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「夢……か……」

「なんだ。何か引っかかるのか?」

 リビングダイニングというのだろうか? 足の長い椅子とテーブル、奥側には二人がけのソファ。何だかんだとヨハネが邪魔しに来るので、こういった間取りになっている。一人暮らしにしてはやや持て余す余裕のある部屋だ。

 勝手知ったる他人の家、此奴は一足先にソファに足を伸ばすと、その上で体育座りをした。華奢な女の体を包む、ダボついた上着が崩れ、短パンから覗く生っ白い素足が顕になる。それを見て、問答無用で膝小僧を叩く。

「あいたっ」

 痛そうに擦りながら、ヨハネは脚を下ろすことなくそのまま顔を埋めた。それからぐしゃぐしゃと頭を掻き回すと、顔を上げた。目が死んでいる。気怠い生気の無い黒が、ドロドロと淀みを吐き出している。

「心当たりっていうか。さっきのに関わらず、ちょいと悪夢を見てね」

 何故それを早く言わない。今の今まで一言も、んな事言って無かったろ。喫茶で見た夢の出来事と結び付ける為、その情報は早くに欲しかった。

 苛立った双眸を向けると、悪戯っ子の如くべえっと舌を出した。全く悪びれない。俺の心配を返せ。

「今思い出したんだよ」

 ヨハネは俺に凭れ掛かるように頭部を擦り寄せると、上機嫌に一言。

「ふふふ。赤ずきんちゃんみたいだった。君は猟師さんかなー」

「……あーハイハイ」

 甘えるように、誘うように、人差し指で俺の腹をなぞると、狼のように笑った。誰が赤ずきんだ。狼はお前だろうが。俺は溜息を着くと、思い切り頬を抓った。色ボケ噛ますのは色物だけにしておけ。

 ……ヨハネは幼少期、怪異風情に食われている。聞いた話によると丸呑みだったそうだ。腹から割かれて取り出された、黒の羊水に包まれた女子(おなご)は、不完全なまま新たな生を再開した。もう、元の少女では無かった。無邪気で輝かしい双眸は斜陽に墜ち、翳りが差した。無垢な顔に、誘うような情欲が差した。さながら遊女の如く。

 俺はそいつと対峙していない。もしかしたら別の怪異かも知れない。だが油断は出来なかった。

「好きに眠れ。こっちは任せておけ」

 いざって時は頼れ。

伏線回収その1ってところです。

完璧な伏線回収って訳ではいないので、それはおいおい。


他にも沢山話したい事がありますが、言わぬが花な気がします。

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