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3話 取り敢えず前世を振り返ってみた

 どの前世よりも、体力はないが、最初の騎士だった頃の経験からか剣筋を見極められたし。相手の思考を、何となくではあるけれど、徐々に読み取られるようになっていった。

 それは、次の村人として暮らした感覚も同じらしく。

 作物の知識や風の流れ、天候などから雨の降る時期や天気の崩れなど読み解くことができ始め。

 ヒビが入ったティーカップ一式を厨房から貰い受け。

 試しに花とカブなど割かし育てやすい作物を、プランター栽培として種を植えてみたら見事にカブが実り。

 花の種は、見事な大輪の花を咲かせた。

 本当なら農村部に出向いて、色々と見てみたいけど…

 お忍びでは、気が引けるし…

 もしも、何かあった時の保証はない。

 そんな事態になれば、本来護衛をしてくれている騎士にも、その農村にも迷惑を掛けてしまう恐れがある。


 ただ村人だった頃の天気や気候を、見極められる長年の勘と知識からそれらを上手く使えれば、干ばつや冷害の被害を最小限に食い止められるし。

 何よりも、もしもの備えとして確保できるかもしれない。 

 それにこの国が、飢餓に苦しむと言うことは、似た環境の隣国も同じ状況になり得るわけだ。


 …となると、隣国の公爵家に婿入が決まっているハイス兄さんに話を付けておけば、ハルトナ兄さんは、ハイス兄さんを介して隣国に恩を売る事もできる? …と、

 それは、今の所とても有効的な外交的な手段で、しかももう一つの隣国にも、使える手段ではもあるな…


 使える手段は、何でも使えとは良く言ったものだ。


 そうなると…

 今の所、大して役に立たなそうなのは…

 ニホンでのオタクな僕の記憶だけ。

 平和過ぎた国で、そこまで気苦労せずに十六歳で死んだ記憶は、一番鮮明なはずなのにと僕は、肩を落とした。


 「…ロイシ?」

 …ハイ……と、慌てたように僕が答えると、父でもある国王が、取って付けたように「…と言う訳だ。異論がなければロイシは、親族筋にもあたる宰相夫婦預かりとる。まぁ…夫婦の養子となるかまでは、そう深く考えなくて良い」

 「はぁ…」まぁ…親戚だしね…


 とは、言ってみたものの…

 不安しか残らないが、本音だ。

 伯父夫婦とは、本当に仲良くさせてもらってる。

 子供を授かれなくてとは、聞いていけど…

 まさか、僕にお呼びが掛かわるとは、思ってもみなかったが、消去法で言うと納得せざる得ない。


 「不安か?」

 「…いいえ…」思わず目を、左右に泳がせてしまった。


 「預かりと言っても、宰相夫婦は、この居城に住んでいるようなものだ衣食住が、大きく変わる訳でもない」

 「そうですね」


 確かに伯父の宰相夫婦は、国に何かあった時に直ぐに国王の元に駆けつけられるようにと、城内に住んでいる。

 元々は、この国の公爵家の一つフェンリックス家の出で、在学中から政治を学び。学園を首席で卒業した後は、法務局に席を置いていたらしい。

 入局直後から優秀で、視野が広く色々な情報や文献を見聞きし。

 時には、天候からくる経済的損失を、直属の上司に信書で報告した際は、その訴える文体に的確な見解とそこから導き出された干ばつからくる水不足問題を、その上司を介し財務局等に回してくれたらしく。

