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蝙蝠の歌 -mintdrop-  作者: u
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どっちがイジメ?




-10223-




噂が流れた翌日、放課後に靴箱へ行くと手紙が二通入っていた。ひとつは、知らない1年からのラブレターだった。“返事はいらない”という前提であたしへの想いが綴られていた。もうひとつは同じ学年の話したことのある女子だった。“明日の昼休みに話があるので教室にいて欲しい”とのことだった。


その日、マイは学校を欠席していた。



次の日、朝の靴箱にまた手紙が一通入っていた。こちらもあたしへの想いが綴られていたけれど、名前が書かれていなかった。“せんぱい”という文字が書かれていたので、後輩だということだけは分かった。

昼休み、教室にいると昨日の手紙の差出人に声をかけられた。彼女は人気のない廊下の隅にあたしを連れて行き、告白した。あたしは頭を下げて丁重にお断りをした。


その日もマイは学校へは登校したらしいが、部活を休んだ。

放課後練が終わると、あたしを待っていた知らない1年生から手紙を渡された。それを手に取ると、その子は逃げるように去っていった。手紙の内容は、自身の自己紹介文と、あたしと仲良くなりたいというものだった。

更衣室で手紙を読んでいると、クミが嬉しそうに笑いながら揶揄ってきた。彼女はよっぽどこういった話が好きなようだ。


翌日から学校は二連休で、女子バスケ部はいつも通り昼下がりまで練習を行った。

監督からは“お前はポイントガードだけを磨いて県内トップのガードになれ”と言われた。大袈裟だと思ったけど、内心嬉しかった。

マイは休日の練習も来なかった。





-10224-




月曜日、蝉が大きな声で合唱して、夏のの暑さが本格的になることを知らせた。

今週が終わると夏休みが始まる。


学校へ登校して靴箱を見ると、また先週と同じような内容の手紙が二通ほど入っていた。どちらも差出人は顔も知らない1年生だった。


教室に入ると、クラスメイトの男子が急に話しかけてきた。



「なー!お前さー。」


「おはよう。何?」


「女好きなん?」


ニヤニヤと笑っていた。後ろについてきていた男子達も同じように笑っていた。

普段彼らとはよく漫画の話で盛り上がることもあったけれど、この時の彼らからは少しだけ敵意というか、見せ物小屋の観客のような視線を感じた。


「…好きってさー、別に恋愛じゃなくてもあるくない?」


「そういうん聞いてないねんって!恋愛として好きなんやろ?女のこと。」


「ちゃうって!変な噂聞いたんやろうけど、やめてや。朝から揃いも揃ってニヤニヤして、キモいで?」


「だってお前、女同士でヤったんやろ?」


「はぁ?!!何それ?!!!」


「教えてや?女同士ってどんなことするん?お前くらいにしかこんなん聞けへんやんか?」


「…それ誰から聞いたん?出鱈目な嘘やって、それ。」


「誰からって、そこらへんで普通に聞いたで?誰とか忘れたわ。それより教えてや?なー?それか、もしかして…お前実は“ついてる”んか?キャハハ!!お前男みたいやもんなー!」


後ろにいる男子達も漏れなく笑っていた。この光景だけ見れば完全にイジメなのだが、あたしは負ける気はなかった。


「そうそう、実は“ついてる”からあんたらとも仲ええねんよー♪…って言うと思うか!!?アホども!あんまり人のことおちょくったら本気で怒るで!!」


「っ!!わかったわかった!ごめんって!!怖いってお前ー!」


「あたしなー?その噂流れてから相当イライラしてるんよ。アンタ達でストレス発散してもいいかなー?」


「わかった!って!!!オレらが悪かったよ!」




「…おーい。その辺にしときやー。どうせ男子達のひがみなんやから!」


ソラがあたしの肩に手を置いた。


「おはよー♪」


「おはよう。ソラー聞いてや、こいつらがさー…。」


「見てたから分かるって…。あんたな?今の状況だけ見たら、どっちがいじめてるんか分からんで?あはは♪」


「そ、ソラ!お前、別にオレらはいじめとかしてへんかったからな?!それに、なんでオレらがこいつにひがまなあかんねん!」


先頭にいた男子がソラに対抗した。ソラはあたしに向けた目とは全く違う目を彼の方に向けた。


「はぁー?アホなん?こんな男子が何人も寄ってたかって女子1人にわけ分からん話して、キモい顔してセクハラみたいなことゆーて、どこがいじめちゃうねん!この子がたまたま強くて、アンタらなんかに負けへんから良かったけどなー、言い返されへん子やったら泣いてるで?充分イジメじゃ!」


「いや、その…」


「この子はな?アンタらが面白がってる噂が流れてから、どれだけ告られてると思う?アンタら全員告られたこともないやろ?」


「……。」


「はぁー、モテない男のひがみほどみっともないものはないわー。行こ?」


そう言い放って、しょんぼりしてしまった男子達を他所目に彼女はあたしの肘を掴んで自分の机まで連れて行った。

ソラはやっぱりカッコよかった。



「ソラ、ありがとう。」


「ん?いいよー。あのままほっといたら、あんたが先に手出しそうやったからさー。そんなんして怪我したら監督に怒られるで?」


「確かに……。」


「それよりも、なんかうちが聞いてた噂と違う感じになってるわ。嘘いっぱい混ざってるっぽいで?」


「そうやんなー。最悪。」


「……嘘なんやんな?」


「え?!ソラまで疑うん?!」


「あはは、いや、一応確認をと思ってねー…。」


「そんなことするわけないやん!ありえへん!それに…。」


「それに?」


「やり方も知らん…。」


「…ぷっ!ははは!!間違いないわ!うちが知らんねんから、あんたが知るわけないもんな!」



恥ずかしそうに下を向くあたしと大笑いするソラの、なんとも奇妙な光景だった、と思う。

嘘をついたわけでもなかったけれど、この時、マコ先輩とのキスの件を彼女に伝えることができなくなったような気がした。



「まぁーあんたも大変やろうけどさ、もうすぐ夏休み入るし、夏休み明けたら噂なんて無くなってるやろうから今週だけ我慢しよ?うちらも守るからさ!」


「…うん。いつもありがとう。」



ソラがそばにいてくれるだけで心細さは無くなった。ソラだけじゃなくて、クミや他のみんなもいると思うと、さっきみたいに誰かに笑われても平気だと確信した。




その日、マイが部活に顔を出した。

少し大人しいというか、いつもと変わらない感じを頑張って演じているような気がした。いつも周りにいる仲間も、少ないような気がした。ぶりっ子はその日少なく感じた。



ソラが練習中に声をかけてきた。


「どうするん?あんた。」


「え?何が?」


「マイのことやって!」


「あー、うん。」


「何それ?別に言いにくいなら、うちらからガツンと言ってもいいで?」


「…ありがとう。でも、あの子はきっと本当のことしか言ってないから。」


「でもさー…」


「あたしからちゃんと話すよ。」


「…まぁ、あんたがそれでええんなら。」


ソラはそう言って離れていった。




練習後、更衣室で初めてあたしの方からマイに声をかけた。




「マイ、今日一緒に帰ろっか?」





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