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蝙蝠の歌 -mintdrop-  作者: u
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赤川高校の試合を観た翌日は月曜日で、あたしはいつもと変わらない学校生活を過ごしていた。

天気は梅雨らしくまた雨が降っていて、野外の部活動をしている男子達が“また今日も室内練習か”とボヤいていた。



お昼休みにあたしはお弁当箱を持ってアンの机に行った。



「アンー♪一緒に食べよー?」


「ジジー。今日ね、隣のクラスのマリコも一緒に食べたいって言われたんやけど、いいかな?」


「え?マリコちゃん?いいけど、あたしほとんど喋ったことないで?」


「うちはマリコと同じ中学やったから割と話すんやけど、あんたと喋りたいんやってさー。」


「あ、あたしと?なんでよ?!」


「そんなんうちに聞かんといてよー。本人から聞いて。あ、ちょうど来たわ!マリコー♪」



マリコちゃんは目立ち過ぎないように小さく手を振ってこちらに向かってきた。小柄で肩身を狭くして歩く彼女は、どことなく小学生の頃のランちゃんを思い出した。



「じ、じ、じじ、ジジさん!!初めまして!!マリコと申しますであります!」


「は、初めまして……。っていうかマリコちゃん、喋ったことあるよね?合同授業の時とか。」


「っ!?お、覚えてくれているでありますか?!う、嬉しいです!!」


「ははは……なんで敬語?とりあえずお弁当食べようー?」


「は、はい!」



あたし達はひとつの机にお弁当箱を3つ置いて食べた。


マリコちゃんはアンに対しても敬語で、元々誰に対しても敬語ということがわかった。彼女は丸い眼鏡を何度も中指で持ち上げながら早口で自己紹介をしていた。



「………というわけでこの高校に無事受かることができたわけですね。」


「へぇー。…マリコちゃんってよく話すんやねー。ちょっと意外やわ。」


「そ、そうですか?!よく喋るのはお嫌いですか?!」


「いや、好きとか嫌いとかないよ、ふふっ!でも、あたしも話すの好きやからお喋り好きな人の方が好きかな!」


「お、おお!なら良かったです!すいません、私好きなこととか自分のことを話す時は早口になってしまいまして…。」


「ん?別に大丈夫やよ?なぁ、アン?」


「うふふっ!そうやね。なぁ?マリコー、ジジなら大丈夫って言ったやろ?」


「は、はい。アン氏の言った通りですね。」


「……?そういえば、あたしに何か用あったん?それともただ一緒にご飯食べたかっただけ?」


「ど、どちらもですね!ジジさんと仲良くなりたいのもありますし…」


「あの、仲良くなりたいなら“さん”って付けるのやめてくれへん?」


「なるほど!…では、ジジ氏!」


「氏……。」


「私は今、漫画アニメ研究会に入っております!聞くところによるとジジ氏は少年漫画を好んで読んでいるそうで、アニメなども見るのでしょうか?」


「へぇー、そんな研究会がこの学校にあったんや。漫画ならお兄ちゃんが好きやからよく読んでるよ?お兄ちゃんが毎週ジャンプ買ってて、あたしはサンデー買ってる。最近お兄ちゃんはマガジンとかも買ってるから、それも読むかな。アニメは…普通くらいかな。みんなが見てるのは見てるくらいで…」


「や、やはりそうでししたか!?実は、私も少年漫画は大好きでして……これは漫研の中でもなのですが、あまり女子で少年漫画に詳しい人がいないんです。少年漫画を語れる友達が欲しいと思っていました!ぜ、是非私と友達になって漫画やアニメについて語り合いませんか!?」


