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蝙蝠の歌 -mintdrop-  作者: u
47/62

吐露




-10399.1-




ソラとクミは少し真剣な顔をして、あたしを真ん中に置いて並んで歩いた。


最初に口を開いたのはソラだった。



「あんた、赤川受けるのやめたん?」


「あー、うん…。ごめん、話せてなかったね。」


「なんで行かんのよー?もったいない!」

「そうやで!先輩達もあんた来るの待ってたんやろ?」


クミも少し心配そうにソラの言葉に合わせて話してきた。


「うん……お兄ちゃんがね、大学受験なんやんか…。」


「あー……そっか。そうやったんやね。」


「で、でもさ!ほら、特待制度みたいなやつもあるやん?」


「クミ…そういうのはマコ先輩くらい上手くないと来ないよ。あの元キャプテンだって、スポーツ推薦でやっとなんやで?」


「……まぁ、そうやけど…。」


「…別にさ!赤川じゃないとバスケできないわけじゃないやん?むしろ打倒赤川で先輩達ボコボコにするのもありやんね!」


「あんたなぁ…南山高校でそんなことできたら、奇跡やで?」


「奇跡起こすくらいの方が楽しいやんか♪」


「…まぁーあんたがそういう感じなら安心やわ!なぁ、クミ?」


「そうやね!安心安心♪」



2人は少しだけ笑顔になった。



「そういえば、2人の進路はどうなってるん?」


先にクミが答えた。


「うちは、深田高校受けるよ。」


「ふ、深田!?ここら辺やったらダントツトップのところやん!すご!」


「あはは…まだ模試の結果もB判定やけどね。内申点も合わせたらいけそう。」


「へー…確かにクミは成績良かったもんねー…。ソラは?」


「んー?うちは上山高校ー。」


「あー、彼氏さんいるところ?」


「そうー。…今から受験する高校変えたいんやけどねー。」


「ん?」


「あはは!ソラな、彼氏とまたケンカして別れたんやって!」


「またー?!何回目よ?!」


「うるさいなー。もう、あいつのおる高校とか行きたくないわー!」


「…クミー、あたしは来週になったら意見変わってるにジュース1本。」


「えー?!ずる!ならうちは、その2日後にまたケンカしてるにジュース1本♪」


「う、うちらを賭けの対象にするな!」




久しぶりに3人で帰るのが楽しかった。もうすぐ卒業だ。こんな時間もなくなるんだ。少しだけ寂しくなった。




「…で!ここからが本題!」


ソラがそう言って立ち止まった。


「え?本題って……赤川のこと聞きたかっただけじゃなかったん?」


「ちゃうよー。ソラとうちはそんなことよりも大事なことを聞きたいの!」


「え?クミも?聞きたいことってなに?」




「……昨日の夜、マコさんに会ってたやんな……?」



ソラがあたしの顔をじっと見つめて訊いた。


「あ……え?あー、ははは……。」


「…ちがう?」


「……それはあたしです。」


「やっぱり。……あんな、ほんまにたまたまやねんで?たまたま買い物の帰り道にそこ選んだら、雪降ってる中で……ひとつの傘の中にいるカップルみたいなん見つけて…。夜やし雪降ってるし、傘の中にいるから誰かも確認できへんやん?割と背高い人やったから、男の人が傘持ってると思って少し遠くから見てたんよ。横切るのも気まずいし…。で、制服の下の方よく見たらスカートやし、鞄に“AKAGAWA”って書いてるから間違いなくマコさんってわかって……その、向こう側におる人のこと気になって、見てたら…あんたやったから……。」


