雛鳥が見た夢
ヨハネは警戒することなく俺の後を着いてくる。さながら雛鳥の如く。向かう先は俺の仮宿。実家から一人暮らしをしている為、女一人連れ込もうが、とやかく言われる事はない。最も戻る先が実家であろうが、そんな事は億が一にもありはしないのだが。
真っ黒なコンクリの上、夕焼けの赤橙の光が道を照らし、何だか異世界へと導かれているようだった。そうやって、何だか奇妙な感覚を味わっていると、白煉瓦の壁が見えてきた。俺は鞄から鍵を取り出すと、弄ぶようにして人差し指でクルクルと回す。
「にしてもタイミングがゴミだな。予感こそあれ、もっと前に来てくれりゃ、舞楽様しかり、三狐神様しかり、飛梅公に相談出来たものを」
「しゃーないじゃん。許せ」
鍵を開けて振り返ると気軽な挨拶。片足で立って、右手を使って不器用にも靴を脱ぎにかかる。長い髪がはらりと体を包み、女の半身を覆った。静かな池。そこで足の長い鷺が獲物を求めて立ち竦んでいる。そんな幻覚めいた目の前の光景に心を奪われる。気が付くとヨハネは瞬きをして此方を見つめていた。
「どした?」
「いんや。夢見てた」
「人の事言えねー」
本当、うたた寝をかました此奴を笑えない。俺も何処かで夢見るように生きている。目が覚めるように頬を叩くと自宅内に上がり込んだ。
俺は喫茶店での出来事を思い出す。あのまま起こさなかったら、多分此奴は此方側に戻って来れなかったかも知れない。それぐらい罠めいた仕掛けだった。倒されるの前提で精神を自分の中に閉じ込める。傍にいて良かった。
滅茶苦茶になった理由って色々あるんですけど、突っ込み過ぎたところですかね。
洋楽と、伝統の能楽と、花魁と、趣味を混ぜたら訳わかんくなりました。
何時もは無理にでもまとめるんですけど、ガッツが失われてました。
甘えですね。




