嫉妬の喚き
「納得いかないっ! 納得いかないっ! 納得いかないっ! 納得いかっっ、なぁぁあああああああああああぁいっっっ!!」
「煩いわ、レヴィ」
駄々をこねる子供のように空中を転がっている、少しウェーブのかかった緑髪のロングヘアを有したレヴィアタンに対してルシファーはピシャリと言い放った。いつからそのような言葉を浴びせ続けられていたのか、疲労を感じとれる呆れた表情を彼女は浮かべていた。
「黙ってられるわけないじゃんっ! あんなの不公平だっ! こんなにあっさり負けるなんて不公平だっ!」
「そんなこと私の知ったことじゃないわ。貴女の駒が弱かったのが一方的に悪いのよ。そもそも文句を言うなら私のように、このゲームが提案された最初の頃から駒探しをしていればよかったもののアナタは特にそんなこともせずに適当にだらだらだらだら……」
「ぐっ、ぐちぐちうるさいしっ! 別にサボってたわけじゃないしっ!」
「とりあえず、私の類稀なる才能に嫉妬するのは勝手だけど、レヴィの駒が負けたのは紛れもない事実よ。いくら文句を言ったって結果は覆らないわ。それに、明らかな違反行為がなければ何をやっても自由なのがこのゲームでしょう?」
その最後の発言は、自身が不正を行っていると暗に示したように聞き取れる。
「ムキーッ! 言い返せないから余計に腹が立つーっ!」
「自分の服の裾を噛まないほうがいいわよ。服が伸びるわ」
「ムガーッ!」
ルシファーの言葉に対抗するように、レヴィアタンはさらにいっそう裾を噛む力を強めた。
「何を言っても無駄みたいね……」
ルシファーの呆れ顔に現れた疲労の色がさらに濃くなっていた。彼女がなにを言おうとも今のレヴィアタンが聞き入れることは、なにひとつないだろう。
「これからずっとヒマじゃなぁああああいっ! つまんないっ! つまんないぃいいいいいいっ!」
「喧しいわね……」
泣き喚くように叫ぶレヴィアタンだが、ルシファーは知っている。この反応が彼女の素の反応ではないことを。
レヴィアタンは常に意識的に大袈裟に振る舞っている。相手の意識が自分に向けられていなければ気が済まないのだ。他の存在に注目が集まっているのが我慢ならない。まさしく嫉妬の化身だ。
真の彼女は冷静を通り越し、冷徹で、もしかしたら七人の中で最も実力を備えている存在……かもしれない。
「喧し過ぎてこんなところにいられないわ。じゃあね」
「勝者の余裕ってやつ!? ムカつくぅううううううっ! うぇぇぇぇぇぇんっ!」
「はいはい、演技派も大変ね……」
両目から零れる涙を拳で拭い取る仕草をしているレヴィアタンに対して、ルシファーは特に言い返すこともせずに、それだけを口にすると闇の渦へと消えていった。
後に残されたのは、先ほどまでの大声が嘘のように泣くのを止め、ニヤリと笑ったレヴィアタンだけであった。