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「でも気遣いは嬉しいよ。お礼がしたいなぁ。何が良い?」

 手を後ろに回して、顔を覗き込むようにして、 の顔を見る。不意をついて男特有の太い首に腕を絡ませると、ぐらっと自らの首を折る。女が媚び売るように蠱惑的な笑顔を浮かべ、そのまま唇が触れるスレスレまで顔を近づけた。もう少しで近づく。その時だった。

「うっ……」

 鈍い声を上げて、思い切り私の体を突き飛ばした。口からは真っ黒な液体が吐き出され、服や灰色の地面を穢す。擬態が溶けたように本性を示す。先程風車に描かれた、おどろおどろしい姿それが此奴の真の姿だ。それを見て、私は薄らとほくそ笑む。

「駄目だよー。私を喰いたいなら、もっと上手く殺らなくちゃ……さ」

 忌々しく睨めつける低級神、いや、神というのも憚られる。怪異擬きは忌々しく此方を睨み、震える腕で立ち上がった。無駄なのに。今突き刺したのは、後輩から分けてもらった御魂。生粋の穢れなき上位物。善性の神が賜れば薬となり、悪性の獣が喰らえば毒となる。そして君のような半端な雑魚が食らったら、ひとたまりもない。本当は自分の為に使いたかったけれども、背に腹はかえられぬ。

「凛さんは優しいから、使い倒してくれるけど、私はそうじゃないからさ」

 それからうんと冷たい声で言い放つ。

「お前は要らない。此処で殺す」

 予備の風車が胸に突き刺さるまで、時間は掛からなかった。

「ふぅ……」

 私は怪異だったものの遺体を踏み付け弄びながら、ぐらりと辺りを見回した。余りにも呆気ない。これ、ただの罠なんじゃないか? 嫌な予感がする。何だかこの世界から逃れられないような、そんな悪寒。早くここから出よう。でも、どうやって?

 来た道を戻るように振り返る。このまま歩き去ってしまいたかった。全てを忘れてしまいたかった。だが、そんなに甘い世界ではなかった。

「喰いたい……喰いたい喰いたい喰いたい喰いたい喰いたい喰いたい喰いたい!! 過去の……」

 息を飲む。足首に絡み付く、骨と皮しか無いような手を振り払うように、左右に振り回す。解けない。やっぱ罠じゃねぇか!!

まぁ、序盤の誠也の一言が此処に凝縮されていると言いますか。

誘うだけ誘って捨てるのがお前の手口だろ

って感じなんですけども。


名残がありますね。結界風車の。

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