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3、コウタロウくんの素質
「これは...さっきやった定義を踏まえて考えると...」
教科書を開いて、問題文の理解の仕方を説明する。
「あ!なるほど、じゃあこういうこと?」
成績ぶっちぎり最下位のコウタロウは思ってたより、理解が早かった。
基礎問題の解説をある程度したら、残った応用問題は大体難なく進める。
だが、暗記や概念的な内容はさっぱりだった。
「苦手なところが絞れてきたし、思ってたより早く終われそうだね。」
パッと顔を上げたコウタロウの顔はキラキラと輝き、飼い主に拾ってきたボールを見せる犬の風貌だ。
もう取れんばかりに振った尻尾まで見える気がする。
「サキネちゃんの教え方!めちゃくちゃ分かりやすい!!俺でもめっちゃ分かるようになった!!」
会話全てがハイテンションすぎて、ちょっと圧倒される。
「コウタロウくん、テンション高いね.....」
押され気味に、正直な気持ちが漏れた。
「ん~、そう??」
心の底から、不思議そうな彼は人差し指で鼻を掻いている。
「俺はいつもこんなだと思うけどなぁ」
しみじみとテキストに目線を落とし、コウタロウくんは続きの問題に取り掛かった。