訃報
自分は特別だ!!ってきっと誰もが思うもの。今はダメでもいつか…必ず…きっと…。自分は大丈夫!って…。
ダラダラと過ぎていく毎日の中で、何者にもなれない
自分に…!?…あれ…!?もしかして…自分は…普通…!?
決して特別な存在では無くて…、その他大勢の中のひとりでしかない…!?って気づいた時に、奴が現れたんだ。
「おはようございます。」MCの宮田のお辞儀に合わせて、他の出演者達も頭を下げてお辞儀した。センターに立つ宮田が、隣りに立つ女子アナウンサーの永野に、「いや〜びっくりしたね〜」っと目を見開いて言うと、永野が「そ〜ですね〜、私も朝のネットニュースを見てびっくりしました。えぇ??なんで??って!!」「ん〜本当にね〜。じゃ〜まずはこのニュースからいきます。」宮田の合図に合わせて、ニュースのナレーションがながれた。
(昨日の夕方頃、東京都豊島区にある自宅マンションの寝室で、小説家の壱八豪(38)さんが亡くなっているのが発見されました。死因は今の所明らかにはなっておらず、現在、死因の究明を急ぐと共に、事件性の有無も確認中との事です。)
「はい…」眉間にシワを寄せ険しい表情を浮かべる宮田。「ん〜…、、余りにも突然の事で…ちょっとびっくりしたんですけど…私…、壱八豪さんの作品は全て読ませてもらってて、本当にどの作品も名作でね〜…。ん〜…。なんでなんだろ〜って感じなんですけど…。これ…まだ死因も分かってないんだよね〜??」宮田が永野に確認すると、「そ〜ですね。」
永野が数回縦に首を振った。「ど〜ですか?森本さん!?」宮田はコメンテーターの、弁護士の森本に話を振った。「いや〜私もね〜壱八作品は大好きなんですけど、まだ38歳ですよね〜?本当に勿体ないし、残念な気持ちで…ん〜…」宮田は相槌を打ちながら、コメンテーターで俳優の富澤に「富澤さんど〜ですか?」っと話を振った。「なんで亡くなっちゃったのかな〜…?本当に残念ですよね〜…。私、2度ほど壱八豪原作の映画に出演させて頂いたんですけど…。ん〜…その時に何回か現場の方に来られた事があって、お話しもさせてもらったんですけど…本当に、気さくで、素敵な方だったんですけど…。ん〜…。本当に…残念です…。」宮田は、神妙な面持ちで相槌を打ちながら「それでは、現場と中継が繋がっているようです。佐古ちゃ〜ん」宮田の呼び掛けに、「はい…こちら現場の佐古です。」「佐古ちゃ〜ん、その奥に見えてる白いマンションが壱八豪先生の自宅マンションかな〜?」「はい…そ〜です。あのマンションの最上階の角部屋が壱八豪先生のお住いになっていたお部屋です。」佐古は手にしたタブレットを見ると、再び、カメラ目線で、「色々分かってきた事があるんですが…」っとタブレットを見ながら
「まず、第一発見者は担当編集者の方で、原稿を取りに壱八先生の自宅マンションに行った際、寝室で亡くなっている壱八先生を発見したとの事です。最初は眠っているのかと思ったそうなのですが、近ずいて見てみると、顔が青白く、息をしていなかったので、亡くなっているのが直ぐに分かったようです。検死の結果、死後16時間ほど経っていたようです。
死因は不明。特に目立った外傷も無く、毒物的な物も確認されなかったので、事件性の可能性は低いとの事です。」
「佐古ちゃ〜ん、なんで亡くなったのかは、全然分かんないって事!?」
「そ〜なんです。今もまだご遺体を調べているそうなのですが…、今現段階では直接的な死因ってのが分からないみたいです…。」
「もしかして…、自殺って事も…あるのかな〜…??」
「ん〜…?ど〜でしょ〜か…?遺書は見つかっていないみたいですが…。ただ、亡くなられた先生のご遺体の枕元に、原稿の束が置かれてあったようです。」
「枕元に原稿が…??それは、何か、死因と関係あるのかな?」
「どうでしょうか…?今はまだ現場検証中で、原稿の中身は明らかにはされていない状況でして…。」
「そ〜ですか…。ありがとうございました。」
「ありがとうございます。」佐古を映していた画面が、壱八豪の経歴やら作品名が書かれパネルに切り替わった。
「じゃ〜壱八豪先生の経歴を見ていきたいと思いますが…。」
宮田が指し棒を持ち、パネルの前に立った。
「デビュー作は【迷信】あ…!?えぇ…??これ出した時33歳だったんだ?…って事はデビューして5年…??もっと昔からいるような感じでしたけど…。」宮田がびっくりした表情で
ゲストコメンテーターで小説評論家の木元に振ると、
「この人ね〜デビューしてからちょ〜ど5年目なんだけれども、この5年で発表した作品がね〜28冊!!…凄くないですか?
