夢路へ
「さて、始めるか」
三狐神様の凛とした声で目を覚ます。今まで何処か夢の水面を揺蕩っている気分だった。おれは目を見開いて緋色の双眸を見返した。相変わらず夕陽の如く鮮やかで、何処までも吸い込まれそうだ。彼女は私達一人一人を指差すと、硬い口調で宣言する。
「今回はお前がシテだ。後見は誠也」
「はい」
私が招いた禍。であるが故にこの舞台の主人公は私だ。本当は舞台の観客の如く、傍観者を決め込みたいけれど、世界はどうも優しくない。
私は三狐神様に一礼をすると鈴を持たされた。持ち手の上の部分に小さな丸こい玉のような物が連なっている。所謂、神楽鈴と呼ばれるものだ。恭しくそれを受け取ると、シャリン……と涼やかな音が鳴り響いた。
「それでは」
細い石畳の上を神楽鈴を揺らしながら歩を動かす。両手を天に向けて、節目節目に手首を捻って音を鳴らす。御神楽? 能? なに、そんな崇高なもんじゃ無いさ。 もっと混ざって曖昧さ。
ヨハネの舞はいつ見ても綺麗だった。音なんか無くても、自分の動きだけであるように錯覚させる。そこにあるは何一つ存在しない淡い幻覚。流し目で此方を見て、手首を回転させて鈴を鳴らす。段々と夢と現の境が曖昧になり、遠くから笛、太鼓、琵琶の囃子が聞こえてくる。あぁ、もう少し。
そう、空想に意識を飛ばしかけた時だった。女の細い体がぐらつき、硬い石の上に倒れ伏す。揺らいで崩れるその瞬間までも、舞の一部と錯覚していた。
三狐神様は動かなくなったヨハネの肩を抱くと、口元に手を当てて息を確かめる。寝顔は穏やかだった。
「どうだ、繋がったか」
「ええ。何時でも援護、交代可能です」
辛くなったら何時でも変われ。
仕えている方が仕えている方なんでぶっ込んだらこうなりました。
能楽も難しいですね。種類も結構沢山。
動画見たんですけど良く分かりませんでした。




