第11話 はじめての戦闘服
オリハルコンを手に入れ、【ファラウス山】を出発して三日後。
俺たちは何事もなく王都へと帰ってきた。
辺りは既に日も落ち、街は街灯で照らされている。
「今日はもう遅いし、武具屋には明日行くか」
「そうじゃの。儂も疲れた。早くシャワーを浴びたいわ」
確かに風呂入りてぇな。つか、俺村出てから一回も風呂入ってなくね!?
服もボロボロだし⋯⋯これ完全に臭いやつだろ⋯⋯。
「クロエ、俺臭う?」
「うむ。とてつもない臭いを放っておるぞ」
最悪だ⋯⋯。
周りを見ると、明らかに俺から距離を取る人達。
これはまずいな。なにがまずいって、冒険者人生が終わるかもしれない。
「よしクロエ、風呂に行くぞ!」
ーーーーーーーーーーーーー
周りを見渡すと、白い湯気が辺り一面を支配していた。
身体の芯まで暖めてくれる浴槽は、数十人は入れるほど広い。
浴槽の端では、ドラゴンの像が口からお湯を出している。
そしてーー。
「おいクロエ。なんでお前がここに居るんだ?」
至極当然な顔をして、平然と俺の隣に座っているクロエ。
「なにを言っておるのだロキよ。儂のようなか弱き幼女が、一人で風呂に入れるわけなかろう」
そうだった⋯⋯。
こいつは周りから見ればただの幼い女の子。
一人で入ろうにも、店の人に止められる⋯⋯。
そして保護者の俺と一緒なら入れる。
まったく、面倒臭い。
「それに儂らは夫婦じゃ。なにも気にする事はなかろう?」
クロエはそう言いながら寄り添ってきた。
「いちいちくっついて来んなよ」
幼女の身体に欲情はしないが、くっついて来られるとさすがに鬱陶しい。
俺は優しくクロエを離した。
すこし不機嫌な顔が見えた気がするが、気のせいだろう。
(そろそろ出るか。)
浴槽から出て脱衣場に向かう俺に、クロエも後ろを着いてくる。
「わざわざ俺と一緒に出なくていいのに」
「何を言うか!儂は常にロキと一緒なのだ!」
また訳の分からんことを言い出したよこの子⋯⋯。
そんなことを思いながら自分の服を見ると、随分ボロボロになっていた。
「さすがにこれは⋯⋯明日新しい服買いに行くか」
「む?明日買い物に行くのか?」
「あぁ、服がもうボロボロだからな。新しい服買ってから武具屋に行こう」
そして翌朝、俺たちは服屋に来ていた。
「へぇ⋯なんかいろんな種類の服があるんだな」
村では見たことの無い服ばかりが並んでいる。
派手なものから地味なもの。
動きにくいものから動きやすいものなど、様々だ。
そこでふと目に止まった服を手に取る。
黒一色の全身タイツ。動きやすそうだ。
そしてそれに膝までの短パンと、それに合う上着を選び、なかなか冒険者っぽい格好になった。
これが俺の新しい戦闘服か。
「うん!いい感じだな」
「どこからどう見ても、駆け出し冒険者のそれにしか見えないんじゃが⋯⋯」
俺は服屋に50ゴールドを払い、店を出た。
そしていよいよ武具屋に向かう。
「おやじさん。オリハルコン採ってきたぞ!」
武具屋に着いた俺たちは、おやじさんを呼んだ。
俺の声に気づき、おやじさんはびっくりした表情を浮かべている。
「まさか⋯⋯本当に採ってきたのか?」
信じられないといった表情のおやじさんに、俺はオリハルコンを出して見せる。
「これが証拠だ」
俺は得意げな笑みを浮かべながら、おやじさんにオリハルコンを渡した。
「おぉ、確かにオリハルコンだ」
「だろ?じゃあこれで弁償したと言う事でいいか?」
「ちょっと待て」
おやじさんが動きを止める。
どーしたんだ?なにか不満でもあるってゆーのか?
そんなことを考えていると、おやじさんの口から衝撃の一言が俺の耳朶を打った。
「⋯⋯⋯足りないんだが?」
⋯⋯⋯⋯ん?今なんて?
「すまん。ちょっと聞き取れなかったんだが⋯⋯」
俺は喉を引き攣らせながら、聞き直した。
聞き間違いであってくれという願いをこめて。
だが、現実はそう甘くはなかった。
「これは確かに本物のオリハルコンだ。まさか本当に採って来れると思ってなかったから正直驚いてるよ。だが、この量じゃあお前さんが折った剣を作るには足りない」
俺は静かに、そして額に青筋を浮かべながらクロエを見た。
そして目が合う。
クロエの顔は真っ青だ。
「おいクロエ。お前どういう事だ?これだけあれば剣三本は作れるとかほざいてなかったか!?」
「あ、あれぇ⋯⋯おかしいのぅ⋯⋯そう聞いた事があったんじゃが⋯⋯」
クロエは涙目になりながら顔を引き攣らせていた。
「多分それは刀と勘違いしてるんじゃねぇか?」
するとおやじさんが説明してくれた。
簡単に説明すると、刀だと鉄に少しのオリハルコンを混ぜて作るのに対し、直剣はその全てがオリハルコンで作られているため、俺たちが採ってきた量では足りないのだ。
「おいおい⋯⋯どうすんだよこれ⋯⋯」
俺が絶望に表情を歪めていると、溜息を吐きながらおやじさんは提案してきた。
「まったくお前さんは⋯⋯。でもオリハルコンを採って来れるだけの実力があるのは分かった。なので、俺からお前さんらに依頼がある」
「依頼?」
俺が聞き返すと、ニヤッと笑いながらおやじさんは言った。
「この依頼を受けてくれるなら、このオリハルコンと合わせてチャラにしてやる」
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