無言と黙秘
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「“あの3人”って、誰のことですか?」
もう判っていた。
「……あんたなら分かるでしょ?」
「……はい。」
「………何したらああいう感じになるの?」
「“ああいう感じ”って…」
「分かるでしょ?」
「………はい。」
「……教えられない?」
「…。」
「………そっか。オゥケイ。」
急に心の中が苦しくなった。あたしは自分が“補欠先輩達”に命令した約束が、酷いことだったと理解していた。理解していたことを、今知った。
マコ先輩は言葉を続けた。
「………あの3人は、どうしても試合に出たくて、あんたにお願いしたんちゃう?」
「…。」
「……で、あんたはそれと引き換えに相手に“自分と仲直り”することをお願いしたんやと思ってた。」
「…。」
「………でも違うよね?」
「…。」
「……きっと、もう少し入り組んだ、何かがあると思ってる。」
「…。」
「………言えるようになったら教えてよ。…わたしは別に怒る気もない。ただ単純に、興味があるだけ。……あの3人をあんな風に手懐けてる後輩がいるって、面白いから。」
「…。」
「………あんまり気にし過ぎないで。……大丈夫、あんたは強いから。」
「…。」
「……じゃぁね。お疲れ。」
「……失礼します。」
彼女はそのまま一度も振り返らずに帰っていった。
自分の知らない心の中を、隠して見ないようにしていたものを掘り起こして“ほら、これがお前だ”と見せつけられたような、不快で吐きそうな気分になった。
ついさっきまでは、先輩の役に立てた気がして心が晴れやかだったのに、あたしのそんな甘い気分を軽く踏み躙られたような気がした。
あたしは、先輩と話すのが少しだけ怖くなった。
お読みいただきありがとうございます。
今回は少し短めになりました。短めにしないといけないと思っただけです。
話数がアルファベットで言うと「Z」にあたるところまで進みました。本当はもう少し話を速く進めるつもりだったのですが、どうにも彼女を詳しく伝えたく感じました。
この物語が気に入ってくれた方は、ブックマーク、評価に星をつけていただけると幸いです。
とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。
これからも『蝙蝠の歌 -mintdrop-』をよろしくお願い致します。




