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case.7 転生勇者

よ!


『簡単に人を信用するな。お前はもう、人に信用されることなど有り得ないのだから。』






■ □ ■




「さて、そろそろ向かうぞ」


「はい、主様! お供します!」



 休憩を終え、早速周辺の情報を収集しに行こうとする俺、こと魔王ルミナスと眷属のルイン。



「それで、主様。どちらへ向かうのです?」



 歩き始めてすぐに、そうルインに聞かれた。



「確かに、全く考えてなかったな。……ふむ、どうするか。何かいい案はあるか?」


「そう、ですね……。私も久々に地上に出てきたので、あまり詳しい地理情報は分からないのですが、とりあえず高い所からこの辺りを見下ろしてみる、というのはどうでしょうか?」


「なるほど、良い案だ。早速高い所に向かうとしよう。この辺りだと……」



 そう言って、俺は辺りを見回す。



「あれだな」



 近場にあった小山を指差し、ルインに示す。



「そうですね。……ですが、あそこまで行くのに結構かかる気が……」


「う、うん。確かにな」



 実際、さっき指差した山まで行くのに、2時間くらいかかりそうな距離はある。

 直感だが。


 さらにそこから山頂まで登りきるとなると―――



(半日くらいかかってしまうだろうか……)



「ど、どうするか……」



 すると、悩みに悩んで、途方に暮れているところに、ちょうど人が通りかかった。


 反対側から歩いてくる3人のパーティー。


 腰や背中に、剣や杖を持っていることから、恐らくこのパーティーはこの世界の冒険者とかそういう類のやつだろう。



(安易に声をかけるのもなぁ。前回それで襲われた訳だし……)



 しかし、そんな心配とは裏腹に、今回は向こう側から声をかけてきた。



「あの、お困りですか? もしよけれ……ば―――」


「ねぇちょっと勇斗! あの子……」


「魔族です、ね」



(マズイ、奴らルインを見て一気に敵意を現しやがった!)



 各々武器に手をかけるが、それを見て黙る俺では無い。


 それに、ルインが俺の服の背中の部分をつまんで、不安そうに震えている。



(俺が、守るんだ)



「あの、すいません。武器を取り出すのはやめていただけますか? 少し事情がありまして……」


「事情、ですか?」



 意外にもあっさり話を聞いてくれそうな態度に変わる、相手方の唯一の男性。



「バッカ! バカ勇斗! こういうのは情に訴えかけてきて、油断させたところで後ろからブスリのコースなのよ!」


「え、でもこういうのギャルゲとかじゃ、絶対尊みが深いやつだと思うんだけど」


「ここは日本じゃないの! ゲームじゃないのよ! いい加減現実見なさい!」



 強気な女の子に叱られて、シュンとしてしまう青年。


 てか、いや、そんなことよりも、だ。



(今なんて言った……? ギャルゲ? 日本? ゲーム? まさかとは思うが、もしかしなくてもこいつら、俺と同じ“日本人”なのか……?!)



 そして、そんな考えは、彼らの次の言葉で確信へと変わることになる。



「あのねぇ、この世界に来たとき言われたしょ!? 魔王を倒して平和な世の中にすることが私達“転生勇者”の使命なんだ〜って!」


「へいへい〜、わっかりましたよ〜だ。どいつもこいつも転生勇者転生勇者ってうるせぇな……」



(やっぱり……!“転生勇者”、まるで俺と正反対だが、こいつらは確実に日本人だ……!)



