表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後RPG  作者: グゴム
6章
43/100

43 北上

          挿絵(By みてみん)            

43


「アギルデーモン――さっき言った通り、数は31でレベルは大体30前後、内訳は剣持ちが15、鎌持ち10、杖持ち6ね」


 吹き荒れる吹雪に紛れて、さあきの事務的な声が聞こえた。


「おーけー。んじゃファーストヘイトは俺が引き受ける。お前は杖持ちを魔術で打ち落とせ」

「はーい」

 

 急峻な雪山をなぞるように延びた山道。周囲は延々と雪が降り続けていた。雪だけでなく、風も強い。


 山道の中腹――少しひらけた場所にモンスターが集まっている。さあきの【解析】により事前にそれを察知できる俺達だったが、連中は山道を封鎖する形で固まっており、さすがに遭遇エンカウントは避けられそうになかった。そこで今は、先制攻撃を仕掛けようとしている所だ。


「始めるぞ。【風術】【ウィンドカッター】」


 敵の気をひくために唱えた【風術】の基本魔術【ウィンドカッター】。【風術】スキルが上がった現在、大量の風の刃を発生させる事が可能になっている。切れ味鋭い突風が群れを成して襲い掛かり、連中にまんべんなくダメージを与えていった。


 同時に、無数の眼光と無表情な顔にこちらを向く。アギルデーモン――硬く、どす黒い表皮を持ち、漆黒の羽と大きく曲がった背が特徴的な悪魔タイプのモンスターである。その姿はなるほど、一般的な悪魔のイメージとそう大差ない。


 強さ自体はたいした事はないのだが、巨大な大剣を手に飛び回る奴から、かなり高ランクの魔術を使いこなす奴まで様々な種類がおり、そいつらが高い知性の下で連携してくるのでなかなか面倒だった。少なくともさあきと二人きりだったら、毎回気の抜けない戦いになっていただろう。


 だが、現在俺達は三人パーティ――そして、その三人目が化物だった。




 俺達の背後から飛び出したワンピースの少女が、巨大な大鎌を手に、勢い良く敵陣のど真ん中に飛び込む。そして着地と同時に、景気良くアギルデーモンの一匹を脳天から叩き斬ると、少女は威勢のいい啖呵を吐いた。


「おう。おうおう。死の君たる我に逆らう愚者どもめ、目に物見せてくれる――かかってこんかい!」


 死神ヘル――死の君という二つ名を持つこの骨少女の強さは圧倒的で、地上の雑魚モンスターなど一切意に介さないようだ。


「アハハハハ! ここの奴らは我を恐れぬな! 愉快。愉快」


 ケラケラと笑いながら、じゃれる様に敵を虐殺していく死神。だが、これでもヘルは本調子じゃない。どうも調子が良くないそうだ。さあきに調べさせても、確かにヘルはレベルのわりにステータスが低かった。


 しかし、それを差し引いてもヘルは十分強い。体の数倍はある大鎌をぶんぶんと振り回し、黒の甲殻に覆われたアギルデーモンたちをバタバタとなぎ倒す。その殲滅スピードはすさまじく、30匹以上いた敵の大部分をヘルが倒してしまっていた。



……



 よこたて、三好の二人とエ・ルミタスで別れ、俺は幼馴染のさあきと死神ヘルを連れて、北へ北へと進んでいた。目的地は北の果てにあるという、大悪魔ルシファの居城――ヴァレンシス城である。


 以前、魔界ニブルヘイムで魔王アンラから聞いた話によれば、ルシファは地上ミズガルズの魔王とよばれ、最大規模の領土テリトリーを持ち、地上ミズガルズに居を構える魔界ニブルヘイムの住人の中では、最も有力な魔族だそうだ。


 そして、ここが重要なのだが、ルシファは魔石十二宮ジェムストーンを複数持っている。アンラによれば、2,3個は持っているだろうとの事。つまり、魔石十二宮ジェムストーンを集めるためには避けては通れない――本来ならば最初に向かうべき場所だった。


 では何故後回しにしていたかと言うと、ルシファの居所が問題だったのだ。単純に遠すぎる。なにしろ、すでによこたてたちと別れて二週間はたっているのだから。



 まず、世界地図ワールドマップ上で人の住む最北の国――アギルランドにたどり着くまでに、エ・ルミタスから五日ほど走りつめた。俺一人なら二日もあればたどり着けただろうが、なにぶんさあきのAGIが低すぎて、こいつに合わせて進むとこれが限界だった。


