雪は傘に積もる
高校の冬服に、ふわふわのマフラーと手袋をしたマコ先輩は、すごく大人に見えた。
あたし達は先輩の傘の中で向かい合っていた。
「…お久しぶりです。」
「……そうやね。久しぶり。」
「この間….元キャプテンから聞きましたよ。すごいですね。」
「……ん?なに?ムーにわたしのコメントが載ったこと?」
「違いますよ!それもすごいけど!…赤川に入学して即レギュラーで、この間近畿選抜にも選ばれたんでしょ?」
「……まぁ。」
「すごいことじゃないですか?!」
「……そんなことより、ムーに載ったわたしのコメントの内容は聞かないの?」
「そ、そんなことって…相変わらずですね…はは…。」
ムーに掲載された彼女のコメントは、コメントというよりかはQ&Aの質問のようなもので、テケテケの名前の由来に関する内容だった。
「…へぇー、雑誌に名前が載るって良いですねー。」
「……ねぇ。」
「はい?なんですか?」
「…赤川やめたんやって?どこ行くん?」
「…南山高校に行くつもりです。」
「………そっか。ならバスケ部あるし、試合できるね。」
「いや、シード持ってる赤川と戦おうと思ったら、かなり上まで行かないといけませんよ?!」
「……そこまで来る自信あるんやろ?」
「…まぁ。ふふ♪」
「…ぬへへ。」
「下から這い上がって下剋上するのも悪くないかなって。」
「……それは、t…」
「はい、強がりですよ。」
「………。」
「強がってます。本音を言ったら、お兄ちゃんが大学受験じゃなかったらとか、家がもっと裕福だったらとか、あたしが将来有望視されるくらい上手かったらとか、いっぱいあります。もしそうあれば、あたしは赤川に行けたのにって…。でも、お兄ちゃんがいたから、家族が今の感じやから、あたしは今のあたしでいる気がしました。たった今、先輩に会って。」
「……へぇ。」
「先輩は…あたしが1人でいたい時、いつもそばに居てくれますね…。」
「……邪魔ってこと?」
「……普通ならそう思うはずやのに、なんであたしは救われるんでしょう。」
「……寒い?」
「………寒いです。あっためてほしいです。」
あたし達はゆっくり身体を寄せ合って、互いに腕を背中に回した。
先輩と初めて抱きしめ合った時は胸の中に顔があったのに、今は鎖骨あたりまで視線が上がった。身長が伸びたことを、こんな形で知った。
「先輩……。」
「……なに?」
「…あたし、先輩としたかったことあったんです…。」
「……へぇ、なに?」
「……言いたくないです……。」
「………奇遇やね。わたしも言いにくいやりたいことあった。」
「…そうなんですね。」
聞き返さなくてもなんとなく伝わった。あたしが先輩の鎖骨から顔を離すと、先輩は笑いながらあたしに口付けをした。
この前ルイとしたみたいに、何度も唇を重ねて、舌を絡ませた。
先輩の吐息を感じながら、“なんであたしは誰かと付き合ったこともないのに、ルイやマコ先輩とキスしてるんだろう”と考えていた。考えれば考えるほど、なぜか興奮していた。
あたしの心はこの頃、、、もっと詳しく言えば、小6の頃から少しずつ狂い始めていたのかもしれない。その狂った心が、この頃脱線して独りでに進み出したような気がした。
お読みいただきありがとうございます!
私が眼を少し患っておりまして、誤字脱字等注意しているのですが多くなってしまいがちです。読み辛かったら申し訳ありません。気軽にご指摘して頂けると大変助かります。
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