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蝙蝠の歌 -mintdrop-  作者: u
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あたしは生まれた

開いて頂き有難うございます!

こちらの作品は、『蝙蝠の歌』、『蝙蝠のうた(R-18)』をお読み頂くとより楽しめる作品になっております。こちらだけでも楽しんで頂けるとは思いますが、もし良ければそちらの作品も是非ご覧下さい。






-9937-




気付いたらあたしはここに立っていた。



親の顔は…、大好きな笑った顔がすぐに思い浮かべられる。

お兄ちゃんと弟も、いる。

兄は基本表情が無い。オタク気質で色んな漫画を持っている。あたしが漫画に詳しい理由は兄の影響だ。少年漫画に詳しいと男子との会話もスムーズに出来た。そのおかげで、昔から男子ともよく話をしていた、と思う。


弟は自慢の弟!とにかく可愛い!ずっと溺愛しているのに、弟は歳を重ねるにつれて冷たくなっていった。思春期というやつのせいだ。

学生時代、弟から“彼女ができないから、服の雑誌とか教えて欲しい”と言われたことがあった。

適当な雑誌を貸した後、


「もし本当に必要なら姉ちゃんの身体も貸すからね?」


と言ったら本気で気持ち悪がられて怒られた。1週間は口を聞いてくれなかった。当然冗談も少しは含んでいたけれど、本気で彼が求めたら、あたしは躊躇なく受け入れてしまっていたと思う、きっと。

これは“近親モノが好き”とかそういう話じゃない。恋愛感情はないし、ただただ可愛かっただけだ。でもなんとなく想像した時、変な気持ちが1%もなかった、なんて堂々とは言えなかったかも知れない。



初恋は幼稚園年長だった。結構早い。近所の同級生だった。そんなにカッコ良くはなかったし、ぶん少し太ってたような気がする。

別にその頃沢山話した覚えもなかったけど、お母さん同士の仲が良かったから、2人が話してる時に少しだけ彼と話せるのが嬉しかった。





小5〜小6。よく男子からちょっかいをかけられた。半分暴力に近い時もあったけど、親に言うのは反則な気がして言わなかった。後々、そのメンバーの半数以上があたしに告白した。なんとなく、男子の幼稚さを理解した。ああいうのが男子の愛情表現なのか。くだらないと思った。


あたしの初恋は続いていた。彼は成長期に横から縦に伸び、いつの間にかあたしの身長を軽く追い越して、痩せた。

成績優秀、スポーツもクラスではトップクラス、顔は…悪くはなかったと思う。意外でもなく、割と彼のことを好きな子は周りにもいた。でも、ライバルって感じよりかは、“同志”って感じだった。

何よりマイペースな彼が好きだった。愛情表現下手くそ男子グループの中にも属していたのに、彼から何か暴力を振るわれたことはないし、告白もされなかった。


小6の夏。仲の良い友人達と肝試しに行った。たまたま彼とペアになった。2人で手を繋いで、不法侵入した夜の旧校舎を歩いた。

彼と手を繋いだのは後にも先にもこの一回だけ。幸せな時間だった。手汗やばかった気がする。緊張と、本音をいうと少しだけ興奮していた。

あたしの初恋は成就することも失敗することもなく、その後段々と風化していった。


小6の夏休みに、友達のサワコがある漫画を家に持ってきた。

何故かコソコソ悪いことしてるみたいに彼女が出したのは、麦わら帽子と海賊の少年漫画だった。サワコはすごく恥ずかしそうにあたしにそれを見せるけど、そんな恥ずかしがるようなものじゃない。“知ってるよーこれ”って言いながら漫画をペラペラ捲ったら、なんとなく絵の雰囲気が違っていた。不思議な気持ちが先行するけど、やっぱりキャラの名前は一緒。ページを進めると、見たことない話。なんとなく、恋愛感が強いような気がした。


次のページを開くと、いつも喧嘩している剣士とコックが抱き合っていた。彼らはどちらも男性だ。

キスをして、抱き締め合って、感じていた。

あたしの知っている海賊の漫画じゃない、でも間違いなくディティールはそれだった。サワコに聞いたら、「どーじんし」と呼ぶらしい。本当の作者じゃない別の大人がその漫画の別ストーリー、それもすごくいやらしい話を描いているみたいだ。

サワコは男の子同士の話が好きみたいで、彼女の持ってきた本はそんな話をいくつも集めた、詰め合わせみたいな一冊だった。中身は一話毎に別の作者が描いていた。あたしに貸してくれるそうだ。

正直そんなによくわからなかったけど、すごく“いかがわしい”ことだけは分かっていた。彼女はあたしがその本を不思議そうに見ている間、顔と耳を真っ赤にして、今にも泣き出しそうな様子で下を向いていた、

サワコがせっかく打ち明けてくれたのに、あたしが拒絶したり馬鹿にしたら、彼女がすごく傷つくような気がした。だから、あたしもこの漫画を好きになろうと思った。

2人で本屋に行ったら、サワコがその本が集まるコーナーを教えてくれた。その頃は割と18禁コーナーとかじゃなくて、少女漫画コーナーの横に設置されていた。

サワコは好きなものを共有出来たことがかなり嬉しかったみたいだ。よくサワコから本屋に誘われるようになった。その笑った顔を見ると、初めてあたしに打ち明けた時の不安が、それに相当していたんだと感じた。サワコが笑ってくれていてすごく嬉しかった。

