第1話 はじめてのスキル
何ということも無い平凡な人生。
この世界には魔物が蔓延り、冒険者は魔物を狩りながら生計をたて、勇者パーティは魔王を倒すために奮闘している。
そんな世界で何をする訳でもなく、村でのんびりと暮らしている俺の名前はロキ。なんの取り柄もないただの村人だ。
だがそんななんの取り柄もない俺にも、遂に何かしらの取り柄を手に入れる日が来たのだ。
そう、今日はスキルを授かる日なのだ!
この世界は、十五の歳に天からスキルを授けて貰える。
どんなスキルになるかはランダムなのでわからない。
だが、どんなスキルであっても夢があるとは思わないか!?
だってこんな俺にも取り柄ができるんだぜ!
俺は心を踊らせながら、スキルを授けてもらえる教会に足を踏み入れた。
中には神父が立っていた。
他には誰もいない。
どうやら今日は俺だけのようだ。
「スキルを授かりに来ました!お願いします!」
「うむ、ではこちらに来なさい」
はぁーー俺すげぇスキル手に入れたら冒険者になるのが夢なんだよなぁー。
俺は神父の目の前で止まる。
すると神父は水晶に手をかざし、水晶が光り始める。
「あなたにスキルを授けます」
ごくり⋯⋯。
「あなたのスキルは⋯⋯【レベルアップ】です」
「⋯⋯ん?」
レベルアップ⋯⋯?聞いたことないスキルだ。
「あのーすいません。ちなみにこの【レベルアップ】というスキルはどんなスキルなんでしょう?」
「すいません。私も聞いたことがありませんね」
「そ⋯そうですか⋯⋯」
俺は神父にお礼を言うと協会を出て、誰もいない草原に向かう。
「【レベルアップ】⋯⋯どんなスキルなんだ?」
聞いたことあるスキルなんかは【攻撃力アップ】や【防御力アップ】という、いかにもなスキルなのに。
【レベルアップ】っていうとレベルが上がるって言う解釈でいいのか⋯⋯?
でもそもそもレベルってなんだよ⋯⋯!なにが上がるのかさっぱり分からねぇ⋯⋯。
まぁでも、使えば分かるか?
俺は誰もいない草原で【レベルアップ】を使ってみることにした。
「よっし!いくぞー!【レベルアップ】!!」
すると脳内で声が聞こえた。
【レベルが上がりました】
⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
「だからなんだよレベルって!!」
するとまたしても脳内に声が響いた。
【レベルアップを常時使用し続けますか?『YES/NO』】
ん?どーゆう事だ?まったくわからん!
だが、常時使用し続けてくれるのなら、なんかしらんがやってて損はないだろう。
俺は脳内で『YES』と答えた。
するとなぜか急に身体が軽くなった気がする。
だが別段なにかが起きるわけでもなかった。
「はぁ⋯⋯なんだよはずれスキルかよ⋯⋯」
ガッカリだ⋯⋯。
これで俺の冒険者への夢も終わったな。
そんなことを考えていたとき、いきなり空からとてつもない咆哮が鳴り響いた。
「なっなんだ!?」
空を見上げると、漆黒の鱗を身にまとったドラゴンが上空を飛んでいた。
そして何故か俺の事を見つけるやいなや、俺の目の前に降りてきた。
に⋯⋯にげなきゃ⋯⋯!
そう思うが身体が動かない。
身体全体が震えている。
やばいやばいやばいやばいやばいーーー!!
『グオオォオオォオオオオォオオオ!!!!!』
ドラゴンの咆哮が鳴り響く。そしてーーー!
黒い炎の球が俺の目前に迫っていた。
ーーーーあ⋯⋯俺死んだわ⋯⋯。
瞬間俺は黒炎に包まれる。
だが⋯⋯。
「あれ⋯⋯?熱くない⋯⋯?」
何故かわからないが、熱くもなければ痛くもない。
とゆーかダメージを受けてない。
「まさか⋯【レベルアップ】のおかげか?」
ドラゴンは自分の攻撃が効かなかったことに驚いている様子だ。
そんなドラゴンを見て、俺は口端を上げる。
「はっはー!!ドラゴンよ!俺に喧嘩を売るとはいい度胸だ!だがお前の攻撃は俺には効かん!すぐに立ち去るなら許してやってもいいが、どーする?」
俺はうざいくらいの上から目線でドラゴンを挑発した。
さっきまで震えて動けなかったのは内緒だ。
ドラゴンは動かない。
んーどうしたものか。確かドラゴンは頭が良かったはずだから、言葉が通じるはずなんだけどなぁ。
「お主。只者ではないな。何者だ」
ドラゴンが、喋った⋯⋯。
いや言葉が通じるとは思ってたけど、喋れるとは思わなかった⋯⋯。
「喋れるんなら話は早いな!俺は近くの村の村人だ!
殺されたくなければさっさと立ち去れ!」
とか言いながら別に殺すつもりなどないのだが⋯
「む⋯⋯村人だとっ!?馬鹿な!村人ごときがこの漆黒龍【ヴリドラ】様にかなうわけがなかろうが!!」
は⋯⋯!?ヴリドラっつーと最強と呼ばれるドラゴンじゃねーか!!
そんな強いやつに俺勝っちゃったの⋯⋯?
もしかして俺のスキルって最強なんじゃね?
そんなことを考えながら一人ニヤニヤしていると、ヴリドラは痺れを切らしたのか怒鳴りだした。
「聞いておるのか!!こんな屈辱はない!答えぬのなら儂のやり方で見定めてやる!!」
そういうとヴリドラはまたしてもいきなり襲いかかってきた。
「すこし黙ってなさい!!」
そう言って俺がヴリドラの頭を小突くと、激しい地割れの音とともに、ヴリドラの頭は地面に埋まった。
あの⋯⋯。俺の力は一体どうなっているのでしょうか⋯⋯?
俺は自分の力に困惑しつつ、このまま放っておけないので、ヴリドラが起きるまで待つことにした。
これからは力加減を考えないとな⋯⋯。
そんなことを考えながら、漆黒のドラゴン【ヴリドラ】の隣に座ってすっかり暗くなった夜空を眺めた。
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