やります
-10193-
我が女子バスケ部は決勝リーグまで駒を進めた。
各トーナメントから勝ち上がった4校が総当たりに試合をして1位になった学校のみが全国大会の切符を手にする。
あたし達女子バスケ部は、県内3位という結果を残して大会を後にした。
つまり、その日が先輩達の引退試合の日となった。
試合後、あたしは誰よりも泣いてしまって、それを見た先輩達に笑われた。笑いながら、先輩達も泣いていた。
-10211-
先輩達の引退試合翌日、朝練がなくなっていつもより少し遅めに学校へ向かった。
昼休み練もなくなり、ソラや他のクラスメイトと話して過ごした。
放課後、ミーティングに使用する教室に部員が集まった。先輩達もいた。
先輩達の本当の意味での引退の日は今日だ。
監督が来て話を進めた。普段あまりあたし達を褒めない監督が、“よく頑張った!お前達は胸を張って良い!”と声を大にして言っていた。監督は、いつもより眉間に皺が寄っていた。
先輩達はその言葉に涙を流しながら、その中からキャプテンが代表して挨拶をすることになった。
彼女は真面目そうに教壇に立ち、少しだけ笑った。
「あー…いやー、、こういう時なんて言えばいいんやろ、、はは……。………、まぁ、めちゃめちゃ楽しい時間を過ごせました!その倍はしんどかったけど!でも、きっとこれは私の人生の宝物になると思っています。…私はバスケが好き。だから、高校行っても続けます!どうせ私は馬鹿やからスポーツ推薦とかでしか高校行けやんし。…ってことで、受験勉強なんかせんから、その分部活にも顔出すからね!怠けてたらすぐケツ叩くからな!あはは!」
強くて優しい人だと思った。
彼女は言葉を続けた。
「あとはー、まぁ、行けるかわからんけど、副キャプテンのモネと、マコも推薦で同じ高校狙ってる。赤川高校。もし、誰かが行けたら、っていうか3人が行けたら試合見に来てや!」
赤川高校は県内屈指のバスケの強豪校で、尚且つ高校の名前だけ見れば進学校クラスの偏差値の高さがあった。
「「………あの、。」」
「ん?マコ?あれ?モネも、どないしたん?」
キャプテンが話題に挙げていた2人が同時に手を上げた。
2人はよそよそしく発言権を譲りながら、結局副キャプテンが話し始めた。
「たぶん、キャプテンとは違って、マコとはちゃんと学力試験受けて赤川行こうって話していて、だからスポーツ推薦はないかな。」
「…!!!?そうなん!?私だけ?!まー、アンタら2人は頭良いもんなー…。、」
教室中に笑い声が響いた。
「ま、まぁ!とりあえず私達は引退や!それで、次のキャプテンを誰にしようって話なんやけど……監督は、何かありますか?」
「ん、ワシか?…好きにせい。」
「はい。…よしゃ!なら、昨日3年で次のキャプテン誰にするか話してたんよ!それで名前上がったのg…」
(ガタガタっ…!)
「キャプテン……!」
キャプテンの言葉を遮るように立ち上がったのは、1年の頃臆病だったクミだ。
「なんやクミ?!まだ話してるところやけど…」
「すいません!…でも、キャプテン達が決めるよりも、うちらが決めたい、、です!」
「はぁ?」
(ガタっ…)
「あのー…」
次に立ち上がったのソラだった。ソラが話を続けた。
「ごめんなさい!先輩達が誰を指名しても、1、2年の中ではもう決まってるんですよ!」
「…あ、そうなん?誰?」
「……こいつ。」
ソラが人差し指を向ける先は、まさかのあたしだった。
あたしは驚いてソラに向かって声を出した。
「いや、あたしは違うやん!ソラがなりーや!みんなから信頼されてるし!」
「ごめんな?うちら、もう決めたんやんか。あんたをキャプテンにしたいって。」
「無理無理!なんであたしなんよ!?」
キャプテンが会話を割って入った。
「あはは!そうか!それならちょうど良いわ!私達も同じ意見やから!」
「えー!??キャプテン達まで…。」
あたしが助けを求めて横目でマコ先輩の方を見ると、着席した机に刻まれた傷をまじまじと見つめていた。彼女にとってはどうでもいいことのようだ。
「…ぇー?だってあたしは、、」
「おい、早くせい。」
監督が少し暗い声色で発言した。
「お前は、全員から“キャプテンに相応しい”って思われてるんやろ。それを受けられへんなら、ちゃんと理由を言え。」
「……だから、あたしは、、キャプテンみたいに部員全員をまとめれる自信が…」
「そしたらキャプテンなったらあかんのか?」
「…。」
「お前がしんどい思いしてきたことは、特に2年以上の者は全員知ってる。それを知っててお前のことを推薦してるんやろが。強いだけがリーダー違う。優しいだけでもあかん。お前は強さも弱さも知ってるやろ。だからみんなお前を推薦してるんやろ。わからんのか?」
「…はい、分かります。」
「じゃぁ早くみんなに答えろ。」
「……キャプテン、やります。」
全員が笑って拍手した。
その教室の中で笑っていなかったのは、“やれやれ”といった感じの監督と半ば強制的に次期キャプテンに任命されたあたしだけだった。
先輩達の居なくなる寂しさと、次期キャプテンに全員があたしを指名した嬉しさと、これからの不安であたしの心はぐちゃぐちゃだった。




