表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/26

17話 揺れる期末前

──朝。




昇降口で靴を履き替えていると、大和くんが駆け寄ってきた。



「翠ちゃん! 今日の放課後、一緒に図書室で勉強しよ」



まっすぐな瞳。


いつも通りの元気さなのに、その熱が少しだけ強い気がして、思わず戸惑う。



「え……うん」



小さく頷いた私に、大和くんは満足そうに笑った。







──昼休み、教室。



ざわめきの中、ふいにドアが開く。



「結城先輩……!」


誰かの小さな声。



「長谷川いる?」



自然な調子なのに、教室の空気が一気に張りつめる。


心臓が跳ねるのを抑えながら、私は立ち上がった。



「今日、一緒に帰れる?」



まるで当たり前のように言うその声。


ざわつきはさらに大きくなる。



「翠ちゃんは、今日の放課後、俺と図書室で勉強するんで」



大和くんがすぐに割って入る。


教室の空気は揺れ、視線が突き刺さる。


けれど、結城先輩は涼しい顔のまま。



「そうか。……俺は今日、生徒会あるから。その後、校門で待ってる」



軽く笑いながら言い放つ。



「下校時間は、俺がもらうから」



視線が交差する。


胸が苦しくて、声が出なかった。







──放課後、図書室。



ノートを開く大和くんの横顔。



「ここの公式、こうやって使うんだよ」



丁寧に教えてくれる声は温かい。


でも、心臓は落ち着かなかった。


頭の隅にはずっと、校門で待つ結城先輩の姿が浮かんでいた。







──夕暮れ。校門。



勉強を終えて外に出ると、結城先輩がそこにいた。


待つのが当然のように、軽く手を上げて。



「行くぞ」


「え……どこにですか?」


「決まってんだろ。勉強。テスト前だしな」




向かったのは近くのファミレスだった。


ドリンクバーのグラスを前に、並んでノートを開く。



「ここ、解き方違ってる」


「えっ……あ、ほんとだ」




自然に肩が近づいて、胸のざわめきが止まらなかった。







──夜の駅ホーム。



電車を待つ時間。


結城先輩と並んで立っているだけで、心臓が騒ぐ。



「めっちゃ集中して勉強してたな」


ふいに低い声。


「えっ……?」


思わず顔を上げる。



「ノート。めちゃ真剣に書いてただろ。

……ちょっとはこっちも見ろよなって思ってた」




さらっと言うその声音に、胸がきゅっとなる。



「み、見てたんですか!? そ、そんな……!」



赤面して慌てる私を見て、口元だけで笑う。




「当たり前だろ。……俺、お前しか見てねぇし」




── 一瞬、空気が止まった。




ホームにいた生徒たちが思わず振り返るほどの爆弾。


私は言葉を失い、ただ顔を覆うようにうつむく。



「……な、なに言って……!」


声が裏返った。


「事実言っただけ」



余裕の笑み。その視線は逸らさず、まっすぐに。


電車のライトが近づく音が響く中、

胸の鼓動はもう、どうにもならなかった。





___







ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけたら、ブックマークや評価をしてもらえると、とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