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対決フェイ・テスタロス、そしていざ魔王の城へ編


               対決フェイ・テスタロス、そしていざ魔王の城へ編



 魔族軍の野営地にあるテントのひとつで、シュバル・シュピーゲルは軽い食事をとっていた。 パンの間に肉と野菜を挟んだだけの簡単な物だが、味も栄養のバランスも悪くはない。

 「シュバル兄ぃ~!!」

 「……アリア・テスタロスか、ここでシュバル兄ぃはやめてくれと言っているだろう?」

 年下の幼馴染の少女の明るい声が響き顔をしかめたシュバルはそう注意するが、アリアは「いいでしょう? 今は二人きりなんだからさぁ~」と笑って返し、やれやれと肩をすくめる。 仮にも一部隊の隊長を務める身にしてみれば公私混同に見える行為は避けたいのだが、しかし人間界侵攻などなければ軍隊らしい軍隊など組織していない魔族はアリアのみならず規律にはルーズなのが現実だった。

 そんな魔族が短期間で攻撃軍を組織出来たのはリリーア・クリサリスの手腕であり、人徳であろうとシュバルは考えている。

 「それで、どうした?」

 「ああ、うん。 もう十日もこうしてるけどさ、人間達と戦わなくていいの?」

 開戦初期はほぼ毎日戦闘が行われたものだったが、今はほとんど戦闘も起こらずこうして両軍の睨み合いが続いているのは、簡単に言ってしまうと魔族側にやる気がないからである。

 魔族が人間に恨みや憎しみを持つような歴史もなく、大陸のごく一部にすぎない〈アレストリア王国〉を侵略しても魔族側に益はないとなれば、積極的攻勢に出て戦死者を増やすような愚かな事をするアレストリア攻撃軍の指揮を執るシレイ・カーンではない。 そして魔族が攻勢に出なければ人間側とて無理に戦闘をする理由もなく、結果こうして戦場ということを考えれば平穏な時間が続いている。

 「戦闘がないならそれに越したことはない、所詮は魔王の戯れに過ぎんのだろうからな」

 「ふ~ん? そういうものなのかぁ……」

 魔王は唐突に軍隊を編成し〈アレストリア王国〉を侵略してこいと命令しただけでその理由も説明せず、それ以降は何も言ってこないのだから、シュバルでなくとも戦う気など起こらなくなるだろう。

 いっそこのまま反乱軍にでもなって魔王を倒してやろうかと思わないでもないが、魔族は魔王を倒すことは出来ない。 シュバルがこうして思うように反抗の意思は持てはするが、実際に対峙した時には魔王が自らを殺せとでも命じない限りは攻撃すら出来ないらしいというのはリリーアの話で、半信半疑と言うのが本音だがリリーアは根拠もなくいい加減なことを言う女でもないので試そうとは思わない。

 「そういうものだよ、お前だって別に人間を殺したいわけでもないだろ?」

 「ま~ね、戦いで身体を動かすのは好きだけど、命のやり取りが好きってわけじゃないしねぇ……」

 「ならのんびり出来るうちはのんびりしておけ、もし魔王が総攻撃を命令でもすれば嫌でも戦わねばならないんだ」

 その前に人間の”勇者”が魔王を倒してくれればいいがなと思う、魔王と戦うべく人間側に現れる勇者の出現を皮肉なことに魔族のシュバルは待ち望んでいるという事実に彼は心の中で苦笑するしかなかった。




 目の前で起こった光景にレミーナ・シルフィードは呆然となっていたのが、姉のルミーナ・シルフィードがひょいっと傍に着地した事で我に返った。

 「……ちょ、ちょちょちょ……お姉ちゃん! あれって……!?」

 「う~~ん? 【レイオ・ブラスト】だけど?」

 「あ! な~んだ……って!? 【レイオ・ブラスト】ぉぉぉおおおおおおおおおっ!!!?」

 あまりにも何でもないことのように言ったのでついスルーしてしまいそうになったが、【レイオ・ブラスト】は失われし魔法と言われているレイオ・シリーズの中でも人間には使用不可とまで言われている魔法である。 確かにルミーナの読んでいた書物には記されてはいたが、いくらなんでも使えるとは想像もしなかった。