ソラはすごく申し訳なさそうに話をしていた。


「……その、別にイジるつもりもないし、バカにするつもりもないんやけど……マコさんと、もし、その…付き合ってるなら、教えてほしいなって……。」


あたしはもう言い逃れする気はなかった。この2人になら話そうと思った。


「……見られたかー!外であんなことしてたら、そりゃそうやんね!あはは。」


「……ごめんな?覗き見みたいなことして…。」


「ソラは謝らんといてよ!あたしが逆の立場なら、同じことしてると思うし。」


「で?!で!?♪いつから??いつから2人は付き合ってたん?!!♪」


ソラの申し訳なさとは逆に、クミは目を輝かせながらあたしに質問した。


「あー…あはは…。実は、付き合ってないんよねー……。」



「「はぁ!??」」



2人が綺麗に声を揃えた。



「え?!なに?!あんた昨日、マコさんと……き、キスみたいなことしてなかった!?」


「いやぁー、それは、してたね。」


「なになに!??♪どーいうことよ!?ソラから聞いた話やと!ベロチューしてたんやろ?!♪」


「べ、ベロ?!……まぁそういうキスは、先輩とは初めてした……うん。」


「えー??!!♪待って待って!!それでなんで付き合ってないん?!あ、もしかしてアレ!?赤川高校バスケ部って恋愛禁止やったり?禁じられた恋?!♪キャァー♪…ってことは、あんたが赤川諦めたのって、マコさんと部活内恋愛になるのを避けるため、みたいな?!もうー!!何それー?!やばーい!♪」


「お、落ち着いてクミ…。赤川高校に恋愛禁止とか、あたしは知らんよ…。」


「じゃぁさ!しゃぁさ!なんでなん?!♪そんな熱いチューを雪が降る道でして、なんで付き合わへんのよー♪あー、やばーい♪心臓ドキドキするー!」


「……と、とりあえず、落ち着こ?クミ。全部話すから。」



あたしはマコ先輩に初めて抱きしめられた日のこと、初めてキスをした時のこと、そして、それをマイに見られたことで始まった噂話のことを全て2人に話した。



「…へぇー、、なるほど。だから、マイの噂話の時、不思議そうな顔してたんやねー。なんか色々と繋がったわ。」


「…ソラ………今はそんな感想を言うところじゃないよ……。」


クミが下を向いて震えていた。


「…クミ?」


「……も、もぉーーー!!!♪なんなんその話!!?やっばーい!!やばすぎん?!先輩との禁断の愛?!それに後輩との三角関係!??いやーん!もう!ドラマ?!これはドラマの話!???」


「………クミ……。」


「それにさ!それにさ!話聞いてると、うちとかソラが付き合った頃には色々進展してたってことやんねー?!それやのに“手繋いだ?”みたいなお子ちゃまな質問して、あんたは裏でもう大人になってたんやんかー♪!もー!あー心臓がやばいー!」


「………。」

「………。」



クミはどうやらこういう話が大好物らしい。彼女のこんなテンションの上がったところを見たのは初めてだった。


「…と、とりあえず、クミはほっといて……。あんた、それならマコさんとこれからも付き合うとかはないん?」


「…どうなんやろ。なんか、そういう話にはならないんよね。先輩には彼氏いるかも知れへんし。」


「…ふぅん、そっかー。まぁ、あんたが良いんなら別にうちはなんでも良いんやけどね。いろんな形があって良いと思うからさ。」


「…ソラは、やっぱり大人やね…。」


「んー、大人かは知らんけど、他の人なら別として、あんたならこういうことなってもあんまり不思議に思わないんよねー。納得できるっていうか。」


「そ、そんなにあたしって変かな?」


「ん?かなり“ヘンコ”やで?自分じゃわからんよねー。」


「……そっか。」


「はいはいはーい!!!♪うちからも聞きたいことありまーす♪いいですか?!いいですか!?」


クミがわざわざ手を上げてあたしに近寄ってきた。


「……は、はい、クミさん。」


「あのぉ、気になってたんですけどぉ…さっき、ベロチューの話した時、“先輩とは初めて”って言いましたよね?!♪ね!?“とは”ってことは、他の誰かともベロチューしたんですかぁ?!!ズバリ!答えて!!」