小6の秋。サワコが親の仕事の都合で引っ越しした。引っ越し後も手紙のやり取りを数回繰り返したけど、いつの間にか終わっていた。借りた本は、そのまま借りっぱなしだ。




小6の時、担任のモダが大嫌いだった。モダは少し恰幅のいい男性教師。情緒が激しく、普段はみんなが笑うようなおかしなことも言うのだけれど、何か不愉快なことがあった時は、急に憤慨して教室内の壁や教卓を殴ったり蹴ったりしてよく穴を空けていた。

モダは女子生徒にとても甘かった。“デレデレ”という擬音がよく似合う顔をしていた。女子生徒にはその気持ち悪い顔を息が当たる距離まで近づけてきた。あたしとサワコはモダに別々に呼び出され、2人きりの時に腰に手を回されたことがあった。いや、あれは腰というより脇腹だった。サワコとは奇しくもこの話がきっかけで仲良くなり始めた。後に聞いたら、他の子も似たようなことをされていたらしい。


逆に男子には特別厳しかった。


ある日、教室の花瓶が掃除中に欠けたことがあった。誰かのホウキの持ち手がたまたま当たってしまったようだ。ホウキ係は男女で複数名いた。誰がやったかすぐ犯人探しが始まったけど、誰も記憶になくて犯人は判らなかった。話し合いの結果、男子は掃除を続け、女子が報告しに行くことになった。あたしも気になって側について行った。


「あらら〜危ないね〜早く花瓶変えなあかんね〜!みんな痛い痛いなっちゃうよ〜。ありがとね〜???」


身の毛がよだつ猫撫で声を中年男性が出していた。正直吐き気がした。

その後、お昼休みの終わり頃くらいに教室に来たモダは、さっさと掃除を終え机の上に座りながら談笑する男子達を見つけた。その場に整列させられた男子達は、さっき女子がモダにした話と全く同じ内容の報告をしていた。それは間違いなかった。


「どーせやったのはお前らやろガキども。ボケコラ。」


“ボケコラ”は、モダが怒っている時に出る口癖だった。

お昼休みが終わって次の授業の時間になった。男子達はクラス全員の目の前でモダに髪の毛を掴まれ、振り回されていた。あたしの初恋の相手もその中にいて、彼はビンタされてお腹を蹴られていた。

それを見ている全員、何も言えなかった。黙ってこの酷い理不尽をただただ目を伏せて見ないようにしていた。


「せ、せんせ、早く授業始めてや?」


学級委員長のリリが震える声を出した。

どうにかこの場を止めたかったのだろう。リリは優しい子だった。優しくて正義感のある優等生で、あたしは彼女のことを尊敬していた。


「え〜へへ〜?そうしようか〜? ……おい、お前ら反省したら席座れボケコラ」


モダはリリに対してあの気持ち悪い顔を見せた後、泣きながら教室の床に座り込む男子生徒を、彼らが立ち上がるまで足蹴にしていた。1人だけ、初恋相手のアイツだけ、涙を流さずにモダを睨み続けていた。


「なんやねんその目はコラ?」


モダは彼の胸ぐらを掴んで数センチ持ち上げていた。それでも苦しそうにしながら彼の目はモダの目を睨みつけていた。


「せんせえもうやめてや!」


リリがさっきまで震えてた声を大きな声に変えた。変えることに成功したみたいだ。リリがぐしゃぐしゃに泣いてた姿は、今でも覚えてる。すごく、かっこよかった。





その後日、担任が変わった。詳しく聞くと、モダは謹慎処分を受けたようだ。

誰かのリークがあった。今までそういうことをしたこともある。あたし達は他の先生に相談したことがあった。ただ証拠が無く、モダ自身も何事もないように装っていたし、他の先生達も「あんまり怒られるようなことするなよ」くらいにあたし達を嗜め、誰も本気で向き合ってはくれなかった。そして他の先生に助けを求めたことを知ったモダは、より声を荒げてあたし達を怒鳴った。

けれど今回証拠が見つかったらしい。証拠が何かを聞いても先生達は教えてくれなかった。

あたし達を嗜めた先生達は頭を下げてクラス全員に謝罪していた。

あたしは、たぶんアイツが何かしたんだと直感した。間違いない、と思う。




モダは謹慎処分が明けた後、性懲りも無くクラスにまた戻ってきた。モダは開口一番に明るく謝罪してきた。示し合わせたように誰1人口は開かなかった。それからも、連絡事項以外誰もモダとまともに話そうとはせず、モダもあたし達との距離感を探り続けたまま卒業式を迎えた。卒業式の時の…ううん、謹慎処分が明けてからのモダの言葉は何一つ記憶に無い。

そういえば、卒業式の2週間前くらいに、モダとまともに会話してるような雰囲気の男子が1人だけ現れた。それは初恋相手のアイツだった。アイツが先生と仲良さそうに話して歩いていたところを目撃した他の男子は、アイツのことを良く思わないながらも“まーでもアイツやしなー”と少し笑いながら帰っていった。




中3の頃、近所の小学校で女子生徒にセクハラした男性教諭が捕まったと、あたしの住んでいた地域内で話題になっていた。


それがどうやらモダだったらしい、とリリから聞いて何の感情も湧かなかったのはあたしが冷たい人間だからじゃなくて、奴が担任の時のクラスメイトならみんな解るはずだ。興味が無かった。




お読みいただき有難うございます。

彼女のために書いているストーリーですので、評価を欲しがるのは烏滸がましいのですが、もし良ければ、ブックマーク、広告下の評価に星をつけていただけると幸いです。

とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。

これからも『蝙蝠の歌 -mintdrop-』をよろしくお願い致します。

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