case.6 支配
よ!
何だかしんみりした雰囲気になってきたところで、そろそろ再出発しようと思い、俺たちは歩き始めた。
「それにしても、これだけ広いとどこをどう進めばいいのか分からないですね」
「ああ、確かにな。どこを見ても木、木、木だもんな……」
これだけ広いと、今自分がどこを歩いているのか分からなくなりそうだな。
「突然、クマや猪なんかに襲われちゃいそうですね」
「そうだな、死角を狙われて―――」
そこまで言った時。
事件は起こった。
「―――ヒィッ! ま、魔族だ! 魔族が出たぞぉぉ! クソ、クソが! 死ね! 死ね! 魔族なんて死んじまえ!」
「―――キャァァァッ!」
「……ッ!?」
突然、誰かの声が森に響いたと思った矢先、ルインの叫び声が直後に響いた。
「どうし…………ルイン……? おい、ルインッ!?」
「ガハッ……ル、ルミナス様……! お逃げ下さい……!」
「駄目だッ! お前を置いてなんか行けない!」
ルインを見ると、その小さな身体には何本もの矢が刺さっていた。
(一体、誰がこんな……!)
クソ……どうしてルインが……!
許せない……何でこんな酷いことを……ッ!
「―――待ってろ、すぐ、片付ける」
「ルミナス、様……?」
今にも消えそうな声でルインは呟く。
そんなルインを背中に、俺は木々に向かって呼びかけた。
「―――おい、そこに居るんだろ。出てこいよ」
近くの木に向かって俺は話しかける。
今の俺は全ての神経が研ぎ澄まされている。
何処に、何があるか、全神経が俺に教えてくれている。
―――俺の怒りは、もう限界を超えていた。
▶スキル『憤怒』を取得しました。
「な、何だよ! 魔族なんだろ! そうなんだろ!? ならいいじゃねえか! 死んじまえ!」
木から、一人の人間……いや、獣人か?……が現れた。
そいつは言った、「魔族は死ね」と。
やはりこの世界では、魔族は虐げられているのだ。
今ので、魔族がそういう運命にいるのだと、確信が持てた。
これで、守らないわけにはいかなくなったな。
―――魔族も、ルインも、絶対に守るんだ。
「それを傷つける奴は、誰であろうと許さない……!」
▶スキル『守護』を手に入れました。
「なあ、お前、死ぬ覚悟は出来てるか? 出来てるよな……ッ? だって俺の大事な眷属を攻撃したんだから」
「は、はぁ!? お前何言ってんだよ! 魔族は俺たち獣人を何人も殺して来たんだ! だから魔族なら殺す! 何かおかしいかよ!」
「おかしい。何故ルインを攻撃する必要がある。ルインは関係無いだろう」
「いいやその女は魔族だ! だったら死んで償うべきだ!」
「煩い」
俺は無意識の内に、獣人に向かって手をかざしていた。
▶“魔刃”を発動しました。
「ヒイッ! 俺の、俺の腕がアァァ!」
無意識に発動した俺の技が、獣人の右腕を切り飛ばした。
「もう一回いけるか?」
再び手をかざす。
▶“魔刃”を発動しました。
「グァァァッ! 俺の、俺の左腕がァァァァ!」
原理は分からないが、また技が発動したみたいだ。
その技が、獣人のもう片方の腕も切り飛ばす。
「俺は蹂躙が嫌いなんだ」
「ハァッ!? ハアッ!? おい、何を言っているんだお前は! 今やっていることは蹂躙そのものじゃないか!」
「ハァ? まあ、確かに蹂躙と言えば蹂躙かもしれないが、まあこれは魔族に仇なす敵を……いや、ゴミを排除しているだけだからな? 勘違いするなよ、お前は、ゴミだ。お前の失敗はルインを無差別に攻撃したことだ」
「なっ、何で、何でだよ!」
「わかった。お前には利用価値がある。そうだな、腕が治ればいいんだが」
▶『守護』を発動しました。
すると何故か切り落とされた両腕が、浮き上がり、そのまま獣人の切断された部分へくっついた。
「へっ、はっ、へっ?」
「治ったか、良かったな“ゴミ”」
腹の底から響くような重低音の声で圧をかける。
「ヒイッ……!」
俺は一歩ずつ獣人に歩み寄る。
「『支配』だ」
▶『支配』を発動しました。
「グァァァァァッ!」
「お前はこれより、俺の傀儡となるのだ。いいか、お前はこれからお前の住むところに帰り、俺の存在を色んな人に伝えろ。俺は、魔王だ。魔王ルミナス。分かったか? いいな?」
「は、はい……」
そう応える獣人の瞳にはもう、光は無かった。
俺の命令を受けた獣人はトボトボと歩いて帰っていく。
「ルイン……大丈夫か……?」
「は、はい。何とか……。ですがルミナス様……その……」
プルプルと震えながらこちらを見ているルイン。
やっぱり、怖かったか……。
自分でも分からないくらい、言葉がスラスラ出てきて、怒りも最高潮で、まるで自分で自分を制御出来ないような……。
そんな感覚だった。
「やっぱり……怖かったよな……?」
「いえ、その……」
ルインは大きく目を見開いて、言った。
「カッコよかった……です!」
「えっ?」
「ですから、カッコよかったです! まるで魔王様みたいでした!」
「そ、そうか? なら良かった。フハハ! 良かった! 良かった……」
ホッと溜め息をつき、早速ルインの負った傷の手当を始める。
「さっきみたいに治らないか……?」
▶『守護』を発動しました。
すると突然、ルインの背中に受けた矢の傷がみるみるうちに治っていく。
「わぁ……すごい! 治ってます! 傷が治っていきます!」
「えっ……? 俺何かしたか?」
「スキル……じゃないですか?」
「スキル……? あっ、何だこれ」
俺はステータスを見てみると、全く気づかない内にステータスメッセージが溜まっていた。
サクッと読むと、スキル『憤怒』、『守護』というのを獲得していて、何か『魔刃』とかいう技を使っていた。
何で獲得出来たんだろうか。
まあ、細かいことは気にしても仕方ない、か。
「ルイン、よくわからないが、やっぱりスキルだったようだ」
「やっぱり! 良かったですね!」
「ああ、じゃあ少し休んでから、もう一度情報収集に向かうとしようか」
「はい!」
俺たちは近くに“たまたま”あった切り株に腰掛け、休むことにした。
▶【称号】魔を突き進む者 を獲得しました。
▶レベルが1上がりました。
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【ルミナス】
性別 男
種族 半神
職業 魔王
レベル 2
スキル:『支配』
:『召喚』
:『憤怒』←New!
:『守護』←New!
技:魔刃
持ち物:無し
称号:『魔を突き進む者』
支配・ルイン:夢婬魔
・蒼玉竜サファイア
・獣人
攻撃力:100→130
防御力:80→110
魔力:320→420
スキルポイント:400
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