表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
週末ハ貴女二逢イニ  作者: 暁紅桜
1/4

1話

最近、一層寒くなったような気がする。

 先月は、十月だというのに日によって気温が変わっていた。ひどく暑い日もあれば寒い日も。

 最近は安定してきて、吹く風は冷たく、頬や体を撫でられると身震いが起きてしまう。そんな気温だから、最近はマフラーをつけたり、コートを着ている子をちらほらと見かける。


「最近寒いもんな」


 廊下を歩きながら、窓の外を眺める私は、暖色の世界に目を向ける。

 木々の葉はすっかり秋色に染まり、はらりはらりと地面に落ちて行く。こういう時期、枯葉を集めて科学の佐賀沼さがぬま先生が焼き芋をしていて、タイミングが合えばおすそ分けをして貰えたりする。

 もうすっかり秋だ。と思いたいが、もう十一月。冬マジかなのに、今頃になって訪れた季節に、なんだかここだけ時間がずれているようにも感じてしまう。まぁ、全校生徒に同じようなことを聞けば、多分半分近くの生徒が同意してくれるだろうと思った。

 この学校は、高台にある女子校。別にお嬢様学校というわけではないが、それなりに偏差値も高い。入学した学生は量での生活を強制される、まぁ女の子を閉じ込める鳥籠みたいなところだ。でも、何不自由のない生活が約束されてるから、みんなのびのびと勉学や運動に勤しんでいる。私もまぁ、そのうちの一人だ。


「あ、こんなこと考えてる場合じゃなかった」


 と当初の自分の目的を思い出し、私は止まっていた足を進める。

 すれ違う生徒は、休みをどう過ごすか楽しそうに話をしていた。週末になると、いつもよりも少しだけ足がふわふわと浮つく感じがする。けど私のそれは、他の生徒たちとは違う。休みなんてどうでもいい。私の楽しみは、週末の放課後の図書館だ。


「し、失礼します」


 もう慣れたはずなのに、気持ちが高ぶっていつも扉を開くときにドキドキしてしまう。さっきの言葉も、上ずってなかったか少し不安になる。

 日の傾きが早くなったこともあり、図書館の中はほんのりオレンジ色に染まっている。生徒の数も、夏場に比べればほとんどいない。しんと静まり返ったこの空間は、まるで時が止まっているようにも感じる。

 また少し緊張した体が強張ってしまう。下唇を強くかみながら、私は敷居を跨いだ。


「あら、こんにちは」


 柔らかい声音が、私の耳に心地よく届いた。

 ゆっくりと顔を上げると、図書館のカウンタースペース。そこに背筋を正し、レンズ越しに私を見つめる綺麗な女性は、柔らかい笑みを向けてくれた。


「こ、こんにちはです。菖蒲先輩」


 涙雨菖蒲(るいう_あやめ)先輩。私より一つ上の三年生。図書委員長をしていて、毎週金曜日の放課後にカウンター当番をしている。

 そして、私の片思いの相手……


「そこに立ってると邪魔になるわよ」

「え。あっ、ご、ごめんなさいです」


 出入り口の側で出たそうにしている生徒に気づいて、私は慌てて少しずれて謝罪をした。「大丈夫ですよ」とそう言いながらその生徒さんは出ていったが、少し笑われていた。先輩に見惚れて周りが見えたなかった。

 私溜息を零して落ち込んでると、先輩が軽く手招きをしてくれた。私は手にしていた紙で口元を隠しながら先輩へと近づいていった。


「相変わらずおっちょこちょいね」


 先輩もクスクスと笑い始める。恥ずかしくて顔を覆いたくなるけど、先輩が私のことで笑ってくれるのが嬉しくて、顔を隠すどころか、じっと先輩を見てしまう。今の私は一体どんな顔をしているんだろう……






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