 余裕をもって、問題に対処できたらしい。

 そこから法務局には、かなりの逸材が居ると噂になった。

 その話は、当時の宰相の耳にも入っていたが、いくら人材確保と言っても局や役職が違う事に面談等の打診を出せずに月日だけが、過ぎていったらしい。


 数年後。

 学生ではあったが、母がまだ父の婚約者だった頃。

 母の家を訪ねていた父は、母から優秀な従兄弟が遊びに来ていると父に引き合わせた事で、前宰相と伯父を引き合わせる事もできたらしい。

 まぁ…

 結果的に言うと、前宰相との出会いは、更にそのニ年後だらしい。

 その時、前宰相は中々の高齢に差し掛かろうとしていて、本気で後継者を探していたが、思うような人材が見つからず当方に暮れていたから余計に…

 父の元で本格的なお后教育をしていた母の元に本家の使いとして従兄弟のフェンリックス氏が、訪ねてきたらしい。

 その場に偶然居合わせた前宰相は、目の前に居る人物が、あの法務局に在籍している優秀な人材と知り喜び過ぎて小躍りしたとか逸話がある程だ…

 その時にスカウトと言う形で伯父を、引き入れたそうだ。

 そこからは、メキメキと頭角を現し満足のいく後継者が出来たと宰相の地位を譲って隠退した。

 今の日課は、散歩だそうだ。


 そんな成り行きで、宰相になった伯父とは、一緒に食事をする時もあれば、ティータイムに呼ばれる事も多い。

 よく父と伯父が、互いに陰日向となり国を支えるそれが、王侯貴族としての努めで、責務だと口にしている時がある。


 「時に…ロイシ」

 「はい」

 「これから。宰相の公務に付き添い私や宰相が、どう国を動かしているのかを、見て覚えなさい」


 要約すると、学び取れるものは学び。

 分からないことは、直接見聞きしろ。

 これから先は、分からないでは済まない。

 無理難題と問題は、起こる。

 筋は通せとまではいかないが、民衆は、そう言う所を良く見ている。

 「決して、独りよがりにならないように…」


 あぁぁぁ…

 もうコレは、断れないやつだな…


 冗談か、本当か父は以前、お酒の席で…


 『俺は、まだ国王も、一族としての家督も手放す気はない』


 とか、言うことがあるけど…


 間違いなく。

 コレは、酒の席での冗談でもなければ、親子の戯れた会話でもなく。

 マジの断れない話だ。


 僕が、前世で騎士だった時も…

 前戦での出陣を命じられた時、仲間うちでも死ぬだろうと予め予想していた。

 誰が、生き残るのか…

 それとも、皆死んでしまうのか…

 生かされるのは、自分達ではないことは、分かりきっていて…

 死に物狂いに戦った。

 罵声も怒声も、馬の蹄に嘶く声。

 投擲から放たれた砲弾が、近くに落ち風圧とも、地響きとも言えない腹にかかる圧を受けながらその場に踏み止まり。荒々しく剣を振り上げ自分達に向かってくる敵を目掛けて突進する。

 この戦いの中では、生き残れたとしても、無事に帰還する事は、困難だろうな…

 

 その時よりも、マシだ。


 目の前に暴走自動車が、突っ込んでくる恐怖に比べたら…


 保証された衣食住と命が、あるだけマシだ。


 「…分かりました」

 「そうか」父は、にっこりと微笑む。

 その姿は、家族にだけ見せる偽りない素顔だ。


 でも今日は、いつもよりもまだ嫌な予感がするのは、ナゼだろ?