 途中、さあきにスキル【ダッシュ】を習得させ、移動速度の底上げをしたのだが、それでも俺やヘルの走る速度の半分ほどしか出せなかった。まあ、飯も作ってくれるし、スキル【解析】もとても便利だから文句は無いのだが。



 アギルランドの首都であるダロンから、人類最北の砦 (名前は忘れた)までさらに二日。その先は雪に覆われた道なき大雪原を、魔王アンラからの情報と粗末な大陸地図、そしてさあきの【解析】スキルによる周辺マップを頼りに進んだ。


 そして現在は大雪原も抜け、名も無き山脈をさらに北へと進んでいる所だった。



 一応、持てるだけの食料と防寒具、そしてテントなどのキャンプ用品は仕入れている。輸送の問題は、ヘルの便利な骨召喚によって解決された。数歩後ろにつき従う死者の軍団(スケルトン)たちが、この吹雪の中文句も言わずに、かさばる荷物は延々と運んでくれているのだ。ただ見た目が人骨なので、「気味が悪い」とさあきには最初不評だったが。



異世界人仕様の体力、ヘルにより召喚された人骨荷車、そしてさあきの【解析】による正確な地形と方角の把握。サバイバル経験など皆無だった俺達だったが、これらのお陰で特に問題を起こさずにここまで来た。


ただ、いかんせん人間の住まない地域だ。モンスターが異常に多く、旅の道中で見かけるのは雪かモンスターの二種類しかないという始末だった。先程のように、モンスターの団体と遭遇する事もざらである。


 まあ、レベル的には問題無い連中なので、良いレベル・スキル上げになるのだが。



……



「アハハハハ! 全滅! 全滅! 戦利品が大量だのう――ほれ、貴様ら残らず拾っとけ」

「白ちゃん達、ご苦労様ー」


 付き従う白骨スケルトン達を顎で使い、大量のドロップ品を回収させるヘル。さあきもヘルの横でそれを見守っていた。当初、この不気味な白骨スケルトン達におびえていたさあきだったが、最近は一周回って可愛く見えてきたらしく、ちゃんづけで声をかけるまでになっている。


 そんな白骨スケルトン達の労働を眺めながら、俺は厚く着込んだ毛皮のコートに首をすくめる。降りしきる雪がさらに強くなってきやがった。


「ねぇヘルちゃん――本当に寒くないの?」

「うむ?」


 さあきが呆れたように言った。俺とさあきは、街で仕入れた最高級の毛皮で仕立てられたダウンコートを羽織り、さらに魔術を使って作成した湯たんぽを大量に懐に仕込んで、何とか寒さに対抗している。一方、ヘルはここに来てもまだワンピース一枚で過ごしていた。吹き荒れる雪の中、そんな薄着で走り回るヘルを見ていると、こっちまで寒くなってしまう。


「まあ少しは寒いが、耐えられなくは無い。この程度の寒さは寒いうちに入らぬぞ。魔界ニブルヘイムにはコキュートスと呼ばれる地域があってな、それはもう寒いという言葉では表せないほど寒い。我も昔、遊び半分で行ってみたら、一瞬で凍り付いて死にかけた事がある。死神なのにだ! アハハハハ!」


 ヘルは、戦闘によって発生した返り血もぬぐわずに、ケラケラと笑い転げていた。すでに打ち解けているさあきは、楽しげに笑うヘルを見て微笑んでいた。



 そんな感じで、俺達はわりと能天気に進んできた。その長旅もそろそろ終着である。目的地であるヴァレンシス城が近づいてきたからだ。



一橋空海

Lv49


HP 1440

STR 160

DEX 203

VIT 119

AGI 258

INT 105

CHR 220


スキル/死39, 短剣35, ダッシュ26, 風術22, 水術24, 隠密34, 眼力31, 開錠18, 魔石加工12, 鎌8



更科(さらしな) 沙愛(さあき)

Lv36


HP 1012

STR 164

DEX 123

VIT 143

AGI 99

INT 176

CHR 115


スキル/解析37, 棍棒22, 火術24, 土術20, 水術25, 隠密12, 調理28, ダッシュ3



ヘル

Lv 99


HP 2320

STR 291

DEX 219

VIT 183

AGI 247

INT 217

CHR 326


スキル/死の君255 鎌198 死の左手172


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