年間5〜6冊の新作!!普通じゃ有り得ないですよ。ポンポン新作を出しているから、最初の頃に出した作品がなんだか随分と昔に思えちゃうのかも知れませんね〜。」
「あぁーなるほど。そ〜ですね〜。一読者としては早く次が読みたい読みたいって待ってる側だから、新作が出るのが待ち遠しいですけれども、実際の話し、普通に考えたら、年間で小説を5〜6冊書いて、それを5年間書き続けるって!!有り得ないですね〜!?」っとパネルに戻る。
「デビュー作、【迷信】、新人賞 映画化。228万部、
【有意義な時間】、映画化、158万部、【銃弾】、238万部…」
宮田がパネルを指しながら壱八豪の作品を読み上げる。
「そして…【昇進と傷心】ですよ!358万部これも来春公開予定です。…凄いな〜!!28作品のうち、18作品が映画化!!…はぁー…わずか5年間で…!」宮田は感心しながらパネルを見つめる…。しかし…、こうして見ると…、なんか8が多いですね〜!?」目を見開いてコメンテーター達の顔を見回す。
「そ〜思いません??全作品の最後が8万部で、5年間で書いた小説が28冊でしょ!?うち、18作品が映画化で…、」
「本当ですね〜!?」っと永野が頷きながら、「名前にも8が入ってますしね〜!?」っと両手で口を押さえながら言った。
「ん〜なんかあるのかな〜!?」宮田は顎に手を当て眉間にシワを寄せた。
「枕元に置かれてあった原稿は小説なのかな〜!?」レギュラー出演者のお笑い芸人の横山が「もし、小説ならなんか…とんでもない事になりそうですけど…」
「ん〜!?ど〜やろ〜!?まだ中身は分からないんやね〜!?」っと宮田が永野に問いかけると、「はい。ただ…、遺書ではないそうなので、やっぱり小説じゃないですか〜!?」
「だとしたら、一刻も早く出版して欲しいですね〜!!どんな小説なんだろ〜!?今から凄くワクワクしますね」富澤が興奮した面持ちで話した。共感するように頷きながら宮田が締めに入る。「いや〜でも本当に、一刻も早い死因の究明と、遺作と思われる小説?遺された原稿の中身をね、形にして出版して頂きたいと思いますけど…。いや〜…本当に残念です…。
えぇ〜心よりご冥福をお祈り申し上げます。」宮田のお辞儀に合わせるように、皆が頭を下げた。
後日、壱八豪の枕元に置かれていた最後の小説、
【1825】が発売された。初版998万部!!
歴代最高1位の販売部数となった1825は、壱八豪の私小説ではないか?と言う物議を醸し、社会現象を巻き起こす超大作となった。しかし、これがもし、私小説だとして…
事実だとするのなら…。
つづく。
幸せ。幸せってなんだ?自分が思う幸せって…なんだ?
大なり小なり幸せっていっぱいあるけれども、どれも長くは続かないもので、その場限りの幸せばかりのよ〜に思う。美味しい食事に、気持ちいいセックス、スポーツも映画も読書も昼寝もオナニーも、一時の幸せ。
常に幸せを感じながら生きられるとしたら…。
もしも…幸せの代償として…何かを失うとするなら、
幸せの為に、あなたは何を手放しますか?
幸、不幸は常に表裏一体のように思います。
リスク無くして幸せは有り得ないように思います。
難が有る事!! 有り難うとは上手くゆったものです。