第三十七話・表地球の脅威
ラグナ六区、魔王城【マオーガ】──怪人衆の一人、オナラ怪人でメイドの瑠璃子は魔王城の森で放屁で仕留めた。
野生化したブタが巨大化した未確認生物『ホグジラ』を塩焼き魚のように串刺しにして、広場のたき火で丸焼きにしていた。
瑠璃子の近くには、ホグジラが焼けるのを待っている、肉食ウサギの『アルミラージ』たちがいる。
ビッグフットが丸太で火力調整してくれている焼きホグジラの状態を見ながら瑠璃子が、アルミラージたちに言った。
「もう少ししたら、焼けるからね」
ホグジラは逃げ出したブタが野生化と巨大化したモノで、優魔じゃないので。
畑を荒らす悪いホグジラなら、捕まえたら食べるコトができる。
瑠璃子が、ホグジラを焼いていると『スカイフィッシュ』の群れと、胴体が丸太のように太い巨大ウナギの『インカニヤンバ』 が、優魔の森の方から逃げてくるのが見えた。
急にアルミラージたちも、怯えたように騒ぎはじめた。
「どうしたの、急に?」
次々と瑠璃子の近くに避難してくる未確認生物や幻獣たち、ドラゴン、ワイバーン、翼竜や恐竜も別方向から続々と瑠璃子のいる庭に集まってきた。
何かに怯えている様子の優魔たちの中から、小型ドラゴンの背中に乗って来た、マンドラゴラの長老が瑠璃子の前に飛び降りて言った。
「邪悪なモノが近づいてきておる……魔王城の地下避難空間に逃げてくる者たちの収容を」
そう言ってから長老は、杖で天を示した。
◆◆◆◆◆◆
ラグナ六区学園の放課後──魔王 真緒と灰鷹 満丸が並んで歩いていた。
満丸が真緒に言った。
「真緒くん、ちょっとお弁当屋さんに寄っていかない。ボクお腹空いちゃった」
「わかった、満丸くん」
真緒と満丸は、少し遠回りをして、手作りのお弁当屋さんに立ち寄った。
店のカウンターの中から、覆面をつけた戦闘員黒タイツの男性が顔を覗かせて奇声を発する。
「ウィース! なんだ、満丸か」
「父ちゃん、真緒さま連れてきた」
亜区野組織の戦闘員長で満丸の父親が経営しているお弁当屋。
店員も全員が亜区野組織の覆面戦闘員だった。
覆面で顔を隠した満丸の父親が、真緒に向かって頭を下げる。
「真緒さま、いつも満丸が、お世話になっています……ウィース」
「満丸くんのお父さん、ボクの方こそ戦闘員見習いの満丸くんには、助けられています……えーと、メニューを見るとなんとなく、売り切れのお弁当多いですね」
「急に魔王城の荒船さんの方から、亜区野組織の職員用に大量の弁当注文が入ったもので……なんでも、避難してくる者たちのために地下の避難空間を開放するそうです」
「避難空間を? 怪獣居住エリアと、ロボット居住エリアがある、あの場所を開放?」
魔王城の地下には、ラッコゴン一家などの怪獣たちが暮らすエリアと。
機械友・スカルオカンW3や機械友・緑嬢 ライムなどが暮らすロボットエリアがあった。
戦闘員長の店主が魔王と満丸に訊ねる。
「お弁当、何にしますか?」
満丸が決めた注文弁当名を父親に伝える。
「じゃあ、ボクは『得体が知れない深海生物のお任せフライ弁当』を爆盛りで」
メニューを見て決めた真緒が言った。
「ボクは『おかんが作る渦巻くブラックホール弁当』を」
「ウィース!」
数分後──お弁当屋横にある小さな公園の屋寝つきベンチに座り、出来立てのお弁当に舌鼓を打つ真緒と満丸の姿があった。
満丸が作ってもらった、お弁当はアタッシュケース並みのサイズがある。
温かいお弁当を食べながら満丸が言った。
「平和だねぇ……ねぇ、真緒くん知っている? 鉛谷ズ子が、今度はイメージしたモノを具現化させる光線銃を発明したんだって……一回しか使えないらしいんだけれど」
「へえ~っ、アニメキャラを具現化したらどうなるの? 人間になるの? それとも厚みがない二次元の動かない絵だけ?」
「わかんない」
真緒と満丸が、そんな雑談を交わしていると、両腕をコウモリ羽変化させた暗闇 果実が、パタパタと飛んできて真緒たちの前に着地した。
両腕を人間形態にもどして、果実が言った。
「やっと見つけた、満丸の携帯には、いくら呼び出ししても応答がないし……真緒は携帯電話持っていないし」
満丸が背負っている、ランドセル型のリュックに入っている、レトロな黒電話型の大型携帯電話を確認するとマナーモードになっていた。