 「……それでお姉ちゃん、身体は何ともないの?」

 「ん?……う~~~ん?……ちょっと疲れたかなぁ~?」

 「……そんなんで済んじゃうの? 【レイオ・ブラスト】を撃って……?」

 すべての魔力を使い切り下手をすると死に到るという記述を思い出し、ぞっとなって聞いてみたがルミーナは平然と言った。 姉がすごいのか書物の方が間違っていたかの判断はレミーナには出来ない。

 「とにかく……!!?」

 二度と【レイオ・ブラスト】は使わないでと言おうとして、頭上からの殺気に気がつきレミーナは反射的に見上げると巨大な鎌を持った赤毛の魔族が降下しルミレミ姉妹の数メートル先に降り立った。

 「魔族っ!!」

 レミーナは叫ぶと同時に《エターナル・ツインダガー》を抜き構えルミーナの方も新たに現れた敵を油断なく見据えていた、どう考えてもこの女魔族が敵ではないという事はありえない。

 「私の名はフェイ・テスタロス、勇者よあんたの力をためさせて貰うよっ!!」

 名乗ると同時に両手で構えていた大鎌――《クリムゾン・デス》を振り上げ斬りかかってくるフェイを姉妹は左右に跳んで回避し間髪いれずにレミーナは《エターナル・ツインダガー》で斬りつける。

 「いきなり何なのよ!」

 「言ったとおりだ、その娘の力を試すっ!!」

 《クリムゾン・デス》と《エターナル・ツインダガー》がぶつかり金属音が響いた、そしてレミーナが後ろにとんだ直後に《クリムゾン・デス》が横なぎに払われ空を切る。

 「お姉ちゃんをっ!!?」

 「お姉ちゃん……そうか、あんたらは姉妹か!」

 「そうよ! お姉ちゃんに手を出そうって言うんならっ!!」

 フェイの斬撃を回避し一気に懐に潜りこうもうとするが横に跳んで距離をとられる。

 「私に動きについて来れる、流石は勇者の妹というところか!……って、ちょっと待った!」

 「……え?」

 更に攻撃をかけるべく地を蹴ろうとしたところに急に待ったをかけられ危うく転びそうになるのを何とか堪えるレミーナ。

 「私にはどうみてもあんたの方が姉に見えるんだが?」

 「…………あーーそういうことなのね……」

 質問自体はうんざりするくらい聞きなれたものだが、まさか魔族までが聞いてくるとは想像出来なかったレミーナは多少脱力するのを感じながらも簡単に事情を説明した。 あなたには関係ないでしょうと突っぱねる事をしないのは、もはやこの質問に答えるのがレミーナにとっては当たり前の習慣になりつつあるからである。

 「……成程ねぇ」

 話の途中で奇襲をする事もしなかったフェイが納得して頷く、うっかり呪いにかかってしまう勇者というのもどこか間抜けな話ではるが、しかし先ほどの【レイオ・ブラスト】を見た後では油断をする事は出来ない。 現にその小さい姉は妹とフェイの戦いの隙を見て攻撃魔法を撃ち込もうと狙っているのをフェイは気がついていた。

 流石に二対一は不利かも知れないと判断する、【レイオ・ブラスト】に気をとられ気にしていなかったがこの妹の方も剣技は相当の腕前であり、そこへ更にレイオの魔法を撃ち込まれるのを警戒しながらの戦闘は神経をすり減らす。

 「……勇者よ、あんた名前は?」

 「勇者って何よ! あたしはルミーナ! ルミーナ・シルフィードよっ!!」

 「そうか、ルミーナ、私と一対一で勝負しろ! 【フライト】!」

 一方的に言い放つと飛翔魔法を使いフェイは空中へと舞い上がるのは、水竜との戦闘にレミーナが参加していないことから彼女は飛翔魔法を使えないと判断しての事だ。

 「お姉ちゃん! 挑発には……」

 「やってやろうじゃん~!!」

 「……乗らないでよぉぉぉおおおおっお姉ちゃんの馬鹿ぁぁぁああああああああああっ!!!!」

 フェイを追ってあっという間に上昇しその姿が小さくなったルミーナを見上げながらレミーナの叫びが空しく響く。



  

