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異世界ゾンビ太郎  作者: 一生三流
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第2話 『あの世で会ったのは閻魔大王?』

 ――――白い空間に居た。

いつ目が覚めたのか、いつからそこにいたのかも分からない。奥に広がる白い空間は果てが無いように見えるし、すぐそこが行き止まりなのかもしれない。

時の感覚が無く、まるで何年何十年とここで何かを待っているかのような感覚だ。


 「こんにちは、神島太郎君」


突然静寂は破られ、知らない男の声が聞こえてきた。


 「もしかして、長い間喋ってなかったせいで言葉を忘れてしまったかい?」


 「……いや、大丈夫だ、話せる」


何年ぶりかの声を発する。長い間声を出していなかったせいか、自分の声すら懐かしく感じる。


 「そうかい、それは良かったよ。…それで、君が今ここに居る理由はわかるかい?」


男の問いに記憶を探って必死に思い出す。


 「……たしか、俺は横断歩道でトラックに……、そうか、死んだのか…俺…」


 「その通り!君は死んでここに来たわけだ」


 「……なんか嬉しそうにしてんのが腹立つなお前」


テンション高めの返答に軽くイラっとする。


 「はははは!まぁ君達人間は死んでくれないとここへは来てくれないからねー、ゆるしてちょんまげー、なんつってww」


フランクすぎる男の言葉に怒りを越して、半ば呆れてきた。


 「…ってーことはあんたはもしかして神様なのか?」


 「違うよー、僕は“管理者”さ」


 「…管理者?死んだ人間の魂を管理してる奴か何かか?」


 「おおー!物分かりが良いねー!その通りだよー!僕は全宇宙の霊魂を統括しているお偉いさんなのだよ!」


えっへん!と腰に手を当てて、鼻を伸ばしている姿が想像できる。


 「死んだ人間は基本的に天国に行くか地獄行き、その後に輪廻転生が行われて、ランダムでいたる世界の赤子として再び生を授かるんだよ。…で、僕はその天国行き地獄行きを決める閻魔大王様ってわけ!」


ドヤぁ!といった声で自慢げに話を進める男。


 「…はぁー、でもねぇ、最近不測の事態が起きててねー」


突然溜息をして落ち込みだした。


 「君達の地球は順調に毎日死人が出てくれて助かっているけど、ある世界で全く死人が出なくなってしまったんだー…」


人の死が多くて助かるってのは不謹慎な事だが、それが仕事だからそういう感覚になるのだろうか、一人間としては理解しかねるが。


 「別に死人が少ないって良いことじゃねーか、お前の仕事も減って楽になってんだろ?」


 「良くない!!仕事は多い方が良いに決まっている!!あぁー、もっと仕事したい!もっともっと忙しくなってほしい!!」


こいつの考えは日本に住んでいた俺とは感覚が180度違うな…。

 

 「…あぁーあと、僕は“死人が少ない”と言ったのではなく“死人が出ない”と言ったんだよ」

 

 「死人がでない?…なんだそりゃ?」


おかしな話だ、いくら治安が良くて、殺人や事故が起きなくても寿命や病気で人は必ず死ぬ。

不老不死の薬でも開発したのか??


