第10話 はじめての大砲
「⋯⋯キ。」
なんだ⋯⋯?
「目を⋯⋯⋯ロ⋯⋯。」
なにか聞こえる⋯⋯。
誰かが俺を呼んでるのか⋯⋯?
「目を覚ますのだ!ロキ!!」
ーーー!!
「クロ⋯⋯エ?」
目を覚ますと、そこには、目に涙を浮かべているクロエの顔があった。
そして、俺が目を覚ましたことに気付いたクロエは、安堵の表情を浮かべている。
あれ⋯⋯なにか⋯忘れてるような⋯⋯。
そう思ったとき、俺の意識は覚醒し、先程の戦いを思い出す。
そうだ!アグラスは!?
俺は反射的に上体を起こして、周りを見渡す。
いない⋯⋯。どういうことだ?
俺は確か、あいつにやられて⋯⋯。
そんなことを考えていると、クロエが心配そうに、俺の顔を覗き込んできた。
「ロキよ。大丈夫か?」
なぜ俺たちが生きてて、あの野郎が居ないのかは分かんねぇけど。
とりあえずは助かったんだよな⋯⋯。
「あ、あぁ。大丈夫だ。クロエこそ大丈夫なのか?」
見たところ、クロエに目立った外傷はない。
「うむ。儂は大丈夫じゃ。それよりも、流石はロキじゃな!まさかあの鎖男を倒せるとは思っておらんかったぞ!」
違う⋯⋯。俺は負けたはずなんだ⋯。
なのにどうして俺たちは生きてるんだ?
そんな疑問が頭に浮かぶ。
あいつの殺意は本物だった。
俺が気絶してからなにかあったのか⋯⋯?
ふと俺は、自分の右手を見た。
血が固まっている。俺の血でも、クロエの血でも無い。考えられるのは、アグラスの血か?
ダメだ⋯⋯いくら考えても答えはでない。
とりあえずは助かったんだ。今はそれでいい。
「そんなことよりクロエ。お前があっさりやられるなんて、何があったんだ?」
おそらくは、あの力が抜ける鎖を使われたんだろうが、それでもクロエがあっさりと、しかも俺が気づかないうちにやられるなんて⋯⋯。
「それが覚えておらんのじゃ⋯。この山に降りたところまでは覚えておるのじゃが、そこから先の記憶が抜け落ちておるのじゃ⋯⋯」
クロエは、苦虫を噛み潰したような顔で答える。
そんな、申し訳なさそうに見つめてくるクロエの頭を、俺は優しく撫でる。
「そんな顔するな。不意打ちを喰らったんだから、仕方ねぇよ」
俺はそういうと、当初の目的を思い出した。
「そうだ!俺たち、オリハルコンを採りに来たんじゃん!白銀龍を捜さねぇと!」
その瞬間、俺たちは黒い影に覆われた。
何事かと上空を見上げると、そこには巨大なドラゴンの腹が、視界いっぱいに広がっていた。
「な⋯⋯なんじゃこりゃーー!!!!」
いくらなんでもデカすぎるだろ!!
山よりデカいじゃねぇか!!
「世界で一番大きいドラゴン。それが白銀龍【インドラ】じゃよ」
俺が驚愕の表情を浮かべて固まっていると、クロエが説明してくれた。
世界一デカいドラゴンって⋯⋯いやいやそれにしてもデカすぎだろ!!
何食ったらそこまでデカくなれるんだよ!
つか、こんな奴からどーやってオリハルコン回収すんだよ!?
「ロキよ。儂にいい考えがあると言ったであろう?」
俺がなにを考えているか、察したのだろうクロエは、未だに固まっている俺に向かって、得意げな笑みを見せた。
そしていきなり魔力を練り始めるクロエ。
「ん?クロエさん⋯⋯?何するつもりなのかな??」
「ロキよ。人間大砲というのを知っておるか?」
俺の足元に魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ⋯クロエさん!?」
「あやつの土手っ腹をぶん殴ってこい!!」
クロエの魔法が発動し、俺は勢いよく上空にぶっ飛んだ。
「クロエこの野郎ーー!!!!」
そう叫んだのも束の間。
既に目の前には、白銀龍の腹が目前まで迫っていた。
この勢いでぶつかれば死ぬって!!!!
「ああぁぁああああぁぁぁああ!!!!」
俺はそのまま為す術なく、顔面から白銀龍の腹に激突した。
とてつもない衝突音と共に、白銀龍の悲鳴が耳を打った。
ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!
頭が割れそうなほどの甲高い悲鳴は、周囲の大地を震わせた。
そして肝心の俺はというと。
「⋯⋯⋯⋯。」
白銀龍の腹にめり込んでいた。
「ロキよ!大丈夫か!?」
俺を呼ぶクロエの声が聞こえる。
大丈夫なわけねぇだろが!!と心の中で叫びながら、何とか脱出した。
危うく窒息するところだった⋯⋯。
俺は、片手で白銀龍の腹を掴み、宙ぶらりん状態でクロエに叫ぶ。
「何しやがんだ!!危うく死ぬところだったぞ!!」
「心配せずとも、お主はそれぐらいでは死なぬわ」
なにを根拠にそんなこと言ってんだ!このロリババァ!
と、そんなことより。
「それで?出たか?」
俺が聞くと、満面の笑みでグッドポーズをしているロリババァ。
「完璧じゃ!!」
いろいろアクシデントはあったものの、無事、目的のオリハルコンを手に入れる事ができた。
俺は、白銀龍から地上に降りて、手に入れたオリハルコンを見た。
「ちっさ!!あんなデカいドラゴンからこんなちっこいオリハルコンしか出ねぇのか!?」
それは、手のひらに収まるほど小さかった。
「ロキよ。オリハルコンの価値が高いのは、白銀龍の体内でしか精製されない事もそうじゃが、採れる量の少なさも関係しておるのじゃよ」
「なるほどな。でもこんだけで足りるのか?」
どーみても足りなさそうだが⋯⋯。
「十分過ぎるほどじゃよ。これだけあれば、オリハルコンの剣なら三本は作れるじゃろう」
えぇ!?こんな少しのオリハルコンで剣三本!?
俺が思っているより、剣を作るのに必要な鉱石は少なくていいみたいだな。
「さてと。じゃあ、帰るか!」
俺はクロエの背中に乗り、王都へと向かった。
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