第2話 はじめての友達
しばらくすると、ヴリドラが目を覚ました。
死んでなくてよかった⋯⋯。
「起きたか!すまなかったな。俺もまだ力加減がよく分かってなくてやりすぎちまった」
「いや、構わぬ。それよりお主。やはり只者ではないな。何者なのだ?」
「さっきも言った通り、ただの村人だよ」
「ただの村人がこの儂に勝てるわけがないのだが⋯⋯」
ヴリドラはやはり納得できない様子だ。
まぁ仕方ないだろう。
世界最強と呼ばれる漆黒龍が、ただの村人に負けたんだから。
まぁホントのところただの村人じゃないんだけどね!
「ん?お主さっきよりも魔力が上がってないか?」
ヴリドラが疑問を口にするが、それを聞いた俺も頭にハテナを浮かべる。
「ん?魔力??俺って魔力なんか持ってるの?」
「はぁ!?お主自分が魔力を持っていることすら知らんのか!?」
「とゆーか今までそんなことを考えたこともなければ、魔物と戦ったのもはじめてだよ」
そう。今までずっと村で過ごしてきたんだ。
それに魔物が村を襲ったことも一度もない。
本当にヴリドラとの戦いがはじめての戦闘だったのだ。
まぁあれを戦闘と言っていいのかは別としてだが⋯⋯
「なんという⋯⋯。ん?ちょっとまて。お主また魔力が⋯⋯なんだこれは!?」
するといきなりヴリドラが慌て出した。
「ど、どうした!?」
「お主の魔力がどんどん大きくなっておる⋯⋯なんだこれは⋯⋯際限なく膨れ上がっておる⋯⋯こんな膨大な魔力⋯⋯はじめてだ⋯⋯」
「ど⋯⋯どういうことだ?俺の魔力が膨れ上がってる⋯⋯?まさかー!!」
【レベルアップ】!!
それしかない!
俺の予想が正しければ、レベルアップとは俺の身体能力や力や防御、魔力。ありとあらゆるものが上昇するスキル!
そして今、スキルを常時使用し続けていることによって、際限なく俺のレベルは上がり続けているということだ。
「こ⋯⋯こんなスキル⋯⋯最強なんてもんじゃねぇ⋯⋯」
確信は持てない。だが、可能性は大いにある。
この力があれば、冒険者になれるじゃん!俺!!
俺は呑気にそんなことを考えながら、ヴリドラに向き直る。
「ヴリドラ。お前のおかげで俺の力がなんなのか分かった気がするぜ!ありがとな!」
「ほう?ならば儂に教えてくれ。お主の力はなんなのだ!今も魔力は上がり続けているぞ!!」
俺はヴリドラに満面の笑みで親指を上げて言った
「内緒だ!」
「なっ!!」
ヴリドラは驚いたように目を丸くする
「自分の力は言いふらすもんじゃないしな!それはそうとお前これからどーすんの?」
「うむ。お主を見ていると楽しいことが起こりそうな予感がするでな。お主について行くことにする」
ヴリドラから衝撃の言葉が発せられ、一瞬思考が停止した。
え⋯?こいつ今なんて言った?ついてくる?馬鹿なのか⋯⋯?
「ははっ⋯笑えねぇ冗談だな」
「冗談ではない!儂はお主について行く!」
「馬鹿言ってんじゃねぇ!そんなデカい身体で着いてこられても困るっての!」
「ふふふ!はははははは!甘いわ!儂を誰だと思っておる!!」
そう言いながらヴリドラの身体が小さくなっていく。
「はは⋯⋯ドラゴンってそんなことも出来るんだな⋯⋯」
そこにはもうドラゴンの姿は無く、代わりに幼女の姿があった。
「え、お前女だったの!?つか、なんで子供なんだ?普通大人の姿じゃねぇの?」
「今まで男だと思っておったのか!?それにそんな事言われてもこの姿にしかなれんのだ!文句を言うな!!」
「嫌だってドラゴンの状態だと声は低いし喋り方はそんなだし⋯。でもまぁその姿なら別についてきてもいいけどさ。あんまり俺の邪魔はするなよ?」
「まったく失礼なやつだ。それと邪魔などしない!任せておれ!」
何その自信⋯⋯。
不安しかないんだけど⋯⋯。
俺はため息を吐きながらヴリドラを見る。
「とりあえず俺の目的は冒険者になる事だ!そして冒険者になるには冒険者ギルド、つまり王都の方に行かないといけない!ここからだと歩いて一ヶ月はかかるだろうから、長旅の準備をする!いいな?」
俺がこれからの事をヴリドラに説明すると、ヴリドラは何言ってんだこいつ?みたいな顔で俺を見てきた。
「何を言っておるのだ?今お主の目の前に居るのは誰だと思っておる!」
そー言われて俺も気づいた。
というかなぜか気づかなかったのか⋯⋯
「そうか!お前がドラゴンの姿で飛べば、もっと早く着けるのか!」
「ふふふ!そういう事だ!!一ヶ月だと?ふんっ!三日で着くわ!」
「三日!?すげぇな」
どれだけ早いのか⋯⋯。
てか振り落とされたりしないよね?
大丈夫だよね⋯⋯?
そんな不安をかんがえつつ、俺はヴリドラに感謝する。
「ありがとな!ヴリドラ!!っと、そう言えば俺名乗ってなかったな。ロキだ!これからよろしくな!」
「ロキか。うむ!よろしく頼む!我が友よ!」
「ははっ⋯ドラゴンと友達か。悪くねぇな!」
これから俺たちの冒険が始まるんだ!
くぅーー!楽しみだぜ!
「よし!じゃあ行くか!ヴリドラ!!」
こうして俺はヴリドラとともに王都に向かった。
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