 上空百メートルといったところで《クリムゾン・デス》と【レイオ・ブレード】がぶつかり合う、ルミーナは間合いをとりつつ隙を見て一気に懐に跳び込み離脱するというヒット・アンドウェイを、空中という三百六十度の方向から攻撃可能という利点を生かしあらゆる角度から仕掛けていく。

 当然魔力や体力の消耗は激しいのだが、戦闘において駆け引きというもをせず全力で体当たりをするかのように戦い、実際にそういう無茶が出来てしまうのがルミーナなのである。

 「……やるじゃないか、ちょこまかとっ!」

 しかし、フェイもそのすべてを《クリムゾン・デス》で受けるということをやってのけた。

 「だいたい! 勇者って何よ勇者って!」

 「勇者とは魔王と戦う者! それがあんたかも知れないって事だよルミーナ・シルフィード!!」

 「魔王と……わっ!?」

 すんでのところで《クリムゾン・デス》を回避する、直撃を食らえば防具も付けていないルミーナの身体は容易く真っ二つにされるであろう鋭く輝く刃をルミーナが恐れる事無く攻撃が続行出来るのは当たった時の事など考えもしないという無謀にも近い怖いもの知らず故である。

 「あんたのその力も技も大したもんだと思うよ! 【レイオ・ブラスト】を撃ってなお、こうして空中戦をするだけの魔力があるって半端じゃないっ!! だが、いつまで持つ!?」

 「あんたを倒すまでよっ!!」

 「そうかい! 【クリムゾン・ソニック】っ!!!」

 ルミーナと十メートルはあるだろう間隔で振るわれた《クリムゾン・デス》から深紅の三日月状の光が放たれたのを回避しようとしてわずかに左の二の腕をかする、服のみならず肉まで斬られたようで裂かれた袖の部分が赤く染みになる。

 「にゃろ~~~だったら!【レイオ・ブレード・ソニック】!!」

 「何っ!?」

 痛みに顔をしかめたが、お返しとばかりに【レイオ・ブレード】を飛ばすルミーナだが、フェイが回避するまでもなく光の刃は明後日の方向へと飛んでいったが、【レイオ・ブレード】のこういう風な使い方をフェイは知らなかった。

 「【レイオ・ブレード】にこういう使い方あるだとっ!?」

 「あんたの真似をしただけよ!」

 「何を馬鹿なっ!」

 「本当よ! 思いつきのぶっつけ本番っ!!」

 フェイが魔力の刃を飛ばしたからルミーナも真似をし【レイオ・ブレード】の刃を飛ばしたというのは尋常なことではない、一箇所に集中させた魔力を刃となし放つのは最初からそれを目的としている魔法だから出来るのである、本来腕に魔力を集中させブレードを形成させる【レイオ・ブレード】は腕から離れた途端に消滅するのが普通であり、それが出来たということはルミーナは瞬時に【レイオ・ブレード】をそうい事が出来るよう改良してみせたという事になる。

 そんな馬鹿なとフェイは心の中で驚愕した、それは理屈で出来ることではなく、ルミーナは勘と本能で無意識下でやったとしか考えられない。

 「……あ、あんたは化け物かっ!?」

 「こんな可愛い女の子に失礼なっ! 【レイオ・ブレード】~!!」

 再び右腕にブレードを形成させると斬り込んでゆくルミーナを動揺しながらも回避するフェイは、しかし反撃するのは忘れていた。

 「……くっ! どうやら勇者というのは本物か!」

 「だから、あたしは勇者じゃないって言ってるでしょう! 別に魔王を倒そうとか考えてないからっ!!」

 そんな事は国王とかそういう偉い人らがどうにかする事であり、田舎暮らしの女の子がやる事ではないというのがルミーナの考えだ。

 他者から見たら規格外のハイ・スペック少女でもルミーナ本人は魔法や剣がちょっと得意な女の子という認識しかなく、またレミーナを始め親しい者達もハチャメチャな女の子とは扱ってもその力を恐れたりねたむでもなく普通の女の子として接していたからルミーナは自分のことを特別ではない平凡な一市民に過ぎない存在だと思っている。

