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蝙蝠の歌 -mintdrop-  作者: u
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地味な練習




-10488-




高1の5月。3年生達が引退した次の日は月曜日で、1、2年だけになった新たなバスケ部の放課後練が行われた。




“““““はぁはぁ…………”””””



「次の動きはコレで、意味は下半身と上半身の…」


「はぁはぁ………じ、ジジ。ちょっといいか……?」


「どうしました?キャプテン。」


「はぁはぁ……これって、フットワーク練習やよね……?」


「……?はい、そうですよ?」


「はぁはぁ……フットワーク練習って、1時間もやるもんなん……?」


「えーどうでしょう?あたしの中学ではよくやってましたね。あと30分くらいで終わりますよ?」


「…え?まだ30分も続けるん…?」


「はい。あ、でも今日は練習内容を教えながらなので、かなりゆっくりめですね。慣れたら50分くらいで終わりますよ!」


「はぁはぁ……まじ?これでゆっくりなん?……確かにあんた全然息切れてないな……。」



みんなを見てみると、ほぼ全ての部員が膝に手を置いて肩を揺らしていた。


「あの、少し休憩しますか?」


「はぁはぁ……やる!続ける!みんな!やれる子だけついていこう!しんどい子は座ってジジの話だけ聞いて!参加できる時に参加すればいいから!」



サワさんはかなり根性があるみたいだ。必死の形相であたしについてきた。




「………はい。これがフットワーク練習ですね。これをひとまず2日に1回はします。」


「はぁはぁ………わ、わかった…。す、少し休憩していい?」


「あ、はい!もちろん!みんなもゆっくりしてくださいね!」




あたしは次の練習で話すことを考えながら水分補給をしていた。


「…ジジ。」


「?あ、アン?大丈夫?しんどかったよね?休み休みでいいから、練習内容と意味覚えてな?やる意味わからずに練習しても成長遅くなるだけやから……」


「………。」



嫌な予感がした。この空気感には覚えがある。中学時代、練習について来れなかった部員が“こんな練習毎日できへん”と言って辞めていった。アンも、たぶんそう言い出しそうな気がしていた。


「……アン?」


「………あ、あんたすごいな!♪こんなこと毎日してたんや!?そりゃ上手くなるよね♪経験者組があんたのこと見て驚いてたの今わかったわ!……うちも頑張ったらあんたみたいになれるかな?」


「え…?あ、そ、それはなれるよ!アンはあたしよりも背高いしジャプ力もあるんやから、もっと凄い選手になれるかも知れへんよ?!」


「えー?そうかな…しんどいけど、周り見ながら練習してるあんたが1番しんどいやろうし、うちも頑張ってついていけるようになるな?」


「う、うん!…アンー♪良かったー!大好きやー!」


あたしはアンに抱きついた。


「な、何してるんよ!?汗臭いからやめてやー!……もしかしてうちが辞めるとか言うと思った?」


「思ったよー!ヒヤヒヤしたわ!」


「あはは♪辞めへんよ?みんなもきっと辞めへん。あんた、コートの上にいる時あんなにカッコいいのに、コートの外やとこんな弱々なんやねー♪ふふっ!」


「う、うるさいなー!」


「ふふ…♪そろそろ次の練習ちゃう?コーチ♪」


「その呼び方やめてー!」



そんなことを言いながら次の練習に向かった。





「えっと、次はタッグパスです。3分おきにタッグを変えてパス練習していきます!今日の練習はこれが最後ですね!」


「え?ちょ、ちょっと待ってや!まだあと1時間あるで?シュート練習もせずに、パスだけを1時間?」


「はい。みんなのパスを見ながらあたしはアドバイスさせてもらいます。みんなはパスを繰り返しながら、相手の気持ちを理解してください。」


「い、言ってる意味はわかるんやけど、シュート練習も必要やんか?!」


「……キャプテン、今新しくなった部活で1番大切なものは、みんながみんなのことを理解し合うことだとあたしは思います。リングと向き合うよりも、まずはチームメイトと向き合う方がいいんです。」


「へー…なるほど…。」


まだ少し不安がな顔をキャプテンはしていた。


「…キャプテンは、球技で1番大事なことって何だと思いますか?」


「それは、やっぱり勝ちに対する執念やね!根性!」


「あはは♪確かにそれも大事ですね!でも、あたしは“ミスを少なくすること”が1番大事だと思っています。」


「…ミスか。」


「はい。弱い学校ほど、基礎練習をあまりしなくてミスが連発する。シュートミスもですけど、単純なパスミスをして相手ボールになることは、自分達の得点のチャンスを捨てて相手に得点のチャンスを与える行為です。強いチームになればなるほど地味な練習は多くなりますし、プレイも華やかじゃなくなるのは、こういうことですね。そんな強いところにあたし達が勝つには、まずケアレスミスを無くすことが最低条件です。」


あたしは中学時代に監督から言われた言葉をそのままみんなに伝えた。


「…なるほど。それができ初めてシュート練習とかができるってことやね!わかった!まぁパス練習ならさっきほどしんどくもないやろ!みんな、やるで!」


(おー!!)



1時間が経った。



「はい!今日の練習は終了です!お疲れ様でした!各自しっかりストレッチしておいてくださいね!」




“““““はぁはぁ…………”””””



「はぁはぁ…………じ、ジジ…。」


「え?どうしました、キャプテン?」


「はぁはぁ………パス練って、こんなにしんどかったん…?」


「そうですねー。練習の中だとまだ楽な方ですけど、前までのパス練に比べたら全然違いますよね。」


「はぁはぁ……でも、これは面白いわ…。」


「え、ほんとですか?!」


「……うん。なんか上手くなれそうな気がする…。あんた教えるのやっぱり上手いわ。それに…あんたのパスが綺麗な理由もわかった。」


「き、綺麗?!」


「……………去年の中学の大会観に行った時、そんなに身長高くないのに背高い選手スルスル抜いて、フリーの選手に綺麗なパス出す選手見つけてん…。パスを待ってる選手にボールが吸い込まれていくみたいやった。…そのPG(ポイントガード)はほとんど自分ではシュート打たへんねん。相手選手もそれわかってるはずやのに、その子に引き寄せられてて…。」


「……シュート下手なんでしょうね。そのPG。」


「…はは…。その子からパスを受け取ってシュート決めたら、どんなに気持ちいいんやろうって、憧れたけど、こんな公立高校に来るわけないと思ってた。」


「…来ちゃいましたか?その子。」


「…せやね。」


「……期待してた感じと比べて、どうですか?その子は。」


「……コートの外やとヘタレなところもあるし、レギュラーの練習も参加せずに初心者と一緒に基礎練やってるし、あんまりガツガツしてないんやけど、、思ってた以上にすごい選手やわ。」


「………なら良かったです。」


「あ、あと…」


「え?」


「かなり“ヘンコ”やわ。…くくっ♪」


「え、えぇ!??なんでサワさんまでそんなこと言うんですか?!」


「あはは!よく言われるやろ!?相当変わりもんやで、あんた!」


「…もう!」


「はは…でも、ありがとう。1日目でわかった。あんたについていけば強くなれる気がする。」


「……今さら褒めても遅いですよ!」


「あはは♪ごめんって!」




こうして新体制になって初日の練習は無事に終了した。あたしは、この学校に来たことを正解だったと思い始めた。





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