 そして俺の確信をより強い物にする為に、俺は意を決してその3人に聞いてみた。



「あ、つかぬ事をお聞きしますが、あなた方、もしかしなくても日本人……ですよね?」



 俺の問いを聞いて、目の前に居る青年の顔は驚愕に満ちた。



「まっ、まさか貴方も……?」


「ええ、貴方達とは少し違うようですが……」


「違う……とは?」


「私は『Scarlet Online』というゲームをプレイしようとした矢先に、意識を失いまして……目が覚めたらこの世界にいた訳です」


「なるほど……。あ、僕はたちばな 勇斗ゆうと。一応、日本人で、向こうで事故にあって死んで、それでこの世界に転生してきました。この世界では勇斗って名前でやってます」



 俺と橘さんは握手を交わし、そしてそのまま流れるように残った2人も話し始める。



「はぁ……私は水瀬みなせ 美怜みれい。勇斗とは幼馴染なんだけど、同じ事故で、偶然、ぐーーーぜんにも一緒に死んでこの世界に転生して来たわ。この世界ではミミって名乗ってるわ」



 やけに“偶然”を強調してくる少女、美怜、こと、ミミ。

 彼女はまだ俺たちの事を信用していないのか、溜め息混じり名乗りを上げた。


 そして最後に、



「私は、たき 真奈美まなみ。2人とはこの世界に、来てから初めて、知り合った。あ、の、私は、その、父さまに、殺されて、それで、この世界に、来た。真奈美、って、呼んで」



 今度はやけに重い過去を持っている、特徴的な話し方の少女、真奈美。



 3人の自己紹介を聞いた俺はそのお返しに名乗る。

 


「私は、ルミナス。日本人としての名前は三雲 翔一。それでこの娘はルイン。お察しの通りこの娘は魔族ですが、調べたところ“魔障病”という病気にかかっておりまして。元は普通の人間だったのです」



 自分でも笑えるほどに嘘がスラスラと出てくる。



 ―――まあ、嘘も方便と言うしな。




▶スキル『ライ』を手に入れました。




 と、そんな事を考えた時、ステータスメッセージが更新された。


 ……まただ。原理は分からないが、またスキルが手に入った。



(使えるものならありがたく使わせてもらおう)



「魔障病、ですか……。そんな病気、この世界に来てから一度も聞いたこと無いですが……」


「ええ、どうにも最近発見された特殊な病気らしくて。一度かかってしまうと、たちまちその姿を魔族の物へと変化させてしまうのです」


「すごい恐ろしい病気じゃない、それ」


「はい。そうなんですよ。ですからこの娘を救う為に、今こうして旅をしている最中でして」


「あぁ……そうでしたか。変な疑いをかけてすいません」



 勇斗とミミの誤解は解けたようだ。


 どうにか誤魔化せて良かった。



(それにしても、この『ライ』ってスキル、どんな効果なんだ?)


 そう思い、ステータスから説明欄を見てみる。そこにはこう書かれていた。



・『ライ』……どんな状況下でも嘘を自由自在に操り、全く疑わせずに信じ込ませる。

消費SP:0 常時発動可能



 と。


 しかし何故このスキルを獲得出来たのか。

 前回もそうだ。『憤怒レイジ』と『守護ガーディアン』も何故獲得出来たのか。


 全く分からない。




「それで、今は何処へ向かっているのですか?」



 勇斗がそう尋ねてきた。


 俺はそれに正直に答える。



「えっと、今はこの辺りの地形が全く分からないので、取り敢えずあそこの山に登ってこの辺りを見渡してみようと思いまして」


「あそこまで行くんですか!? 流石に遠いですよ。僕たちの地図を差し上げますから、それでどうにかなりませんか?」


「いいんですか?」


「はい、構いませんよ」



 そう言いながら、勇斗は折りたたまれた地図を差し出す。


 俺はそれを受け取りながら、言った。



「どうもありがとうございます。この恩は絶対忘れません」


「いえいえ、どうぞお気になさらないで下さい。それに……」


「それに……?」



 神妙な面持ちで、含んだような言い方をする勇斗であったが、すぐににこやかな笑顔に戻り、



「いえ、何でもないです!」



 と誤魔化したのだった。


 そんな彼の様子に、俺は少し考えてしまう。



(まあ、“何か”あるだろうな……)



 その何かが、俺にはまだ分からないのだが。

 「それに……」なんて濁しておいて、何も無いわけが無いからな。

 多少の警戒はしておいた方がいいだろうか。



 ルインの方を振り返ると、少し離れた所でミミと真奈美と3人で楽しそうに話していた。


 しかし、何故かその様子に違和感を覚えた。



(ミミも真奈美も、何であんなに目が暗いんだ?)