 「だが、勇者の存在を知れば魔王はあんたを殺そうとする!!」

 《クリムゾン・デス》を斜めに構え突貫するフェイ・テスタロス。

 「だったら魔王をぶっとばすわ!」

 一気に加速しまっすぐ突っ込むルミーナ・シルフィード。

 二人のシルエットが空中で交差した……。




 「お姉ちゃんっ!?」

 大声で叫ぶレミーナの見上げる中で激しい空中戦を繰り広げていた二人が降下してくるのが見え、決着がついた事を察する。

 先に着地したのはフェイでその口元がにやりと笑ったように見え、続いて降り立ったルミーナは「わきゃっ!?」と仰向けに倒れてレミーナはぎょっとなった、最悪の状況が頭を過ぎり悲壮な顔で駆け寄ろうする彼女の耳に呻くようなフェイの声が聞こえた。

 「……あんたの……勝ちだよ……ううっ……」

 「……え?」

 フェイは左のわき腹を抑えている手を、そこから流れている真っ赤な血で染めていた。 慌ててルミーナの方へ視線を戻すと彼女は「……う~~着地失敗……あたたたた……」と言いながら起き上がっていた、一瞬呆気にとられた後に身体の力が抜けその場にへたり込みそうになる。

 「……お姉ちゃん、もう! 心配ばっかりかけて……」

 冒険ともなるといつも一人で無茶してその度にレミーナは心配してきた、結果的にはルミーナは自力でなんとかしてしまうのだが、だからと言ってレミーナが安心出来るものではない。 

 「たはははは……ごめんね、レミーナ……さてと」

 照れたように笑いながら謝るルミーナが不意に後ろを振りかったのにレミーナはまだフェイが生きている事を思い出した。

 「フェイって言ったけ? どうするの、まだやるの?」

 「……まさかな……結構深く……やられたな、これではあんた相手に戦闘は……無理だ……ね……」

 苦しそうに脂汗まで流すフェイを見ればそうだろうなとレミーナも思う、姉は彼女をどうするつもりなのだろうと表情を窺ってみると満足げな顔で笑い【レイオ・ブレード】を消した。

 「……殺さないのかい?」

 「まあね~♪」

 相手が魔族だけに不安だったが戦闘不能者に止めを刺すような事をしない姉に安堵した、戦闘中の不可抗力ならともかく戦闘が終わってまでも相手の命を狙うというのはレミーナは嫌だし、そんな残酷な姉の姿も見たくない。 それでもこのままというわけにもいかないのでレミーナは《物入れ玉》からロープを取り出すと言う。

 「とにかく、あなたを拘束させてもらうわよ? そうしたら手当てはしてあげるから」

 「……ふっ、当然か……いいだろう、別に抵抗する気はない」

 嘘を言っているようには見えないが、それでも油断なくフェイをロープで縛った後に薬草を塗り包帯を巻いてあげる。 肌の色が違うとはいっても自分達と同じ赤い血が流れるのを見れば、魔族も結局は人間と同じ生物だという印象をレミーナは抱いた。

 そして、よく考えればどうして魔族が〈アレストリア王国〉を攻めているのだろうかとそんな疑問が浮かび尋ねてみたくなり、実行した。

 「……決まっている、魔王の命令だからな」 

 「じゃあ、その魔王はどうして?」

 「さてな? 私らとて知らないさ……魔王の命令ならやるしかない、それが魔族なのさ」

 自嘲気味に答えるフェイにレミーナは訳が分からないという表情になってルミーナを見やるが、彼女も首を横に振る。 人間に意味不明な戦争を仕掛けたり、ハーレム作りのために人間の女の子を誘拐しようとしたりと、どうも理解の範疇を超えている気がするというのが正直な感想であり、フェイは魔王を嫌悪しているようだが、それは多分フェイだけではないだろうと予想出来た。

 「ふ~ん? 嫌なことなのにやるなんて変だねぇ?」

 「人間には分からん事さ……」

 不思議そうな顔をするルミーナにフェイが多少不快感を顕わにして返すのを見れば、彼女らにも複雑な事情があるのは理解出来たが、おそらくそれは自分達がどうこう出来る問題でもない。

