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第二十五話・空き地でマオくん……ある意味モテモテ

 ラグナ六区の商店街を歩く奇妙な集団がいた。

 会社員のような営業スーツを着て、真面目そうなメガネをかけた毛深いビッグフットが言った。

「どうして敷地の外に出るのに、人間に変装しないといけないんだ?」

 キャスケット帽子を被りサングラスをかけて、エジプト神話のような胸飾りにカジュアルな服装を組み合わせたワンパスキャットが、少しサングラスをズラし見しながら答える。

「だって、あたしたち未確認生物だから。そのまま外に出たら大騒ぎになるでしょう……その変装なら、大柄なサラリーマンにしか見えないし」

「そうなのか? オレたちが外を出歩くと大騒ぎになるのか?」


 ビッグフットは、商店街で学校の制服姿でキャキャ騒ぎながら歩いている、怪人女子高校生を不思議そうな顔で眺めた。

 ラッパーのような格好をした、ラブランド・フロッグがワンパスキャットに軽い口調で訊ねる。

「よーよーっ、チュパカブラのヤツも外に出たがっていたから、連れてくれば良かったよーっ」

「チュパカブラは、どう変装させても人間には見えないからダメ……それに、アイツは襲ったヤギや羊の骨しゃぶりながら歩くから嫌い」

 ビッグフットが再度、ワンパスキャットに質問する。

「じゃあ、モンキーマンのヤツはどうなんだ。あいつ、チョッパーハンドルのバイクに乗って頻繁に敷地の外に出ているぞ……不公平だ」

「モンキーマンは日本ザルの彼女がいるから、長老が特別に外出を認めているの……そんなコトより、早く青賀 エルを見つけて、魔王城の敷地内に連れ戻さないと……外にはカエル全般の天敵がいるから」

「そうだよーよーっ、オレもアイツに睨まれると、怖くて動けなくなるから苦手だよーっ」


 魔王 真緒と暗闇 果実は、学校から一緒に並び歩き帰宅途中だった。

 住宅街の通学路を歩く真緒が果実に話しかける。

「でね、敵の攻撃で強制的に化身解除されちゃった狐狸姫と、その仲間たちが普通の女の子の姿にもどちゃって……敵の幹部から『友情なんてゴミクズだ』って否定された狐狸姫たちは、拳を握りしめて立ち上がって」

「あぁ、わかったわかった……その話し朝から何十回も聞かされた──あたし、そのお子ちゃまアニメに一ミリの興味もないから」

「えーーーっ、果実もあの回を観たらハマって泣くよ、今度『閃光王女狐狸姫スーパー』の全話DVD貸してあげようか」

「遠慮する」

 暗闇果実は横目で真緒の顔を眺めながら、タメ息を漏らす。

(はぁ……本当に狐狸姫ヲタクじゃなかったら、残念じゃないイケメンなのに)

 歩いていた真緒の足が止まる、真緒の視線の先には缶飲料の自動販売機があった。

 真緒は、まるで街灯に引き寄せられる蛾のようにフラフラと自動販売機に近づいていく。

 果実は「またか……」といった表情で首を横に振った。

 真緒が自動販売機の缶見本を指差して言った。

「見て見て、狐狸姫のプレミアム缶だよ……ずっと探していたんだ」

「はいはい、どうせ買うんでしょ……絵柄のダブリが出たら飲んであげるから」

 真緒はプレミアム缶の購入を開始した、十缶を越えた頃に果実が真緒に質問する。

「まだ買うの?」

「だって五種類全部集めたいから……保存用と中身を飲んだ空き缶と、みんなに飲ませてあげたい分も……あっ、またダブリが出た」

 自動販売機前に二十缶ほど並べられると、自動販売機の売り切れ表示が点灯した。

「あ~ぁ、五種類揃う前に売り切れちゃった……まっいいか」

 果実はポケットから、折り畳んだ買い物袋を取り出して真緒に渡す。

「ありがとう、用意がいいね」

「真緒の行動パターンは把握しているから」

 二人は自動販売機近くにある、土管が積まれた空き地に行ってダブった缶飲料を飲む。

 プレミアム缶に描かれているアニメキャラを、感慨無量の表情で眺めている真緒に訊ねる果実。 

「そのアニメキャラの女の子、そんなに好きなの?」

「うん、大好き……お嫁さんにしたいくらい。ズ子さん二次元キャラを生きた三次元キャラに立体化できる機械作ってくれないかなぁ……夢の中では毎晩、逢っているんだけれど」

