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放課後RPG  作者: グゴム
2章
13/100

13 襲撃

          挿絵(By みてみん)            

13


 サラとエレンがホームに来て1週間ほどが経過した。


 2人は思ったよりもいい働きをしてくれている。俺たちが迷宮探索に潜っている間、歩けない姉のサラはお針子として裁縫や装備の補修などを担当し、姉の分まで働くと意気込んでいる妹のエレンは家事全般を担当する。タクヤの狙い通りその分俺たちは迷宮探索に集中できていた。


 特にサラは思った以上に優秀だった。裁縫はかなり得意なようで、技術の高さをさあきが褒めちぎっていた。いままでこの辺りの仕事は、さあきと六道りくどうの担当だったが、それは所詮、現代女子高生が家庭科で習う程度の技術だった。だがサラのそれは完全にプロの手際である。貴族のお嬢様ってこんなにすげーのかとも思ってしまった。


 と思っていたら、そんなに裁縫が上手いのはサラだけだった。というのも、妹のエレンは全くの不器用であり、細かい作業はてんでダメ。何をやらせてもがさつで空回りしていた。いつも失敗してはサラに説教され、しょうがなく俺たちが仲介に入るといった感じ。まあやる気だけはあるのが救いだ。


 2人とも当初の不健康そうな様子は無くなり、だいぶ体つきが良くなっている。サラの足も、最初来たときよりはかなり調子が良いそうだ。切断してからまともな治療を受けてなかったらしく、相当ひどい状態になってしまっていたからな。


 そしてなにより、2人とも笑顔が増えた。だいぶ警戒心が解けて、ここの生活にも慣れてきたのだろう。


 一応、2人に裏が無いかを警戒していたのだが、さあきに調べさせたステータスや持ち物にも特に怪しい所はなく、時折(ときおり)話す過去話にも矛盾はないようだったので、今はそんなに警戒していない。



「それに、リアルメイドはずるいよなぁ」


 つい独り言でつぶやいてしまう。先日、そろそろメイド服を買ってきこようという話になった時だ。思った以上にさあき達女子が食いついてきて、それぞれが熱くメイド服について激論を繰り広げた後、話を聞いていたサラがあっという間に一着仕立ててしまうという事件があった。


 それを妹のエレンに着させてみると、まさに反則級の可愛さで、皆で大騒ぎしてしまった。ただ、女子と男子ではざわつくポイントがずれていた様だが、そこは気のせいということにしておこう。


 サラはすぐに自分用のメイド服も作成し、お揃いのメイド服を着た金髪姉妹が一緒に並んで、『お帰りなさいませご主人様』と出迎えてきた時には、もうなんていうか、最高でした。


 閑話休題。とにかく2人のサポートもあって、迷宮探索のペースは加速し、踏破も目前である。現在マッピングは19階まで終わり、宝箱回収も17階まで完了した。20階はボス戦の可能性もあるので、後回しにしていた。



 現在時刻は真夜中すぎといったところだろう。日課である真夜中スキル特訓をするため、屋根上に来ている。いつもなら月明かりで結構遠くまで見通せるのだが、今日は雲が厚く出ているようで、闇が深い。文字通りの、一寸先は闇状態である。さきほどまで微かにさあき達のガールズトーク(笑)が聞こえていたのだが、静かになったところを見ると寝てしまったのだろう。


 というわけで、スキル上げである。今、重点的に上げているのはスキル【魔石加工】。街で出会った魔道士エルフの話をタクヤと検討し、2人で【魔石加工】のスキル習得することにした(代わりに【覗き見】スキルを消去している)


 向かって右側に山積みにされた魔石を手に取り、【フォーマット】と念じると、淡い光と共に透明な結晶へと代わる。それを左手の箱に投げ入れる。それを何回も何回も繰り返していた。


 この透明化した魔石に様々な魔術を詰めること(【エンチャント】)ができ、それを生活や戦闘で使う。フレイヤの話をまとめると、高レベルの魔術やレア魔術を売り物にするために必要な手順は、


1.質のいい魔石を手に入れる。

2.その魔石から不純物を抜き取る。

3.高レベルの魔術やレア魔術を詰め込む。


の三つである。


 1.は今まさに魔石を手に入れるために迷宮探索をしているから問題ない。質についてもさあきの【解析】により、容量というパラメータが存在することがわかったので、大まかな等級付けが出来るようになった。どの魔術にどの程度の容量が必要なのかはこれから調べていく予定だ。