 「ねえ、レミーナ?」

 「ん? 何、お姉ちゃん?」

 急に自分に話を振ってくるルミーナに嫌な予感を覚える。

 「魔王をぶっとばしに行こう」

 「……………は?」

 レミーナが姉の唐突な言葉を理解するのに五秒はかかった彼女が「えぇぇぇえええええええええっ!!!?」と大声を上げるのは毎度のパターンだが、今回は驚きに目を見開いたフェイを追加されている。 

 「お姉ちゃん、本気なの!?」

 唖然となったレミーナがそう聞けば「もちろん~♪」とルミーナが答えるのも毎回の事だが、それにしても近所の悪ガキをぶっとばしに行こうというかのお気軽さで言うことではない。 確かにこのフェイがルミーナを狙ってきたという事は今後も魔族が彼女を狙い続ける可能性はあるのだろうという事を考えてもである。

 そして予想はついていても一応「どうしてなのよ?」と聞いてみれば「頭にきたから!」という答えが返ってくる。

 ルミーナにしてみれば、自分が狙われ続けるのも鬱陶しいし魔族達も好きでやって来るわけでないと知れば魔王がどれだけはた迷惑な存在かということになり、ぶっとばしに行こうという発想になる。

 「で、でもさお姉ちゃん! 魔王のいるとこなんて分かるの?」

 「根性で捜す~!」

 「根性で見つかるわけないでしょぉぉおおおおおおおおおおっ!!!!」

 レミーナが叫ぶような大声で突っ込んだ時、不意に愉快そうな笑い声が響いた、フェイである。

 「くっくっくっくっあっはっはっはっ!! あんた達は面白い姉妹だな? 何なら私が連れってやってもいいぞ?」

 「魔王とこ?」

 「そうだ」

 ルミーナの問いに頷くフェイをレミーナは疑いの眼差しを向けるのは当然だろう、魔族が魔王を嫌っているのは事実だろうがすぐにこのフェイ・テスタロスを信用できる程レミーナもお人好しではない、もっともそれはフェイも承知しているようだ。

 「私としても勇者……いや、ルミーナが魔王を倒してくれれば万々歳なのだよ。 私だけでなく魔王のせいで友人や妹もいろいろ迷惑していてね、とりあえず利害は一致していると思うが?」

 「……むぅ?」

 フェイの言い分は至極全うであり、そう言われるとレミーナも返答に困った。 一度行くと言い出したルミーナを止める事が出来るとも思えず、魔王を倒す事が人間と魔族の両者のためになると知ればレミーナも魔王討伐をしたいとは思うが、自分達姉妹だけで魔王に勝てるか?という問題がある。

 ルミーナは規格外の戦闘能力を持つが魔王とて魔族を従える存在であり、おそらくは相当の戦闘力を持つだろうと考えればやはり無謀だという結論になり、だからレミーナは思考の堂々巡りに陥る。

 「うんじゃ、行こうフェイ~♪」

 「……へ?」

 ルミーナにはレミーナのような迷いはない、自分がこうしたいと思えばすぐさま実行するのは理屈や論理でなく直感でこうするのが正しいのだという自分の心に従うからだ、それに振り回される身としてはたまったものではないと言いたいレミーナだが、ルミーナは決して自分のエゴだけの我がままは言わない。

 過去に冒険に出かけようとした際にレミーナが高熱を出した時には冒険を中止し看病したりする思いやりをもち、自分が間違っていると理解すれば他者の言うことを素直に受けいれる事もしてみせるルミーナ・シルフィードは、純粋で真っ直ぐで思いやりがあるから自分のしたい事をしていてもそれが結果的にはそれが皆のためにもなり、そんな姉が大好きだからレミーナは何だかんだと姉に付き合うのである。

 「じゃあ、行こうレミーナ?」」

 そうやって差し出された小さな手は、子供の頃からレミーナを引っ張りまわしてきた手だ、この手に引っ張られ散々な目にあったことは一度や二度ではないが決して後悔した事はなく寧ろ楽しいことばかりだったと思う。 その手がこうして差し出されると魔王討伐も何とかなってしまうんじゃないかとそんな気がしてくる、そんな不思議な魔法の手をレミーナは握り返していた。

 「当たり前でしょう? お姉ちゃんだけじゃ心配だもの」

 

  


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