 「まぁ正確には一日十人くらいは死んでるんだけどねー、僕からしたらそんなのは0に等しいね。…全く!」


 「医療が発達して寿命が延びてんじゃねーの?だいたいそんな事俺に愚痴られてもしらねーよ」


 「良いじゃないか!たまには管理者だって愚痴りたくなるもんさ!!」


プンスカとへそを曲げて怒り出す閻魔大王様。…威厳もへったくれもあったもんじゃねーなコイツ。


 「…で、俺に何をしろと?」


 「おおー!君は本当に物分かりが良くて良いね!!君を選んだ甲斐があるってもんだよ!」


喜怒哀楽の感情がジェットコースターみたいな奴だな。


 「君には是非、記憶と肉体を引き継いだままその世界に行ってもらい、調査を依頼したいのだよー!」


 「……はぁ、だと思ったよ。でもなぁ、ただ医療が発達してただけってんならどうすんだよ」


 「……それだったら病院に爆弾をだね…『却下だ!!』


閻魔が言い終わる前に言い放つ、そんな人殺しをするために生き返るなんて死んでもごめんだ。…死んでるけど。


 「……冗談だよー、ははは…。まぁ医療が発達してただけなら諦めるさ。…でも何か他の要因があるなら、是非解決してもらいたいんだ」


前半の乾いた笑いは明らかに嘘だが、後半の真剣な口調は本音だろう。


 「この世界はね神様の創った絶妙なバランスで成り立っているんだ。生も死もある一定の量が無ければ世界そのものが無となり消えてしまう。そのバランス調整を担っているのが僕さ、僕には神様の創ったこの世界を維持し続けていく義務がある。無茶な事を頼んでいる自覚もある、だけどどうか…お願いできないだろうか?」


いままでのふざけた感じはなく、真剣ともいえる閻魔の本音が聞けた気がした…。


 「……わかったよ、どうせ一回死んだ身だ。あの世に行く前にもう一仕事してから逝くとしよう」


 「わーい!やったー!!君は本当に物分かりが良くて助かるよー!」


シリアスから一変、急にフランクになる閻魔に力が抜ける。


 「でも状況を調べてどうやってお前に報告するんだ?」


 「それなら大丈夫、君がその世界で死ねばまた会えるよ!」


 「………ん?」


 「君がその世界である一定の調査を行った後、死んでくれれば万事解決さ!」

 

このクソ閻魔は調査が終わったらさっさと死ねと言ってきやがる。


 「まぁ成果が得られる前に死んでしまうのは論外だからね、そこで!君には特別な力を授けよう!!」

 

 「……特別な力?」

 

 「パンパカパーン!!めっちゃ回復する魔法ー!」


どこかで聞き覚えのあるフレーズで適当すぎるネーミングの魔法を授かった。


 「心の中でこの魔法を使いたいって念じればいつだって無限に使えるからねー、決まったフレーズを口にしても良いよー!まるで君達の世界のTVゲームみたいでテンションあがるでしょー!」


…無限に使えるのか、ま、まぁ、ちょっとはテンション上がる…かな…。


 「これは向こうで変な病気にかかっても一瞬で健康になれるし、内臓が潰され様が目玉がくりぬかれ様が何のその!!」


……そんな事態にはなりたくねーな。


 「あぁ、あと最後にもう一つ。パンパカパーン!!自殺魔法ー!」


 「これはね、任務をおえたr『ぜってぇ使わねぇよ!!』


 「ええー?だって早く死んでくれないと僕寂しいじゃーん」


 「ふざけんな!寿命分きっちり向こうで生き抜いてやるわ!そうじゃなきゃ行かねーからな!」


 「…むぅー、太郎君のいけずぅー。まぁ人間の寿命なんて僕からしたら一瞬だからそれでもいいけどさ、 寂しくなったらいつでも使っていいんだよ?」


使うかボケ。


 「…なんか他に攻撃魔法みたいなのってね―の?」


 「太郎君、僕は神様じゃなく生と死の管理者なんだ、生死に関係する力しか無理だよー、ははは!」


少しがっかりしたが、怪我や病気の心配は要らないならよしとするか。


 「…でもそうだね、攻撃魔法ならこれを授けるよ、パンパカパーン!人間絶対殺す魔法ー!」


 「めちゃくちゃ物騒なネーミングの魔法がきた!?」


 「これはネーミングの通り人間なら絶対に殺せる魔法さ、結構強力な力だから一日一回が限界だねー」


…物騒な魔法だが、向こうで何があるか分からない以上、持っておいて越したことはないか…。


 「これ以上はもうないからねー、この力を十分に発揮して調査に勤しんでくれたまえ!」


 「いや、さすがに調査するだけでこの力はチートすぎる、ありがとうな」


 「…それでは話もまとまったことだ、さっそく君を目的の座標に飛ばすよー!そいやーっ!!」


閻魔が気の抜けた声でそう言うと、ジェットコースターに乗っているみたいに体にGが掛かりだした。


 「……君の第二の人生に神の祝福があらんことを。…あと病院があったら爆破しといてねー!」


 「するかボケェッ!!」


最後に閻魔の本音にツッコミを入れると目の前が眩しく光りだし体が光へと吸い込まれていった。、





 











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