お伺いを立てたいのです。
一週間後、私はとある水族館に訪れていた。待ち合わせはエントランス。チケット売り場の前には長蛇の列が出来ていて、休日である事を示していた。それを横目で眺めながら、ざらついたクリーム色の砂壁に凭れかかりスマホを弄る。連絡はまだ入ってない。時間前に来る子だから、そんなに心配してないけど。
都内有数の水族館。交通の便、周りの商業施設共々二重丸。一日回れば退屈しない。そんな所。
「ヨハネ先輩ー」
自動ドアが空いて、焦ったような顔で此方に掛けてくる。長い髪が走る事に揺れて、年齢以上に幼く見える。そんなに焦らんでも。
私はスマホを鞄の中に仕舞うと、代わりに年パスを取り出した。顔写真の裏側を確認し、此処のものである事を確認する。よし、大丈夫。
「遅れましたか?」
「まだ時間前だよ」
息を荒あげながら膝に手を着く後輩を見て、クスッと笑った。その態度そのものが、生真面目な彼女の性根を表していた。息が整った事を確認すると歩き出す。その姿を見て、後輩もカード型の年パスを取り出した。
「今日はお時間有難う御座います」
「いいよ。午後はいないけど」
姉妹の如く横並びになって、館内のBGMに耳を澄ます。沈み込んで行くような、海を表した音の連鎖。それを聞きながら大水槽に向かう。硝子の前では子供達が手を着いて、鮮やかな魚を眺めている。間近で見ることは叶わない為、壁沿いに設置してある丸太を二つ並べたような椅子に腰掛ける。これもこれで悪くない。
この、深海のような薄暗い世界の中で、後輩はスマホを取り出した。液晶から放たれる光が眩しかったのか、光度を限界まで下げる。
前回の連載ぶりです栞ちゃん。
相変わらず肝は小さいですが、そんなところも好きですよ。
※やたら自分のキャラを推すのは、自分が好きになったものを皆様にも好きになってもらいたい。という心理から。
我が子をゴリ押しするのと似てる気が。