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①
半エッセイといいながら、ほぼエッセイです。
気まぐれに更新します
剃り残した髭を生やしたまま、発車音を階段で浴びる。
ほどけそうな靴紐に目をやり大倉は足取りが重くなる。
「どっかの国の働き方じゃ、今日は休みだって聞いたけどな」
誰に向けたでもない言葉を発し彼は次発の特急を待つ。
就活なんて適当でも終わるよなーー。
周りが頑張っている姿を見る度に、彼は憐れみの目を向けていた。
どれだけ努力して入った会社でも、残業なり上司ガチャなりつきまとうんだと。
最低限の努力で最大の結果が出る、そんな誰もが望む状況を彼は目指した。
「周りがやるから行動するやつが一番マヌケなんだよな」
そんな信念と言うには程遠い、ひねくれた考え方で生きてきた。
「まもなく、1番線に特別快速池袋行がー」
彼はおもむろにairpodsを取り出すと、周りの雑音を遮断するかのように大音量で今一番人気のアイドルの曲を流し始める。
自分自身が最もマヌケだという可能性を感じながら。