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case.8 破滅の願い

よ!


『いつもそうだ。“魔王”はいつだって、力を求めているんだ』




■ □ ■





「ウアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」




 何が、起きた?



 アイツらは何をした?




 俺はもう一度、『それ』を見返した。



 しかし。



「なぁ……寝てるんだよな……? 早く起きろよ……なぁ!」



 『それ』は動く気配が無かった。



 さっきまで、無邪気に笑って、俺と歩いていたのに。



 絶対救うって、絶対守るって決めたのに。



 なぜ俺は動けなかった?



 いや、どうして動かなかった?



 まだ、怖いというのか?



 魔王になると決めたのに。



 それなのに、俺は躊躇ったのか?



 それともまた戦い方が解らないとか言い訳をするのか?



 

 ―――そもそも俺は一体どこで選択を間違えた?





 徐々に視界が暗くなっていく。



 俺は、どうすればいいんだ。




「寝てますよ、それ。まぁ、絶対に起きないですけどねぇ!? だって『永眠』ですからァ!」


「―――ッ……! 黙れッ!」




 自分でも追いきれないほどのスピードで勇斗ゴミに近づき、そして手をかざす。


 “魔刃”の構えだ。



 しかし、撃たない。




「あれれ、殺さないんですか? それとも……“殺せない”んですかァ?」


「ッ……!」




 まただ、またこの感じだ。



 何故、撃てない。



 何故躊躇う。



 ゴミは掃除するだけじゃないか。



 まさか勇斗たちこいつらがゴミじゃないとでも言うのか?




「撃たないなら、こちらから行きますよ!? “一之剣いちのつるぎ―――剣閃けんせん”!」



 奴は俺が動かないのをいい事に攻撃を仕掛けてきた。



 しかし、何故だろう。



 その攻撃は、まるで止まっているかのように、遅く、とても遅く見えた。



(攻撃を防ぐ手段なら、ある)




 俺は冷静に考える。


 そう。

 スキル『守護ガーディアン』。消費SPは100。その効果は、

『対象に物理防壁・魔力防壁を同時展開する』

というもの。



 俺は迷わずSPを支払ってそれを発動した。



「『守護ガーディアン』」



▶スキル『守護ガーディアン』を発動します。



 刹那、俺の目の前に透明な防壁が現れてガキン、という斬撃音のみが響いた。

 勇斗ゴミの放った攻撃は、俺のスキルに阻まれたのだ。



「―――チッ、お前らも殺れ!」



 今度は、後ろに居たミミゴミ真奈美ゴミも攻撃をしてきた。



「燃え尽きなさいッ! “火炎フレイム”!」


「死ん、で。“屍鬼召喚サモングール”」



 後方からは広範囲の炎による攻撃魔法と、紫の魔法陣から現れた3体のゾンビによる攻撃。


 さらに、



「“二之剣にのつるぎ―――剣華けんか”」



 正面からは勇斗ゴミの遅い攻撃。


 この程度の攻撃。

 見きれない訳が無い。




「―――遅いんだよ。“魔刃”」



 全方位に魔刃を放ち、攻撃の全てを切り裂いた。



「チッ、厄介だな!」


「本当ね」


「厄、介」



 違う……。違う……!



 足りない。もっと……もっとだ……!



 どうすれば満たされる?



 この胸に空いた大きな穴はどうすれば埋められるんだ?




『殺セ』



 殺す?



『殺セ。殺セ。血ダ。血ダ!』



 煩い。黙れ!



『殺セ。怒リニ、我ニ、身ヲ任セロ。ゴミハ、排除スルノミ』



 ゴミは……排除……。



『ソウダ。オマエハ言ッタ。魔族ニ仇ナス敵ハ、ゴミダト。ゴミハ排除スルベキダ、ト』



 そうだ……。俺は魔王だ。



 ―――魔族に仇なす敵は、排除する。



 この際、俺の信念とか、そんなものはどうでもいい。



 こいつらは……





『「殺ス!」』




 この時の俺に、理性なども言う言葉はもう存在していなかった。

 概念から、消えていたのだ。



「雰囲気が、変わった……? おいお前ら、気をつけろ……!」



「―――“破滅の願い”」




 俺は、震える声でその言葉を唱えた。


 “破滅の願い”。その効果は、



『自らが叶えたい願いを、それに見合った代償を支払うと共に叶える』



 というもの。


 一度使えば、しばらくは使えないため、一種の最後の切り札のような物だったのだが、この際どうでもいい。



 こいつらはこの技を使うのに見合う程の事をしでかしたんだ。

 



 ―――俺が望むのはただ一つ。




「ルイン……ッ! もう一度……もう一度俺のもとに来てくれッ!」


「ハッ、そんな戯れ言を言っている暇があったら……」



 そう言う勇斗の目の前に現れたのは、一つの魔法陣。



「ま……まさか……?」



 魔法陣から、角の生えた頭が見える。



「嘘、だろ? なぁ、お前ら! あいつは確実に殺したんだよなァ!?」


「ええ、殺したはずよ!」


「確か、に、死ん、だ」




 会話の中、徐々にその全貌が明らかになる。


 体……足……と徐々にその全貌が明らかになり、そして、光と共に、『それ』は帰ってきた。




「なら何故! 何故アイツがここに居る!?」


「あぁ……あぁ! ―――ルイン……ッ!」



 その少女の名は、ルイン。




 ―――ルインが、帰ってきたのだ。



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