7、兎との出会い
声の主に目を向けると、ふわふわ髪のうさぎがいた。いや、正確に言うとうさぎでなく人間だが、うさぎのような天使がいた。
もう比喩でしか語れない彼女は、栗色の淡い毛を耳の左右でまとめ、透き通る柔らかそうな頬をピンクに染めている。
小さな体に薄い肩が歩く度にぴょんぴょんと跳んでいるようで、ぱっつんに揃えられた前髪が大きな瞳の上でふわふわと揺れて、可愛さを掻き立てている。
そんな彼女に目を奪われているのは、私だけではない。先ほどまで騒がしかった教室内が静まり返っているのが、その証拠だろう。
彼女以外の時間が止まってしまったかのようだ。教室の中心にいるタツヤくんに向かい、ゆっくりと歩いていく。その様子をしばらく眺めていたが、次第に止まった時間は動き出す。
ざわざわと先ほどまでとは違う騒がしさだ。彼女は隣のクラスのナツさんだということが、周囲の声から簡単に知れた。
これだけ可愛ければ、いい意味でも、悪い意味でも目立つのだろう。浮き足だった声の中には、ドス黒い内容のものまで聞こえてきた。
私の元にこれだけの声が聞こえているということは、そこまで広くもない教室の中で彼女に聞こえていないと思えない。
むしろ本人へ聞こえるように話しているのかもしれない。思わず、乱暴に席を立った。