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蝙蝠の歌 -mintdrop-  作者: u
57/62

中央体育館にて




-10513#-




“あんた!久しぶりやん!どこの高校行ったん?!”

“選抜以来やね!あんたも推薦?”

“公立行ったって聞いたけどほんまなん?”


会場に入ると、県大会に出ていた高校の選手達があたしを見つけては色々と話しかけてきた。

少し鬱陶しく、でも少し照れ臭く思いながらあたしはそれを軽くいなして観客席の1番前に座った。



ちょうど赤川高校は試合前のアップ練習に入ったみたいだ。その時点から赤川高校の応援席からは大声で檄が飛んでいた。



コートにはU-18日本代表の選手がいて、その横にマコ先輩と元キャプテン、そしてモネ先輩の姿があった。パス出しやボール拾いではなく、ちゃんとチームの主要人物として席を置いていることは見て取れた。



彼女達はまた上手くなっているように思えた。というより、どことなく迫力がついていた、気がした。



「んー、名門校にあぐらかいとるな。」


「え……?」


そう言いながらあたしの横に座ったのは中学時代の監督だった。


「か、監督!!」


「ん?ワシはもうお前の監督ちゃうぞ?…やっぱり、お前も観に来たか。」


「え、監督って高校の大会も観に来てたんですか?!」


「たまにな。自分の教え子のそれからを観にくるのもワシの役目や。」


監督が時々早めに練習を切り上げたり、姿を見せなくなる理由がここで初めてわかった。監督は休んでいたわけではなかったんだ。


「そ、そうですか。」


「…お前はどう思う?あいつら。」


「え?上手くなってると、思います。」


「…ほんまか?」


「………正直、思っていたより伸びてない気もします。」


「…そうやな。ワシも同じ意見や。強豪校行っても身につくのは自信だけかもな。要は、その環境で自分がどうするかや。どんな場所でも伸びるやつは伸びるし、伸びへんやつは伸びへん。…ただニシオリだけは、どこ行っても伸びるんやろな。あいつだけはワシでも計り知れん。」


「…ですね。」


「お前はどうや?南山で伸びてるか?」


「……たぶん伸びてません。」


「…そうか。」


「…でも、周りを伸ばしてます。」


「…ほぉ?お前がか?」


「はい。監督から教えてもらったことを全部チームのみんなに伝えて、今強くなっています。あたしは上手くなってないかもしれないけど、周りのみんなは確実に上手くなっています。」


「…ははっ!お前らしいな。そういうのも悪くない。」


「…人に教えて、初めて監督の言ってたことの意味がわかった気がします。」


「…そうか。」


「………。」


「…お前なら赤川に目にもの見せてやれるぞ。」


「…え?」


「お前が今以上に頑張れば、赤川に歯向かえるかも知れへんな。」


「…そのつもりです。」


「ほぉ?ええやないか。」



そんな話をしていたら後ろから知っている声がした。


「いたいた!おーいジジ!すぐそっち行くから!!」


サワさんとルカさんがあたしを見つけて駆け寄ってきていた。



「お?!新しいチームメイトか。元気があってええな。…よし、ワシはそろそろ行く。ちゃんと赤川の弱点見つけとけよ。」


「は、はい!」


「…あと、天狗になるなよ?じじさんよ。」


「…!ふふっ♪はい!もちろんです!」



あたしは深く頭を下げて、監督はそのまま別の観客席に行ってしまった。


サワさん達が監督とすれ違ってあたしの横に駆け寄ってきた。少し監督のことを怪訝な顔で見ていた。



「ジジ、お待たせ!あんた今のおっさんにナンパされてたんか?何なん?あのジジイ。」


「…あはは!ジジイって!あの人は、中学時代の監督ですよ!!」


「え、ええ??!あれが?!あんな優しい顔した人やったっけ??!」


「…そうですね。あたしも初めて見ました、あんなに優しい顔。監督は、元々あんな顔だったみたいです。」


「…へー。」


たぶんサワさん達にはよくわからないだろう。あたしも言葉には上手くできないけど、監督の本当の顔を見た気がしたんだ。本当はすごく優しくて温かい、だからこそあたし達は3年間頑張れたんだ、と思った。





お読みいただきありがとうございます!

私が眼を少し患っておりまして、誤字脱字等注意しているのですが多くなってしまいがちです。読み辛かったら申し訳ありません。気軽にご指摘して頂けると大変助かります。

もし気に入っていただけたら、ブックマーク、評価、コメント等よろしくお願いします。

とは言え、読んでいただけるだけで幸せです。

これからも『蝙蝠の歌 -mintdrop-』をよろしくお願いします。

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