表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/43

神託

「まだ見たこと無いんですけど」

 あぁいうタイプの御仁というのは、気張った相手には一生懸命大人びた行動をするものさ。

 互いが互いに目を合わせる事もなく水槽に目を向けていた。揺蕩う水の動き、薄暗い夜のような照明、それに癒しを覚えるのは何故なのか。だがこの空気が何気ない会話を円滑に進めているのは確かなのだ。

「ま、君は良い子だからさ。私のような二の舞にはならないさ。でも善は急げ。会うなら早い方がいい」

「では今日は難しいので、明日にでも」

 顔を見ると、あどけなさの残る無邪気な笑顔を浮かべていた。水槽に両手を付く子供達と同じ匂いがする。この微笑みでどれだけの神々を救って来たのだろう。そんな事を考えながら私も僅かに口角を上げた。この娘とは程遠い、凄惨な笑み。だが自分のこの笑顔が嫌いじゃないのだ。

 さて、後輩の用事は済んだだろう。次は私の番だ。私は椅子から立ち上がると、髪を弄りながら問いかける。

「後輩、此処に楽しい思い出とか沢山ある?」

「はい!! 此処に限った話じゃ無いですけど、水族館は好きですよ」

  歩き出した事を見越し、後輩も後を着いていく。大水槽から中水槽へ。鰯の群れが渦を描く。それはまるで銀の竜巻のようだった。中水槽の次は小水槽。自宅にでも飾れるサイズの小さな水の空間に、鰭が海草のようなタツノオトシゴが気ままに浮いていた。舞踏会に来た貴婦人の如く、自らの衣装を揺らめかせる。魚の中では華やかで可愛いと思う。

小さな水槽に入った魚って、結構人気ですよね。

私も好きです。タツノオトシゴのヒダ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