 楽しそうな会話をしているのに、顔が全然笑ってない。


 俺は何か嫌な雰囲気がして、ルインを連れてさっさと退散しようとしたのだが。



「―――おっと、何処へ行くんです? まだ話は終わってませんよ」



 勇斗が、俺の腕をガッチリ掴んで離さない。



「何を、している?」


「いえいえ、何も」


「それなら、その手をどけてもらおうか」


「それは無理です」


「何故だ」


「だって、“魔王”の手を離して逃がす“勇者”が居ると思いますか? ねぇ、魔王様?」


「ッ!?」



 何故だ……。何故バレていた? いや、それよりも、『いつから』バレていた……?



「何故……わかった?」


「そんなの簡単ですよぉ! だって勇者ぼくには『魔王探査』のスキルがあるんですから」


「チッ……図ったな! ―――俺を、殺すのか?」


「ええ、殺しますよ」


「ああそうかよ。なら全力で抵抗させてもらうぞ……ッ!」




(あの、魔法の刃みたいなやつ……確か“魔刃”だったか? あれは多分、意識して発動すれば使えるはずだよな)



 そう思い、掴まれてない方の腕を勇斗にかざす。


 だが……



「へぇ? いいんですかそんな態度で」


「どういう意味だ……!」


「こういう意味ですよ!」




「―――きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」




 刹那、森に響く叫び声。



(この声は……ルイン!)



 すぐさま振り返ると、ミミと真奈美に捕まっているルインの姿が、そこにはあった。



「おい…………! 何を……している!!」


「やだなぁ。俺たちはただ人間様に逆らう愚かな魔族ゴミ共を処理しているだけじゃないですかぁ?!」


「ゴミ……だと!」


「その通りでぇす! ですので、ゴミは処理しないとですよねぇ!?」



 そして勇斗は、ミミと真奈美の方に目配せをした。



「おい、待て、やめろ! 何を……している!?」



 ミミと、真奈美は勇斗からの視線を受けて、


 自分が持っていた剣を引き抜き、


 そして。



「殺れ」



 そんな、無慈悲な命令で、




「待て、待て! おい! やめろォオオオオ!」



 静かにその刃を振り下ろした。



「主……さ…………ま……」



 今にも消えそうな声で、ルインは言った。


 背中には、一本の剣が刺さっていた。




 そして、彼女は泣きながらこちらを見つめ、



 やがてルインは脱力したように、倒れた。



「ブッ……クク! 死にましたねぇ……!」



 勇斗の……いや。


 勇斗ゴミの言った、その言葉で、俺は理性を失った。



「ウアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア!」



▶スキル『転生リスタート』を手に入れました。

▶技能『破滅の願い』を手に入れました。



▶スキル『支配ルール』が、『死配デストゥルー』へと進化しました。

▶スキル『憤怒レイジ』が、『憤激焉怒エンドレイジ』へと進化しました。

 続けて自動発動します。






◆◇◆



【ルミナス】


性別 男

種族 半神ミディム

職業 魔王

レベル 2

スキル 『支配ルール』→『死配デストゥルー』←New!

    『召喚サモン

    『守護ガーディアン

    『憤怒レイジ』→『憤激焉怒エンドレイジ』←New!

    『転生リスタート』←New!

    『ライ』←New!

技能 魔刃

   破滅の願い

持ち物 無し

称号 『魔を突き進む者』


支配 ・繝ォ繧、繝ウ?


   ・蒼玉竜サファイア

   ・獣人


全ステータス ―――現在測定不能

スキルポイント 400

ブクマや高評価をお願いしますぅ!

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