眠りは始まりか終わりか、否か
起きるために寝て、寝るために起きる。そんな人の一番の疑問は――――
「……」
朝、目が覚めた時に私は思う。また、起きることが出来たと。
今年で95になり、寝たきりとなった私には、もしも朝起きれなかなったらどうなるのだろう? という疑問が取り付いていた。
簡単なことかもしれない、起きれなければ、それは私が死んだということだ。
難しいことかもしれない、眠っていても心臓は鼓動し、空気を欲して呼吸をする。起きれないだけで身体は動き続けるということだ。
つまりは……明確の答えが分からないということだ。寝たきりになってからというもの、考えることが趣味になったと言っても過言ではない。
だからこそ、その答えを知りたいのだが……
「だったら良いものがあるよ♪」
? 今、声が聞こえたような。娘が来たのか?
「どうも♪貴方のお悩み解決人で〜す♪」
お悩み解決人と名乗ったのは、妙な格好をした少女だった。いったい何処から入ったというのだ? 娘が鍵をかけ忘れたのか?
「いきなりですが、眠りとは何か、その謎を解いてみたいと思いませんか?」
「……なに?」
今の考えを聞かれていたような台詞だな。
「もしも、その答えを見つけることが出来たら……貴方はもう一度歩けるようになりますよ?」
「……本当か?」
「もっちろん♪ただし、本当の答えが見つけられたらだけどね」
言うなり少女は懐からペンとメモ帳を取り出した。
「考えるのに便利だよ、答えだと思うものを書き記していくのもアリだね」
机の上に置かれる。
「それじゃ、正しい答えを期待してるよ♪」
そして、少女は去って行った。
まるで嵐のような奴だったが……凄い物を残して行った嵐だったな。
それからというもの、私は眠りとは何か、その答えを考え始めた。
眠りは一日の始まりか
いや起きることを始まりとすれば始まりな訳はない。
眠りは一日の終わりか
だが12時を過ぎてから眠りその日の内に起きたのでは終わりではない。
眠りとは人が避けては通れないものか
寝ずに働き続けた者も、いずれは力尽きて寝入ってしまう。
だが、これは違う気がする。
そんな簡単な答えな訳が無い。
眠りとは……何なのだろうか?
必要なことを考える為に、眠りを欠いて考え続けた。
考えてから、一週間が過ぎた頃、確か、ペンのインクが切れた頃だったか……
私は、これが最良の答えに行き当たり――――――――――――――
「……」
「お父さん、来たわよ」
「……」
「お父さん?」
「……」
「何だ、寝てるのか。いつもなら5時には目が覚める、って言ってるのに。珍しい」
「……」
「寝てるならいいや、今の内に部屋の片付けとか……あれ? このメモ帳……うわ、何だかスッゴい書かれてる」
「……」
「あれ? 最後だけ何だか文字が違う……」
言い忘れてたけど
そのペン、かなり特別な物でね、貴方が寝ることでインクが増える仕組みなの
だから寝ずに考え続けたりしたら、インクが無くなって…………死ぬよ♪
眠りって、生きる上で必要な、ことだからね♪
それじゃ♪答えを見つけて幸せな眠りか
答えを見つけるために考え迷って、永久の眠りか
どちらかの眠りにはつけるようにね
あは♪
『睡眠』ねむること。ねむり。動物の体の動きが静止し、外的刺激に対する反応が低下して、意識も失われているが、容易に目覚める状態。周期的にくりかえし起きる。脳波の変化に伴い、生命維持に不可欠な生活現象。
辞書の引用ですが、要は眠らないと死ぬ。ということです。
彼のような方ほど、眠りが必要なのに……迷い路は人を選びません。
迷っていれば、それでいい。後は招き入れて遊ばれる。
皆さんも、眠りは忘れずに
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