 「それはそうと…ロイシは、恋人や想い人は、居ないのか?」


 「え"っ?」顔に似合わない随分と野太く低い声を、出してしまった。


 「何もそんなに驚く事もないだろ? もしそんな相手がいるのなら婚約者として、これから互いに支え合ってもらいたいからな…」

 「はぁ…」


 この世界に転生した現在の僕は、この通り第四王子で十九歳(末っ子)だ。

 一番上のハルトナ兄さんとは、十歳も違う。

 その真中に二番目と三番目の兄達が、バラけて産まれている。

 一番上の兄の婚約者は、5つ上の先輩だ。

 それも、ハイス兄さんから紹介らしいし。

 おそらく守備よろしいハイス兄さんとしては、早々と一番上の兄が、婚約者を決め次期国王候補となれば、派閥やら政治的な事に巻き込まれないと考え。

 アーバン学園の同学年で高等科に在籍し当時の生徒会長で、常に首席をキープしていたベロニカ・ローイヌスさんを、引き会わせたのだろう。

 確かに僕も、初等科や中等科と離れては居たけれど、在学中の彼女を何度か見掛けた事がある。

 黒髪ロングで物静かな黒曜石の瞳を持つ彼女は、とても素敵で気品があって立ち姿が、とでも美しかった。

 勿論、その佇まいから彼女に憧れを持つ男子生徒は、後を立たなくて…

 入学したらまず彼女に目を奪われるなんって、言葉も生み出されたぐらいだ。


 あっ…


 そう言えば、ハイス兄さんの婚約者で隣国の公爵令嬢のアルティエさんも同学年だったなぁ…

 淡いピンク色の瞳で、フワフワとした髪を緩く編み込んでいた印象が強い。

 黒髪のハイス兄さんとは、まさに美男美女カップル。

 そしてベロニカさんとも、仲が良かったはずだ。

 アルティエさんは、身分とか階級とか、そんな事に囚われずいつも、誰に対してもフレンドリーで気さくに人脈を作っていた。

 今から思えば、隣国の公爵令嬢だからこその行動で、色々な人と出会い言葉を交わし人の意見に耳を傾けながら人を見抜く力を、養って居たのかもしれない。

 しかも彼女達は、本当に仲が良かった。

 美女と美少女の組み合わの上、ハルトナ兄さんとハイス兄さんが、隣に立とうとすると…

 それは、別世界の異空間だ。

 物語から抜け出したカプそのもの。

 例えるならば、ニホンと言う国で生きていた近いしい前世の僕が、ゲーマー仲間達からよく聞かされていた恋愛攻略系ゲームの攻略対象に出てきそうな理想のヒロインでヒーローなんだろう。

 僕は、もっぱら戦場やらサバイバーやらのゲームしか興味がなく…

 攻撃して、仲間を守り勝利するとか、そう言うギリギリな感覚を突き詰めたゲームが好き……だったのは、一番最初の前世に左右されているからかもしれない。

 恋愛モノは、進められて一、二回したぐらいだし…

 恋愛攻略って、意外に戦闘や戦術よりも人の心理を読まなきゃならないからなぁ…

 人の動きを読むのとは、少し違うというか…


 合わなかったんだよな…


 やっぱり。

 そこは、戦いなんだよ。


 今の僕の見た目は、少し気薄(病弱に見えなくもないビジュ)で、金髪碧眼白キラキラした目元が大きく色白で身長も、高い方ではない……

 室内のガラス窓に映る自分の姿は、ドコからどう見ても…


 か弱すぎる……


 せめてアーク兄さんみたいに身長が高ければ、一緒に騎士団に入隊できたのに!!


 いや…この筋肉が付きにくい華奢な体では、無駄な足掻きに夢と散った可能性が高いか…


 でもまぁ…

 その分、学園での成績はそれなりに良かった。


 …っにしても…


 婚約者か…


 婚約者って=結婚相手になり得る人だんなぁ…

 まぁ…即、結婚とか飛躍し過ぎな考えだけど…


 こんな非力キャラでは、カッコいい兄キャラ達に埋没しかけているしどうしても、僕は霞んでしまう。

 この間、王侯貴族の間で開かれたパーティーでは、やっぱりアーク兄さんが、一番モテていた。


 上の二人は、既に売約済みだからかなぁ…

 貴族令嬢からしたら王族としてのプライドと誇りを持ち騎士としても、レベルも身長も高い。

 しかも容赦も性格も、文句無しにカッコ良く。

 茶系の髪色に母さん譲りの深緑色の瞳は、涼しげ……の割に若い頃の父上譲りの筋肉質で、力持ちな騎士ときたら…


 モテ要素しかない訳だ。


 アーク兄さんは、代わる代わるダンスを申込まれて踊っていた…


 僕は、女性がヒールを履くと同じか、逆に低くなるので…

 申込まれる事は、なかったけどね…

 

 「ハッ!」もしくは、病弱に見え過ぎていて踊れないとか、思われていたかも知れない。


 そう言えば、そのアーク兄さんの護衛として女性が、配置されていたっけな…


 綺麗な人でドレス姿だったから。

 もしかして…兄の恋人とか、思って身構えていたら…


 『彼女は、同僚で騎士のエミリヤ・グリアナ男爵令嬢だ』


 キリッとした目鼻立ち。

白銀色。もしくは薄い水色のなびく髪が輝いて見えた。

 スッと兄の後ろに控える彼女の赤みを帯びた黒色のドレス姿は、夕闇でも映え浮び上がる真紅の薔薇と彼女自身がまるで月のように、良く似合っていた。


 「なぁ…あれ…狂脚のレディージェネラル男爵令嬢じゃねぇ?」

 「あぁ…本当だ…」


 そんな囁きにも、彼女の表情は何一つ変わらなかった。

 兄を守るそれが、彼女の仕事だからだ。

 噂話など、気にも留めていないその堂々した立ち振舞は、他の誰よりも綺麗だった。

 






























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