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プロローグ


ここで、最高の最期を迎えたい。


2021年。


蝉の鳴き声が、まるでこの世の終わりを告げるが如く激しく鳴り響いている。


「まーったく、本当に暑くて堪らんわ」


桑畑くわはた征治せいじは隣に並んで歩く、50過ぎの幼馴染の石塚いしづか克夫かつおの玉のような汗が、もうだいぶ薄くなって地肌の見える頭皮から吹き出している様を見ながらぼやいた。


「温暖化だからしゃーないさ。東京から来る下見の客は、何時に三島に着くって言ってたっけか?」


石塚はスマホの画面で時刻を確認しながら桑畑に尋ねる。


「確か、11時過ぎに到着するってお前が言ってたじゃねーか。駅からはタクシーで来るんだろ?あと30分ぐらいで到着するだろ」


桑畑は答えるとカバンから鍵を取り出し、玄関のドアの鍵穴に鍵を差してドアを開ける。


「建物は取り壊すって言ってたな。建物の滅失登記は秀樹先生の所か?」


桑畑は石塚に確認しながら、家の中にどんどん入っていく。


「まーだ先方が買うかどうかも決まってないのに、お前は相変わらずせっかちだな。って秀樹先生にあの家の相談してるんだろ?」


やっとタオルで頭の汗を拭きだした石塚も、笑いながら桑畑の後を付いて家の中に入った。


「相談したところでどうにもならんさ」


吐き捨てる様に桑畑は言い、エアコンのスイッチを入れた。

ブーンと室外機が回り始める。


「しかし、俺もまさかお前に売った家が欠陥住宅だとは思わなかったよ。その償いじゃないけど、ここは強気で売ってやるからな」


ドヤ顔で石塚は言い切ると、持ってきた使い捨てのスリッパを四足並べた。


「あ、冷たいモン買ってこようと思ってすっかり忘れとった」


桑畑が思い出したように石塚を見る。


「いいらぁ?どうせじっくり見るのは土地だけだし」


1番汗をかいている石塚は面倒臭そうに答える。


「それでも家にも上がってもらうんだし、俺も喉渇いたし、コンビニで買ってくるわ」


「じゃあ、俺はビールでも頼むわ」


ガハハと石塚が笑いながら、使い捨てスリッパを履いて部屋の奥へ入っていく。

桑畑は玄関に戻り、下駄箱の上に有る皮の手袋をはめると、傘立ての中のゴルフクラブを手に持った。

思い詰めた顔でグッとグリップを握り、そして石塚の背後に静かに近づいて行く。

目標を定めると桑畑は声を張り上げる。


「お前に飲ませるビールはこの先もねーんだよッ!」


桑畑はゴルフクラブを上に振りかざすと、桑畑の声で振り返った石塚の頭目掛けて振り落とした。

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