第5話 はじめての共同作業
クロエが訳のわからない事を言っている合間にも、ワイバーンの大群は迫ってきていた。
「クロエさん⋯⋯?俺の魔力を使うって言ってましたけど、どーするんですかね⋯⋯?」
恐る恐る聞いてみる。
クロエの目と表情で、何となく想像は出来た。
というか想像したくない!
俺は自分の予想と外れていることを願いながら、クロエを見る。
「ロキよ。儂と契りを交わしてもらう」
「はい⋯⋯??」
おいおい!またとんでも発言しやがったぞこいつ!
契りってあれだよな?よーするに、け⋯結婚⋯ってことだよな?
いやいやありえねぇだろ!相手ドラゴンだぞ!?幼女だぞ!?完璧にアウトだろーーーー!!!!
「ロキよ。そーしないとお主の魔力を使うことが出来ないのだ。あのワイバーンの大群を殲滅するためには仕方の無いことなのじゃ!!」
そーだろうけど!!
ワイバーンを殲滅するために仕方無いのはわかるけども!!
「ほ⋯他に方法はないのか?」
「ロキよ⋯。やはり儂と契りを交わすのは嫌か⋯⋯?」
てめぇあからさまに落ち込んでんじゃねぇーー!!!
そんなに俺のこと好きなの!?
そんなに俺と契りを交わしたいの!?
そんなに落ち込まれたら俺が悪者みたいじゃねぇか!
くそぅ⋯。クロエのこんなに落ち込んだ姿見てたら可哀想になってきた⋯⋯。
本当は俺の方が可哀想なのに⋯⋯。
俺のこの性格を恨むぜ⋯⋯。
「分かった分かったよ⋯。その⋯⋯契りを交わせばいいんだな?」
瞬間クロエは満面の笑みで俺に抱きついてきた。
「うむ!ロキよ!これからは夫婦じゃな!!」
こうして俺は、ドラゴンの幼女と契りを交わしてしまったのだった。
なに⋯⋯ほんの少しキスしただけだ⋯⋯はは⋯⋯。
「って呑気なことしてる場合じゃねぇ!!ワイバーンがもうすぐそこまで迫ってきてる!!」
「心配するでないロキよ!儂が一瞬で消滅させてやる!」
すると、クロエと俺は光の糸で繋がった。
「なんだ!?なんか光の糸が出てきたぞ!!」
「これは儂とロキの魔力を繋げたのだ。契りを交わしたことにより可能となった術じゃ」
なるほど。
これで俺の魔力をクロエが使うことが出来るという訳か。
「それにしても、凄まじい魔力じゃな⋯⋯。どんどん儂の中に流れ込んでくる⋯⋯。気を抜けば儂の方がロキの魔力に呑まれてしまいそうじゃ⋯⋯」
「それ大丈夫なのか!?無理するんじゃねえぞ!」
「儂を誰だと思っておる!それにロキの魔力を受け止められるのは儂だけだということが分かったからの。ふふふ」
「ふざけたこと言ってねぇで早くしろ!!」
「分かっておるわ!」
するとクロエの足元に魔法陣が浮かび上がった。
そして手のひらに魔力が込められていく。
俺は凄まじい勢いで、身体の力が抜ける感覚に襲われる。
なんだ⋯⋯?魔力がクロエに流れていってるからか?
すげぇ脱力感だ⋯⋯。
目の前のクロエに目を向けると、手のひらに黒い球が出来ていた。
それはもう、クロエの手のひらサイズの小さなものだったが、その球にすげぇ魔力が込められているのを感じる。
「ロキよ。これが儂とお主の共同作業で生み出された力。一撃でワイバーンを殲滅させれるだけの力じゃ」
ごくり⋯⋯
するとクロエは、その黒い球を上空に向けて飛ばした。
「極黒天球」
クロエがそう呟いた瞬間、上空の黒い影達は黒い球に吸い込まれるように呑み込まれていく。
そして気づけば視界には、青く綺麗な空が広がっていた。
「す⋯すげぇ⋯⋯」
「すごいのはロキの魔力量なんじゃがの」
クロエは照れくさそうに頬を掻きながら笑っていた。
まったくすげぇ奴だよ。
そんなことを思っていると、周りから歓声が聞こえてきた。
「うおおぉおおおぉぉおおお!!!!」
「すげぇ!あの大群を一撃で倒しちまった!」
「何者なんだ!?」
「生きてる⋯⋯俺生きてるぞーー!!!」
そんな様々な声が聞こえてくる中。
「ちょっと目立ちすぎたな⋯⋯」
「確かに、ちと派手にやりすぎたの⋯」
「よし!逃げるぞクロエ!」
そして俺たちは逃げた。
「受付の人!ワイバーンを殲滅してきました!冒険者登録お願いします!!」
「ロキよ⋯なぜお主はあんなに膨大な魔力を使ったのにも関わらず、そんなにピンピンしておるのだ⋯⋯」
俺たちは冒険者登録をするため、ギルドに戻ってきていた。
「うそ⋯⋯。本当にあなた達が殲滅したの⋯⋯?信じられない⋯⋯何者なの⋯⋯?」
「ん?俺はロキ!そんでこいつはクロエだ!」
「うむ。よろしく頼む」
「あ、私は冒険者ギルドの受付をしております、カルラと申します。よろしくお願いいたします」
そう自己紹介を済ませたところで、続けてカルラさんが口を開く。
「改めまして、ワイバーンの殲滅。ありがとうございました。後ほど報酬をお渡し致しますので、まずは冒険者登録をさせていただきます」
「え!?報酬なんて貰えるの!?」
「ロキよ⋯⋯。あの数のワイバーンを殲滅させたのだぞ?英雄と称えられてもおかしくない功績をして、報酬が無いわけないじゃろう⋯⋯」
「そういうことです。では早速、冒険者登録を始めましょうか」
ついに冒険者になれるのか⋯⋯。
ここから始まるんだ!俺の冒険は!!
「よろしくお願いします!!」
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