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マオマオくん裏地球に回される 1~今日もすこぶる平和です、悪い人もヒーローも仲良く遊んでいます~  作者: 楠本恵士
第五章・ご都合的な戦闘空間とド根性の銅色ロボットと姿が少し怖い怪人ヒーロー
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第二十八話・ガシャガシャ〔恒河沙・GOガシャ〕

 神社の石段を往復して、お百度参りをしている、ガンメタル色のロボットがいた。

「ガシャ、ガシャ、恒河沙……ガシャ、ガシャ、GOガシャ」

 祈っている恒河沙に、境内の掃き掃除をしていた神主が声をかける。

「いつも、熱心だね」

 戦闘空間発生マシンの恒河沙は、汗が出るはずがない手の甲で額を拭き取る動作をしながら答える。

「わたくし、不器用なマシンですから……神サマにお願いして、少しでも多くのヒーローの方に戦闘空間に入っていただきたくて」

 恒河沙が、春髷神社のご神体に向かって両手を合わせていると、網タイツ姿の色っぽい、真緒の学校の保健医。

 百々目 一色が、やって来て言った。

「やっぱり、ここに来ていたのね、恒河沙(ごうがしゃ)

 純白の白衣コートを風に揺らす百々目 一色は、片方の手をプラナリアに変化させると、ハンドパペットのように口をパクパクさせる。

「困ったコトが起こった、戦闘空間に変な異世界がランダムに紛れ込むようになった」

「それって、そんなに困ったコトなんですか?」

「開いた空間が、いきなり竜の胃袋とかに繋がっていたら。そこに入ったヒーローは消化されてウ●チになっちゃうでしょ……まぁ、ご都合主義の戦闘空間を開く時は、十分気をつけてね」

「わかりました、ガシャ、ガシャ、GOガシャ」


 数日後──緋色軒の休日、勇者メッキと銀河探偵・極神 狂介の二人は、カッパーロボを探して春髷市のスクラップ置き場にやって来た。

 廃車や家電製品が積み重ねられたスクラップ置き場を眺めながら、メッキが狂介に聞く。

「本当に、こんな場所にカッパーロボがいるのか?」

「半年前に、出前の途中に動いているのを見たんだけれど……おかしいなぁ」

「どんな格好しているんだ、カッパーロボって画像とかないのか」

「画像はない、例えるなら胴体はドラム缶、頭はタライ頭で、蛇腹の手足で、輪っかみたいなハサミの手で、目は車のライト、胸にメーターみたいなのが付いていて」

 メッキが落ちていた、タライのような銅色のモノを持ち上げて狂介に訊ねる。

「頭はこんな感じか?」

「そうそう、胴体はあそこに転がっているみたいな感じで……いっ!? メッキが持っているのカッパーロボだ!? なんでバラバラに? そう言えばアイツ、半年前に『最近、やたらとネジが緩む』とか言っていたから……転んだ拍子にバラバラに?」

「これじゃあ、どうしょうもならないな……ガラクタの山に放り込んで帰るか……けっ、ムダ足だったな」

 悪心のバロメーターが規定の数値を越えたメッキの姿が、老人に変わる。

「いや、ちょっと待て……そんなコトをしたら、緋色が激怒して来月のこずかい減らされる。緋色は仲間に対しては情が厚いからな、直してやろう」

 狂介は近くにあった、リサイクル家電を運ぶ時の台車にバラバラになったカッパーロボを縛り乗せると、家電量販店に持ち込んで修理を依頼した。


 持ち込まれたカッパーロボを見て、家電量販店の店員は即座に「うちでは、そういうモノの修理は行っていませんから」とか。

「メーカーがわからない、ロボットの修理はちょっと」とか、理由をつけて断られ続けた。

 大型家電量販店を数店回って歩き疲れた、老人姿のメッキが愚痴をこぼしはじめる。

「もう、その辺の粗大ゴミ置き場に棄てて知らん顔するとか、リサイクルショップに売っ払って、金に換えちまった方がいいんじゃねぇか」

「いや、もう一店だけ小規模な町の電気店を知っているから、そこに持ち込んで、修理できるかどうか聞いてみよう」

 町のちいさな電気店で、家電を修理していた眼鏡の老店主は、台車に乗せられて店に入ってきたカッパーロボを一目見るなり言った。

「ふんっ、ついに壊れたか、そこに置いておけ……修理してやる」

「直してくれるのか?」

「ふんっ、元々儂が道楽から廃物利用で作ったロボットだからな」

「あんた、もしかしてカッパーロボの制作者か?」

「ふんっ、儂は町の気難しい電気屋さんだ。ちっとばっかし、ロボット工学をかじっただけの老店主だ……カッパーロボは、完成してすぐに店から逃げ出した。今日の夕方までには直しておいてやる……修理代は無料だ」

 狂介とメッキは、カッパーロボを電気店に残して帰った。


  ◆◆◆◆◆◆


 春髷市の某喫茶店──カウンター席に、オレンジ色とグリーン色の斑模様で、フルフェイスのバイクマスクのような頭をした怪人ヒーロー『モリブデン』が座ってコーヒーを飲んでいた。

 緑色のマフラーをして、鋭いノコギリ刃のようなトゲトゲが付いた黒い手袋とブーツを履いて。

 腰にサバイバル生活ベルトを巻いたモリブデンは、毒トゲの背ビレを広げたり閉じたりしながら、カウンターの中にいる初老男性に話しかける。

「おやっさんの、煎れるコーヒーはいつも美味しいですね……ウゲェェ」

 モリブデンの下アゴが、深海魚のように前方に伸びてフレームの間から、口に入れたコーヒーが手にしたカップの中に落ちる。

 モリブデンは、コーヒーカップの中に溜まったコーヒーをまた飲む。

「本当に、おやっさんの店のコーヒーは美味しいからオレ好きですよ……ウゲェェ」

 下アゴからカップにコーヒーを落として繰り返して飲む、モリブデンの姿に喫茶店のマスターの、おやっさんは露骨に嫌な顔をした。


「おい、モリブデン……うちのコーヒーが、美味しいのはわかったから。その飲み方やめてくれ」

「どうしてですか? オレ、長い時間おやっさんのコーヒーを味わっていたいから……ウゲェェ」

「だから、やめろって言っているだろう! その飲み方を見ていると気分が悪くなる!」

 おやっさんが怒鳴っていると、店のドアを開けてオートバイから二足歩行の等身ゾウムシに変形した『疾風の黄砂』が、普通に入ってきて。

 体の前面に泥で汚れた前輪と後輪を露出させた状態で、モリブデン隣のカウンター席に座るとオカマの口調で言った。

「おじさ~ん、エンジンオイルちょうだ~い。いやぁん、ぬかるみ走ったらタイヤ汚れちゃったわぁ」

 ワナワナと震える改造人間のおやっさんは拭いていた、コーヒーカップを握り割ると。

 疾風の黄砂に向かって怒鳴り、おやっさんキックで、ゾウムシオートバイを蹴っ飛ばして店から叩き出す。

「出ていけ!! うちはバイク屋じゃねぇ!! オートバイがお客のフリして毎回、喫茶店に入ってくるんじゃねぇ!!」

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