これだけテンションを上げているのに、しっかり話は聞いているあたりが成績優秀の理由だと思った。


「……した。」


「えー?!!ソラ!聞いた?!新事実!!!彼氏?!それは彼氏?!」


「…彼氏、じゃない。」


「………っ!!???キャァーーー!!♪なになに?!あんたどれだけ(たま)持ってんのよ!!あぁ…うちもう耐えられへんかも……。」


「落ち着けークミー。……それよりあんた、今の話ほんまなん?!!ほんまなら、ごめんやけどちょっと引くで?」


「引いていいよ!あたしだって自分でも引いてる!」




あたしはルイが初恋相手だったことと、パラダでの一件を話した。モダの事件のことやランちゃんのことは、2人が話を飲み込みやすいように軽く話して、詳しいことは話さなかった。




「…そ、ソラ…うち……もう無理……。」


クミは立っていられないのか、電柱にもたれかかっていた。


「……まじか…。クミの気持ちもわかるわ……うちも耐えられへんかも、、。初体験まで済ませてたんか、あんた…。」


「…なんであんなことしたんか、自分でもわからへんのよぉ…。ルイのことはほんまに好きじゃなくなってたのに。」


「しかもコバヤカワって…あんな女子人気トップクラスの男子と…。やることやってんなー……。付き合うとかは…?」


「ソラー、コバヤカワ君は転校したんよー。たぶん、この子としたすぐ後くらいに。そうやろー?」


「……うん。」


「なるほどなー、だから付き合うとかそういう話にならんかったんかー。」


「…ううん。そんな話も出たよ。“こういうことしたら付き合うものなのかな”って。でも、ルイに“お前は普通じゃないから普通のことしなくていい”って言われた。」


「へぇー!なんか、あんまり意味わからんけど、2人にしかわからない世界があるんやねー。」


「……や、やめて…これ以上は…うちのHPがもたない…。」




きっと、あの時ルイがあたしと付き合うことを拒んだのは、すぐ目の前に迫っている“何か”に気付いていたからだ、と思う。

ルイは昔から意地悪だけど、いつも少し優しかったから、あたしにその優しさを向けてくれたんだろう。


ただ、この想いだけは2人には内緒にした。あたしだけの宝物にしたんだ。





その後、ほとんど全ての事実を暴露したあたしは、分岐点までふらふらのクミの腕を肩に回して歩いた。分岐点に着くと“大丈夫…”と言って彼女は千鳥足で帰って行った。




ソラとの分岐点まで2人で歩いた。



「……クミ、大丈夫かな?」


「あれはすごかったなーあはは。明日休んだりしてな?」


「あはは!そんなわけないやろー!」




「……なぁ、あんたさ….。」


「んー?なに?」


「別にあんたの人生やから、うちはあんたの好きにしたらいいと思ってるんやけど、…んーなんやろ。うちはあんたよりもまだまだ経験もないんやけどさ、自分のこと大事にしいや?」


「はい?」


「んー……あんたって、昔から犠牲心みたいなの強いやん?それに感情に流されやすいというか…。」


「…そうなんかな?」


「んー、マコさんのことに関しては、憧れの先輩やったし納得できる部分もあるんやけど、コバヤカワに関しては、話聞いてる限りその場の感情とか空気に流された感じがしたんよね。別にそれがあかんとは思わないけど、まぁ、普通じゃないやんな?」


「……まぁ。」


「普通というか、周りと違うことしてたら、周りの目が気になったり、心がすり減ってくと思うんよね。だから、自分のこと大事にしてあげてほしいなって。知らんけど。」


「…知らんのかい!あはは!でもありがと!気にしとくよ!」




この時ソラがかけてくれた言葉の意味を、あたしは数%しか理解していなかった、と思う。




翌日、本当にクミは学校を欠席して、ソラとあたしは少し笑った。





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