第8話 はじめての戦闘
「へ⋯⋯ぶぇっくしょん!!⋯さ⋯寒い⋯⋯」
「情けないぞロキよ」
「ドラゴンのお前と一緒にするな⋯⋯」
俺たちは白銀龍【インドラ】のウンコ⋯⋯じゃなかった。
オリハルコンを手に入れるため、吹雪が吹き荒れる山。【ファラウス山】に降り立った。
しばらく歩くと、吹雪の勢いが増してきた。
吹雪のせいで、まともに前が見えない。
クソ⋯⋯視界が悪いな⋯⋯。
「クロエ!離れるなよ!」
⋯⋯。
返事が聞こえない。
「おい!クロエ!?」
振り返ると、クロエの姿はどこにもなかった⋯⋯。
おいぃぃい!!これ遭難するパターンじゃねぇか!
やべーよこれ⋯⋯どうすんだよ⋯⋯!
とにかくクロエを見つけねぇと!本当に凍死しちまう⋯⋯!!
「クロエーー!!どこだー!!返事しろー!」
必死に叫ぶが、やはり返事はない⋯⋯。
これはいよいよやばいな⋯⋯。
クロエは飛べるからともかく、俺は飛べない⋯⋯。遭難すれば、確実に死ぬだろう。
俺は前に進んでいるかもわからないまま前進しながら叫び続けた。
すると、前方に人影が見えた。
クロエ⋯?いや、違う⋯。
「おい!そこに居るのは誰だ!?」
目を凝らし、人影を見るが、視界が悪いせいでよく見えない。
俺は警戒しながら近づき、目を凝らす。
するとそこには、一人の男が立っていた。
そしてその足元には⋯⋯!
「クロエ!!」
クロエが倒れていたのだ。
嘘だろ!?クロエは最強のドラゴン【ヴリドラ】だぞ!?
そのクロエがやられるなんて⋯⋯。
何者なんだあいつ!!
「あぁ⋯?誰だてめぇ」
男は俺の事を見るや、殺意のこもった声音で俺に話しかけてきた。
金髪の短い髪に細い眉。耳たぶには、コインぐらいの大きさの穴が空いており、鎖の耳飾りをしている。
そして何より、圧倒的威圧感を放っていた。
「てめぇ!クロエから離れろ!!」
俺がそう言うと、男は首を傾げた。
「クロエ?誰のことだ?もしかしてこのヴリドラのことか?」
男はクロエの頭を踏みつけながら続けた。
「てめぇが誰かは知らねぇが、こいつはドラゴンだ。しかも最強と言われている漆黒龍【ヴリドラ】っつーな。そんなドラゴン生かして返すわけねぇだろ」
すると男は、手のひらから鎖を出現させ、クロエに巻き付けた。
「こいつはここで殺す」
瞬間、俺は走り出していた。
クロエは俺のパートナーだ!殺させてたまるかよ!!
「うおぉおおぉお!!!」
だが、俺はあっさりと男の鎖で拘束される。
「ぐぁっ!!な⋯⋯なんだ⋯⋯これ⋯⋯」
力が入らねぇ⋯⋯。
こいつの能力か⋯⋯?
「おいおい。てめぇこのドラゴンと仲良しごっこでもしてんじゃねぇだろうな?」
「だ⋯⋯だったら、なんだ⋯⋯」
俺は力を振り絞って口を動かす。
「ほぅ。俺の鎖に捕まって、まだ意識があるとは大したもんだな。相当な魔力だ。だが、経験不足か?それだけの力を持ちながら、動きは完全に素人だ。自分の力に酔った勘違い野郎か。宝の持ち腐れだな」
くそっ!身体の力がどんどん抜けていく⋯⋯。
このままじゃ⋯⋯クロエが⋯⋯。
やはり俺にはなんの力もないのか⋯⋯?
クロエにも言われた『宝の持ち腐れ』。
どれだけ力があっても、戦闘経験が無ければ意味がない。
俺はこの男の言う通り、自分の力に酔っていたのかもしれない⋯⋯。
だが!そんなのはクロエを助けられない理由にはならない!
見れば男は、クロエに止めを刺そうとしていた。
急がねば!クロエは死ぬ!!
俺の大切な仲間が⋯⋯死ぬ⋯⋯?
ふざけるな!!クロエは⋯⋯俺が守るんだ!!
瞬間、俺の脳内に聞き覚えのある声が響いた。
【心のレベルアップを確認しました】
心の⋯⋯レベルアップ??
なんだそれは?レベルアップにも色々種類があるのか?
そんなことを思っていると、また声が響いた。
【心がレベルアップしたことにより、『魔力相殺』が使用可能になりました。『魔力相殺』を常時使用しますか?『YES/NO』】
俺はなにがなんだか分からなかったが、縋る思いでYESと心の中で叫んだ。
すると、俺を拘束していたはずの鎖が、跡形もなく消え去った。
「なっ!?てめぇ!俺の鎖をどうやって!?」
男は驚愕の表情を浮かべている。
「よく分からねぇが、もう俺に鎖は効かねぇぞ。クロエを返してもらう」
「はっ!さっきまで何も出来なかった素人が!!」
男はまた、鎖を俺に飛ばしてきたが、俺に当たった瞬間、跡形もなく消え去る。
「なっ⋯⋯何しやがったてめぇ!!」
男は動揺した様子で後ずさりしている。
「お前がどこの誰だかは知らんが、形勢逆転だな」
「形勢逆転だと!?俺がてめぇみてぇな素人に負けるわけねぇだろうが!!」
男はそういうと、一瞬で俺の前まで間合いを詰め、拳を振るった。
「俺は接近戦の方が得意なんだよ!!」
俺は男の拳を難なく掴み、殺気を込めた声音で告げる
「奇遇だな。俺も接近戦の方が得意なんだ」
すると男は、攻撃を止められると思って無かったのか、焦りの表情に顔を歪める。
そんな男に俺は続ける。
「覚悟しろよ?俺の大切な仲間に手を出したこと。存分に後悔させてやる」
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