 さすがに少し呆れる暗闇 果実。

「あのねぇ、真緒あんたねぇ……少しは現実を」


 その時──空からヒラヒラの少女アニメキャラ風のコスチュームに身を包んだ白玉 栗夢が、拳で真緒を狙って急降下してきた。

「真緒くん! お父さんの仇!」

「危ない! 真緒!」

 果実は真緒を抱き寄せて、土管から数メートル跳び避ける。

 真緒がいた位置の土管を拳で砕いた栗夢は「あっ、外しちゃった」と、呟く。

 果実は、いきなり襲ってきた栗夢に向かって怒鳴る。

「何よあんた! 顔に変なモザイク目線入れて! 真緒に恨みを抱く一人?  何者?」

「えーと、通りすがりの怪人です……真緒くんは父の仇なんです」

「なにその声? ウソつけ、そんなヒラヒラしたコスチューム着た怪人がいるか! 真緒あんたまた敵を作ったの?」

 抱き寄せられて果実の胸に顔を半分埋めた真緒が、のほほんとした口調で言った。

「心当たりは無いんだけれど……いつの間に父の仇になったのかな? 果実の胸、狐狸姫のバストサイズと同じくらいかな?」

「バカ! 呑気なコト言っているんじゃないわよ……殺されかけたのよ」

 その時、少し離れた場所から栗夢とは別の女性の声が聞こえてきた。

「見つけたぁ、魔王 真緒! 良質な天使の素材」


 空き地で魔王 真緒を発見した、マイクロビキニアーマーを着用の青賀 エルは頭上に両腕を掲げる。

 光の粒子が集まって身長を越える大剣が出現した、エルは大剣を真緒に向かって振り下ろす。

「魔王 真緒! 潰れて天使になりなさ~い!」

 また果実が真緒を抱き抱える格好で、エルが振り下ろした大剣から跳び避けて真緒を守りながら怒鳴る。

「今日はなんなのよ! また変なエロい女が現れた!」

 エルが薄笑いを浮かべながら言った。

「痛くない……痛くない……痛いのは大剣で潰された瞬間だけ、ふふふ……天使になれば天国が待っている」

 エルの大剣で潰されて昇華したミミズとオケラとモグラが、天使になって空に昇っていくのが見えた。

 その時──また、別の女性の声が聞こえてきた。


「ダーリン、見っけ」

「真緒お兄ちゃん、冷奈だよ」

 空き地の前を通りがかって真緒を発見した。青潮 シャコと黄昏 冷奈は、真緒が襲われているとすぐには理解できなかった。

「えーと、とりあえず攻撃体勢でいのかな?」

 シャコがボクシンググローブをハメた手で構え、冷奈が天を仰いでケモノの咆哮をする。

「ぐぎゅあぁぁぁぁ! 変身」

 リュックサックを背負ったまま、冷奈の体が膨れ上がり上半身の衣服が破れ散り、ホワイトタイガーの冷凍怪人に冷奈は変身した。

 シャコより頭一つ分、体躯(たいく)が大柄になった冷奈の口から白い冷気が漏れる。

 そこに、ブルドーザーや戦車に走行用に付いているような、ウロコ状の無限軌道をサザエ貝の下部から出して青潮 ホヤが、怒鳴りながら疾走してきた。

「魔王 真緒ぉ!!! 妹を騙しているフナムシ野郎! シャコに近づくなぁ! くたばれぇぇ!」

 サザエから突出した砲身から、口先が鋭い魚の『ダツ』が、ダツ弾になって真緒を目掛けて連続で撃ち出される。

「危ない! 真緒お兄ちゃん!」

 冷奈の口から発射された冷凍光線で、ダツが空中凍結して落下する。

 エルがホヤに向かって大剣を振り下ろす。

「魔王 真緒の、天使昇華を邪魔するな! 先に消し去ってやる!」

 エルが振り下ろした大剣はサザエに当たる前に、金属音を響かせて停止した。


 サザエに付着しているイソギンチャクの中から、白木鞘の日本刀をつかんだ白い女性の腕が出ていて、刀身が大剣がホヤに届くのを防いでいた。

 イソギンチャクの中から、白木鞘の白刃を抜いた水着姿のアホ毛女が、大剣を押し上げながら上半身を現す。

 イソギンチャクから出てきた目つきが鋭い、アホ毛女が言った。

「ホヤさまは、あたしが守る指一本触れさせない」

 空中に弾かれた大剣が光の粒子になって消滅する。エルが日本刀を構えるアホ毛女に訊ねる。

「あなた……いったい何者?」

「『魚斬(うおぎり) サンゴ』……ホヤさまのボディガード、陸上でも長時間活動できるように、修行を積んだ海中人」

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