!」

 「使命と役割を否定したら私に何が残るっ! お前は私にどうしろというんだっ!?」

 「自分で考えなさいよっ!!!!」 

 ありったけの魔力を【レイオ・ブレード】に、そしてありったけの力で右腕を振るう、その渾身の一太刀は《オラトリオ》の細い刀身を切断し宙に舞わせた。

 「……なっ!?……くっ……」

 驚愕に目を見開いたリリーアの喉元に【レイオ・ブレード】の光刃が突きつけられた。

 「あたしの勝ち~♪」

 「……殺さないのか?」

 「う~~ん? あんたフェイの友達でしょう?」

 ルミーナの言葉にリリーアは意外そうな顔をしたがルミーナにはその理由が分からず、「あたし、なんか変なこと言った?」と聞き返す。

 「私はお前の敵でお前を殺そうとしたのだが?」

 「でもフェイの友達でしょう? それにもうあたしの勝ちは決まったんだしね」

 別に殺したい程の恨みがあるわけでもないし、勝ったならそれでいい。 そもそもルミーナにとって戦闘とは単なる勝ち負けであり生き死には結果に過ぎない、だからリリーアに戦闘続行の意思がないと判断するとさっさと歩き出した。

 「……ちょっと! 待ってよお姉ちゃんっ!!」

 慌てて姉を追いかけるレミーナ、そんな姉妹の姿を見送りながらフェイは思う。 あのルミーナ・シルフィードは本当に真っ直ぐで強い少女なのだと。




 薄暗い廊下を二人の少女が走る足音だけが響く、魔王の城に突入し随分たったがいまだに誰とも出会わずもぬけの殻と言った風だったのをレミーナは不思議に思う。

 「……はぁ……はぁ……」

 「お姉ちゃん! 大丈夫なの?」

 見ればルミーナの息が荒いし、その表情にも疲労の色が伺えるのは走っているからではないだろう。 モエツ湖の水竜戦以来ずっと連戦だった疲れが出て来たに違いない、レミーナには分からないが魔力もほとんど残っていないかも知れない。

 姉のハチャメチャぶりにそんな事にすら思い至らなかった事を悔やむ、この状態で魔王と戦闘をしようなどと無茶だ。 

 「……大丈夫よ、このくらい……」

 あまり大丈夫そうには見えないが、ここまで来ては引き返せないとなれば自分ががんばるしかないとレミーナは覚悟を決める。

 やがて二人の前に巨大な鉄の扉が現れた、いかにもこの先にラスボスが待っていそうな雰囲気だ。

 「ここね?」

 「多分ね、お姉ちゃん……」

 この先にいる魔王とはどんな相手なのか、人格的には最悪のようだがそれと戦闘能力は別物であり油断は出来ないだろう。 扉を開けようと手を伸ばしその手をレミーナが止めてしまうのは不安と緊張からだった。

 「たりゃぁっ!!!!」

 そんなレミーナの不安に関係なくルミーナは軽快な声で扉を蹴った、ギギギーという重い音と共に扉が開く、やはりと言うか彼女には不安とか緊張という言葉は無縁なようだ。 

 「お姉ちゃん~~」

 「いくわよレミーナ~~~~!!!」

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