真緒が果実に言った。
「だって荒船さんが、ボクが携帯電話持ったらダメだって」
「当たり前でしょう、真緒にスマホとか持たせたら。狐狸姫のアニメ関連で何をするかわかったもんじゃないから……二人とも、こんなところで道草食って」
真緒が近くに生えていた雑草を採って、モグモグ食べはじめると、果実は慌てて真緒の頭を叩いて吐き出させる。
「本当に食うな! 毒草だったらどうするつもり!」
「体力回復させたり、マヒを解除する薬草かも知れないよ」
「そんな、都合がいい薬草が道にちょいちょい生えているか! まったく、真緒……少しは『自分が地球を回すんだ!』っていうくらいの気合いとか気迫を見せなさいよ、魔王の息子なんだから」
「う~ん、ボク地球を回すより。地球に回された方がいい」
「はぁ!? 情けなさすぎる」
暗闇 果実は、横棒に半分の白抜き点目が描かれたような、呆れた目で真緒を見た。
真緒が呆れた目の果実に訊ねる。
「ところで果実、なにか用があって、ボクたちを探していたんじゃ?」
「そうだった、急いで魔王城にもどって……一色先生が保健室で何者かに襲われて、魔王城の医務室に搬送されたから。うわ言で『目が……目が……ドッペルゲンガー』って。他にも市内で数人が何者かに襲われている」
「いったい何が起こっているの? あっ、昼間からコウモリ?」
真緒たちのところに飛んできた、一匹のコウモリがペタッと地面に落ちた。
弱っているコウモリを抱えあげる真緒。
「これ、フルーツバットだ」
飛んで来て落下したフルーツバットが目が開けると真緒を見て言った。
「間に合った……早く逃げてマオマオ、もう一人のマオマオが近くまで迫っている」
言葉を喋るコウモリは、果実の方を見て言った。
「この世界のあたし、マオマオを連れて逃げて……マオマオを守って、お願い」
果実はコウモリを凝視する。
「あなた、あたしなの? どうして、そんな姿に? どこから来たの」
コウモリの果実は一言。
「呪い」とだけ伝えると、目を閉じて意識を失った。
◆◆◆◆◆◆
真緒が、コウモリの果実をタオルにくるんで抱えて魔王城にもどると、避難してきた者たちで城内はいっぱいだった。
宇宙人、地中人、海中人から怪人、ロボット、怪獣──戦隊ヒーロー、単独ヒーロー、悪の幹部のような格好をした人から、敵味方関係なく避難してきていた。
集まっている者たちの中には真緒が知っている者の顔もあった。
階段のところに絆創膏や包帯を巻いた姿で座っている、青賀 エルに近づいた真緒が話しかける。
「そのキズ、どうしたの」
「とんでもなく強い、あたしにやられた……真緒も気をつけた方がいい、あちらこちらで、別の自分と遭遇する現象が発生している」
「別の自分って?」
真緒の質問に、執事の荒船・ガーネットが答える。
「どうやら、別の地球からの攻撃らしいです……この二人が教えてくれました」
クモ顔に変化した荒船の背後には、子供姿の魔女『桜菓』と悪ガキそうな子供の勇者『メッキ』が立っていた。
驚くマオマオ。
「えーーーっ!? なんで子供の姿に」
腰に木の棒を差した、子供メッキが言った。
「オレたちは、ダークネス真緒が支配する表地球の、メッキと桜菓だ……こっちの裏地球の桜菓とメッキは、呪術的空間に避難させた」
メッキの言葉を繋げる子供魔女。
「裏地球の生きている朱蘭もね……こっちの世界で呪術関連の者たちは、ダークネス真緒の呪力の影響を受けやすから……ちなみに、あたしたちの表地球の悪魔『インディゴ』はこれよ」
顔に無限呪符を貼りつけた子供姿の桜菓は、首に掛かっている小さなヒトデのネックレスを持ち上げて見せる。
ネックレスのインディゴは「クマ……クマ」と、小さい声で鳴いている。
頭がこんがらがってきたマオマオが悲鳴をあげる。
「いろいろなコトが一度に起こって、頭の中がパニックだよ……誰かわかるように説明してよ」
真緒の言葉に応えるように、背後から緋色の声が聞こえてきた。
「その質問は、表地球から来た。あたしが順を追って答える」
振り返った真緒は、ラーメン屋店員姿の片肩エプロンで太モモに宇宙銃が収まったレッグホルスターを吊るした、いつもの緋色と。
士官のような軍人っぽい雰囲気の緋色を見た。
「緋色さんが、二人いる?」