 3.についてはタクヤの出番である。ユニークスキルの【時術】に加え、火水風土の基本魔術をすべて習得しているこいつに、この過程は任せてしまえばいい。


 ということで、おれがいまシコシコやっているのは手順に2.【フォーマット】である。なぜコンピュータ用語? と突っ込みたくなるこの技は、【魔石加工】スキルの基本技の一つであり、魔石から不純物を抜き取り【エンチャント】できるようにするもの。


 それだけの技なのだが、どうも質の良い魔石だと一回一回に大量のHPを消費するため、数をこなすのは中々面倒である。このHPを消費する性質は3.の【エンチャント】をする場合にも適用されるため、じゃあ分業するかということで俺が【フォーマット】を担当しているという話。


 だが、思った以上に面倒な作業だ。一回で多い時はHPを半分以上持っていかれ、回復するのに数分かかってしまう。それにいきなりHP全部持っていかれて死亡というギャグみたいな事は無いだろうが、しかし可能性は排除できない。仕方ないので出来るだけ質の悪い魔石から処理するようにしている。スキルが上がるばもうちょっと楽になるだろう。きっと。


 そんなことを考えながらHPの回復を待ち、再び魔石を手に取り、【フォーマット】を発動して箱に放り込む。


 HP回復を待つ間はいつも通り【眼力】と【隠密】のスキル上げ。とりあえず上げている感が強いこの二つ。


 【隠密】は現在のスキルレベル20で使えるのは【ヒドゥン】【サイレント】【マナカット】の三つ。どれも敵に気付かれなくするタイプの技だが、現状のパーティプレイではあまり役に立っていないが現状である。だが、俺のユニークスキル【死】と相性が良いことは間違いない。上げておいて損はない、はずである。


 【眼力】のスキルは二つ、【夜目】と【千里眼】。この二つは面白くて、使っている感覚としては目を凝らすと暗視ゴーグル+望遠鏡の効果が使える感じ。遠くまで見渡せて面白いのだが、今のところ役に立ったことはあまり無い。


 原因は周囲1kmをカバーする広域レーダー持ちが居るから、ほとんどの場面ではそちらの方が有用なことが多いのだ。まったく【解析】スキルは便利なのは良いが、便利すぎて困る。



「ん?」


 その時、遠く、かなり遠くに揺らめく明かりが見えた。【眼力】スキルの感度を最大まで上げてその方向を見ると、それは20人ほどの集団のようである。そしてさらに、こちらに向かって来ているように見える。あの姿はゴブリンなどではない。おそらく、人だ。


 距離にして、まだ数kmは離れているようだったが、とにかくこんな時間にあんな集団は見たことが無い。


「方向は鉱山地帯の方か……」


 頭を働かせる。所々むき出しの山肌が見える山脈地帯の方角から、連中はまっすぐホームに向かって進んできている。ホームを取り囲むように広がる木立地帯に入ると、明かりはさらに小さくなった。目で追っていなければ気が付かないほどに。明かりを少なくしたようだ。


 とにかくあの連中、まともな集団ではなさそうだ。そういえばたしかあの辺りの山脈一帯をねぐらとした盗賊団があったな。先日、スクルドの街の戦士ギルドで賞金首になっていたことを覚えている。首領の名前までは覚えていないが、賞金額はたしか生け捕りで金貨10枚だったはず。


 要するに、盗賊団が俺たちを襲撃しようとしている可能性が高い――か。物騒な話だ。


 とにかくさっさとみんなを叩き起こさないとまずい。俺は弾かれる様に立ち上がると、二階へ降りるはしごに飛びついた。








【眼力】【夜目】

暗視効果。


【眼力】【千里眼】

望遠効果。


【隠密】【ヒドゥン】

風景と同化して不可視になる。ただし移動はできない。


【隠密】【サイレント】

移動で生じる音を消す。


【隠密】【マナカット】

自身の魔力を断ち切る。効果中、魔術使用不可。


【魔石加工】【フォーマット】

魔石を浄化する。


【魔石加工】【エンチャント】

魔石付魔を可能にする。

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