明け睦(むつ)
たまに、早起きをして散歩をします。
水平線が紫になって、その上に金糸雀色が重なります。その上はしらじらとした鈍い光の空になって、その境界から、まだ、灰色っぽい暗い空のてっぺんまで青が滲みはじめ、やがて、陽がのぼっ来てます。
穏やかな逆光の中、桜並木を降りていくと、まだ、黒々とした幹が、早朝の色彩のグラデーションに影絵のように浮かび上がって綺麗です。
外に出ずれば、未明の 空には星の鮮やかで
目覚めぬ夜のみる夢に しばし見惚れて立ちすくむ
身を切るごとき風はなく 雲もほどけて消え失せて
晴れたる冬の小春日の その一日の思われる
道を歩めば、東雲は 海と空との境より
少し明りて、しらじらと 朝の近さを知らしめる
暁烏より、山鳩の 枝に止まりて、ただ、一羽
未だ目覚めぬ人の世を 急かすがごとく鳴き始む
やがては、淡き紫の 匂うがごとき朱仄に
東の海を打ち寄せる 波もしずかになりにける
砂を歩めば、靴底に 乾いた音の刻まれて
脈絡もなく、なお軽き きみのヒールを懐かしむ
日の出の頃は朝朗 月は、夜のうち沈みゆき
有明の中、消え残る こころにきみの偲ばれる
水平線の紫に 重なるごとき金糸雀の
色を辿れば、まだ、暗き 空にも青の溶け入りぬ
明けぬ時刻を明けるまで 朝歩けば、明けきれぬ
こころのうちを眺めつつ きみを想いているばかり