誘って
私は誠也に連れられて、国内有数の巨大公園を訪れていた。敷地だけを見れば上位に食い込むそこは、一歩大通りを逸れると木々が生い茂る鬱蒼とした森である。時折遠くから鳥達の高い囀りと、雀蜂のような鈍い音が周りを包んでいる。唯一、コンクリの蛇行した道だけが人の手が入っている事を示していた。
黙って雛鳥のように後を着けていると、不意に が足を止めた。首を曲げて投げ掛けた視線の先にあったのは、一つの風車。風が無いせいか回る事を知らない。 はそれを地面から引き抜くと、すっと私の前に差し出した。
羽の模様が余りにも歪。モノクロをベースとした色彩に、何とも形容し難い怪異が描かれている。姿形は一応人型。だが目も、口も、人とはとても言えない程に狂っている。私はそれを覗き込みながら、自分の目線が酷く冷たくなるのを感じた。それからは一瞬だった。風車を持っていない方の手が羽を覆うと、問答無用で握り潰す。
粉々になった羽が硝子の破片の如く、地面に落ちる。それだけじゃ飽き足らず、足を使って踏み潰す。後に残るのは、塵屑と化した風車だったもの。
「何? 罠でも掛けたの」
「ま、そんな処だ」
は面倒臭そうに頭を掻くと、明後日の方向に目線を投げた。口の間から出た舌先からチッと小さな音を立てた。
渡された風車からは堕神と の霊気を感じた。恐らく 自身の霊気を餌として、堕神を引き寄せたのだろう。そしてこの風車に封じた。ま、掛かったのは外れだったが。
最初のタイトル「結界風車」だったなーと思い出しました。
ドンパチやるフィールドも変わったしまったので、タイトル変えたんですけど。