「え、ええ??それは別にいいけど、アニメそんなに詳しくないよ?みんなが知ってることくらいしか…。」


「……では、7つの球を集めると願いが叶うあの漫画の主人公に声を当てている声優さんは?」


「ん?それはわかるよ。マサコさんやろ?キタローとかカイブツ君とか。それに、その漫画の息子2人の声も出してるやん。」


「……では、“彼はそんなやつらから君達を守る為に地獄の底からやってきた正義の使者……”??」


「……“なのかもしれない”?」


「……では、“無限大な夢のあとの”と言えば?」


「デジアドでしょ?あたしはそんなに見てないけど、こんなん誰でも知ってるよ。常識問題やんかー♪なぁ、アン?」


「………。」


アンはあたしを真顔で見つめていた。


「え、あ、アン?」


「……何言ってるんか全部わからん。」


「う、嘘やん!??どの問題も?!アンって漫画とかアニメ見ないん?!」


「…人並みには見てると思うけど。」


「えー……。」


「ジジ氏!おわかりいただけましたか?!あなたの知識はもうコチラ側なんですよ!」


「こ、コチラ側ってどちら側やねん…。」


「そう!そういう返しも含めて!ジジ氏は漫画アニメの知識が豊富で、見た目もまさに漫画に出てきそうなキャラをしてらっしゃる!」


「し、してないわ!どんなキャラよ!」


「あー、でもうちもわかるかもー。なんか、ジジって“ウテナ”っぽいよなー。」


「わ、わかりますよアン氏!!そうなんです!まさにそれをイメージしておりました。もしくは“リボン騎士”!」


「……何それ?」


「な、なんと!?ジジ氏は知らないと!?」


「んー聞いたことないなー。どんな漫画なん?」


「そうですね、一言でいうと、“百合”系ですな!」


「ゆり?」


アンは横で笑っていた。


「百合をご存知ない…。簡単に言えばですね、女性同士の恋愛が描かれています!」


「へぇー。」


「…それだけですか?」


「え?なんか他の反応の方が良かった?」


「い、いえ!そんなわけでは!」


「小学校の頃に友達から同人誌っていうの教えてもらって、その子から漫画借りてたんよね。その中には男性同士のもあったし。」


「な、なんと!小学生から同人誌を!??………ジジ氏は思っていた以上に逸材ですな……ジジ氏!」


マリコちゃんは急に顔を近づけた。


「は、はい?」


「是非とも!漫研に所属してもらえませんか?!」


「え?嫌です。」


「…そ、即答…。」


「こら!マリコ!勧誘しないって約束やったやんか!ジジがバスケ部いないとこっちは大変やの!」


「す、すいませんアン氏…。あまりにもジジ氏が魅力的なだったものでつい…。あの、部活ではないので、兼部という形にもなりません!席を置くだけで、バスケに専念してもらって構いませんので、暇な時間がもしできて、その時に漫研のことを思い出したら来てくれればいいので!どうでしょうか?!」


「こらー!もう!ジジー、こんな勧誘ほっといて!」


「あはは…まぁまぁ、アンもあんまり怒らんといて。…それにあたしもマリコちゃんみたいな友達は欲しかったし、嬉しいよ。……ほんまに席置くだけでいい?もしかしたら一回も行かないかも知れないけど。」


「ちょっと!ジジ…!」


「ほ、本当ですか!?いやぁ、嬉しいです!私もジジ氏と仲良くなれて良かったですよ!漫研の活動としては、各々の好きな漫画を話したり、アニメを見たり、漫画を描いてみたり、自分達の作った小説に声を当ててみたり、そんな活動を好き勝手やっているだけですので!来てもらったら好きな漫画を手に取って私と話しましょう!」


「あはは…なんか、それこそアニメに出てきそうな漫研やね。」


「漫研ですからね!!では、こちらが漫研へのサークル参加希望書です。名前だけ書いてもらえれば……。」


「え?あー、用意早いね…。」


「もおー!マリコ!初めから勧誘するつもりやったやろ!?」


「アン氏ぃ、これには訳がありまして……」



アンとマリコちゃんの口論はあたしには楽しく思えた。あたしは簡素なサークル参加希望書にサインをして漫研会員となった。







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その日の放課後。更衣室で着替えを済ませて体育館に行くと、サワさんの周りに部員が集まっていた。



「………でな!ニシオリのやつ私のこと知ってたんよ!表情ひとつ変えずに“……イサワトワコ”って言ってな!私もビックリして少しニシオリに押されてて……そしたらな?ジジが横から出てきて、“来年赤川バスケ部ぶっ殺しに行くから首洗って待ってろ!”って啖呵切ったんよー!」


“““えぇー!!?!?”””


「な?カッコいいやろ?!ニシオリはそれ聞いても表情変えずに“……負ける気はないけど、待ってる”ってさ!もぉ漫画やんー!!あはは!」


“““キャァー♪”””



「………サワさん?」


「お!噂をすれば本人の登場や!ジジ、昨日のこと今ちょうどはなs…」


「…嘘はやめましょうねー?♪」


「い、いやぁ…私はあんたをカッコよく…」


「“赤川ぶっ殺す”なんてあたしは言ってません!それに、その後のセリフはマコ先輩がサワさんに対して言ったことでしょ!!?脚色し過ぎ!」


「あははー………よ、よし!!ジジも来たし、練習始めるで!!!!」


「あ、こら!逃げるなー!!」




本当にこの高校はあたしに合っている気がした。こんな学校生活が、楽しくて堪らなかったんだ。






お読みいただきありがとうございます!

私が眼を少し患っておりまして、誤字脱字等注意しているのですが多くなってしまいがちです。読み辛かったら申し訳ありません。気軽にご指摘して頂けると大変助かります。

もし気に入っていただけたら、ブックマーク、評価、コメント等よろしくお願いします。

とは言え、読んでいただけるだけで幸せです。

これからも『蝙蝠の歌 -mintdrop-』をよろしくお願いします。

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