土産だよ
土産物コーナーは明るい光が差し込んでいた。壁沿いには沢山のぬるいぐるみ、中央には文具、小物類が並んでいた。やはり水族館、売られている物は全て水棲生物に限られている。私達は入口付近から少し離れ、キーホルダーが並んでいるコーナーに立った。
「お礼と言っちゃなんだが、何か買ってあげよう。何が良い?」
「え、いいですよ。自分で買います」
私はチンアナゴのマスコットに目を走らせた後、後輩の顔を見た。彼女はぎょっと目を見開くと、サッと物品から目を逸らす。冷や汗が頬を伝っているが、知ったこっちゃない。
私は焦る後輩連れて、壁沿いまで移動する。イルカやアザラシのぬいぐるみを求めて子供達が手を伸ばす。素直で良いね。君もそれくらいの欲を見せな。
後輩は必死に下を向いて、やわこい綿の塊から必死になって逃げていた。それを見て、思わず冷こい目になってしまう。
土産物だなんて建前だ。そんな優しい代物じゃない。出来ればただの贈り物として渡したかったが、金目鯛の事もある。この子を守る物は早い方が良い。だがその考えを悟られないように、私は努めて平坦な口調で背中を押した。
「それぐらい大切なんだよ。お守り兼ねてるし、半分は分けてもらうし。何が良い?ぬいぐるみは好き?」
「じゃあ…………」
彼女が指差したのはジンベエのぬいぐるみだった。小さな真ん丸お目々がマスコット感を割増。幼子が胸に抱えても違和感ないサイズ。成人女性が持つにはちょっと小さいかな? 私はその頭を鷲掴みにして、胸に抱え込む。マシュマロ感触は非常に惹かれるが、やっぱり小さい。
クラゲもっちりクッションを再販して欲しい今日この頃です。
好機を逃がすのは何時もの事です。はい。




